2019年に放送されたNHKスペシャル「人体」での驚異的なDNAの描写をご存知でしょうか?

DNAがどのような仕組みでタンパク質を作っているのか、大変わかりやすくしかも詳細にビジュアライズされたのはこれが初めてなのではないでしょうか。

リアルタイムで観ていたのですが、本当に感動しました。そして人体の精密さに感嘆したものです。

 

 

今回はこちら↓を元に話を進めたいと思います。

こちらの書籍でも放映された映像が元になっているので、理系の知識がなくてもDNAの仕組みが理解できるように書かれてます。

エピジェネティクスに興味ある方にはオススメです。

 

 

1. 細胞核内部で起こっていること:セントラルドグマ

DNAは読み込まれない時はヒストンというタンパク質に巻きついて螺旋状になって畳まれている。

DNAと聞いてイメージする状態がそれです。

一部解けている部分があって、そこをRNAポリメラーゼという物質が走ってDNAの情報を読み取ります。

遺伝子が発現しているとは、遺伝子情報を元にタンパク質が作られることです。

大まかな仕組みとしては、DNAの情報がRNA(リボ核酸)に転写されそのRNAの情報からタンパク質が作られる、のが一連の流れとなります。

DNA > RNA > タンパク質の一方向の流れの考え方を「セントラルドグマ」と呼びます。

これはジャンクDNAと呼ばれる遺伝子の98%の領域で起こっていることです。

 

国立遺伝学研究所のサイトから拝借:

 

DNAから読み取られたRNA(mRNA前駆体)にはタンパク質の翻訳には役に立たない部分が含まれているので、不要な部分を切り取ります(スプライシング)。

残った部分がmRNAと呼ばれ、切り取られた部分がイントロンと呼ばれます。

(最新の研究では不要と思われていたイントロンもタンパク質生成に関わっていることが分かっており、やはり人体に無駄なものはないと認識を新たにしてます)

mRNAは数秒間停止して、何らかの加工をされて細胞核から細胞質へ出てゆきます。

mRNAはリボソームにキャッチされて、リボソームがmRNAの情報を読み取りアミノ酸を結合させタンパク質を作成して排出します。

Wikipediaより(こちらのページも面白い):

 

 

 

ざっくり説明しましたが、この一連の流れが、何か食べたり、ストレス受けたり、運動したりetc...するたびに、我々の細胞内で目まぐるしく起こっていることです。寸分の狂いもなく。。。

私はこれを知った時に、人間の浅知恵で作ったmRNAを体に入れることが怖くなりました。

あまりにも緻密な仕組みなので、人為で何か挟むと誤動作するのではないか?

今の科学は細分化しすぎて部分しか見ていないので、人体全体でどのような影響が起こるのかなど100%把握することはできないでしょう。。。

 
余談ですが、DNAではA(アデニン)とT(チミン)、G(グアニン)とC(シトシン)がペアに、RNAではTがU(ウラシル)に置き換えられ、AとU、GとCがペアになっていて、この関係を相補的と呼びます。
DNAも二本で成り立っていて、人体の構成や運用に関わる情報は陰陽(相補性)で成り立っていると言えます。
 

 

2. DNAメチル化で情報が読み込めなくなる

 

1の仕組みで読み取られる遺伝情報ですが、様々な外部要因が原因になって読み取れなくなります。

このDNAの情報を読み取れなくすることをDNAメチル化と言います。

このメチル化はほとんどがC(シトシン)にメチル基というタンパク質が付着することで起こります。

メチル基が様々なタンパク質を引き寄せてDNAに絡みつき、DNAを折りたたんでしまい読み込めなくしてしまいます。

RNAポリメラーゼがその部分を読み取ろうとしても、ほどけないので読み取れない。

 

DNAメチル化が老化に関わってくるのですが、老化の詳細についてはまた次回。

 

 

3. 70個の自分オリジナルな遺伝情報を誰でも持っている

私たちは両親から一つづつ遺伝子をもらって生を受けます。

ですが私たちは単に親の遺伝子をそっくりそのままもらうわけではありません。

その子用に70個のオリジナルな塩基配列が、98%のジャンクDNAと呼ばれている領域に生じます。

この変異の由来の割合は父親から80%、母親から20%の割合で、父親からより多くの変異情報をもらうようです(Male-driven evolution)。

卵子は胎児の段階ですでに作られ新しくつくられることはないことと、精子は心臓の鼓動一回の間に1000個作られることによる差異が原因です。父親の年齢が上がるごとに変異が蓄積されます。

オス(男性)が進化を駆動し、メス(女性)は元の状態を保存する。

まさにホメオスタシスとトランジスタシスですね。

ですが、変異の10%の部分は父母両方からの影響を受ける部分があり、「C(シトシン)G(グアニン)突然変異」と呼ばれています。

C(シトシン)がG(グアニン)に変化する変異であり、DNAには変異が起こりやすい部分があってそこで起こっています。

この領域は他の部分より早く進化(変化)している可能性があるそうです。

 

生まれてくる時に必ず親にはない新しい遺伝変化が起こって生まれてくる。

生物の目的が進化であることの証左なのでしょう。

 

余談ですが恐怖の体験で遺伝子のON/OFFが起こるので、恐怖の体験も遺伝することがマウスの実験で確認されています。

例えば曽祖父母の代のネガティブな経験や欲求が遺伝子に組み込まれていて、現在の自分に「何故だかわからない」反応や行動として出てしまう。。。

我々は三大欲求(生存欲求、支配欲求、承認欲求)と先祖の遺伝子の叫びを掛け合わせた存在とも言われます。

三大欲求と遺伝子の叫びをクリアにしないと、あの世で計画してきた通りの人生を送るのは難しいのかもしれませんね。。。

 

 

4. 何が遺伝子をONにするのか

同じ人の左の足にのみ運動負荷を与えて続けて左右の足のDNA状態を比較したことろ、病気予防のDNA5000箇所に変化が確認されました(利き手、利き足がありますから、通常の状態でも発現している遺伝子は違いがあると思います)。

運動後3-12時間で変化が起こり、24時間後には元に戻ってしまうが、週に3-4回運動を続けることによってより変化を起こして、安定化させることができる。

記憶力をUPさせたければランニングをすると脳神経細胞を成長させるDNAがONになり、音楽能力をUPしたければ音楽をたくさん聴くことで聴覚に関わるDNAがONになるそうです。

この辺は老化の話にも関わるので、次回詳細書きたいと思います。

 

以上、ざっくりと印象的な部分をまとめてみました。

 

遺伝子は固定されていてあまり変化しないイメージだったのですが、実際は違ってました。

我々のDNAは空気、環境などに左右されて刻一刻と変化しています。

最近座りっぱなしになっていることが多いのですが、大いに反省しました。

1時間座っていてもDNAのON/OFFに影響してしまうのが分かったのですから、こまめに体を動かしながらリモートワークしようと思います。

遺伝子も日々是進化ですね!

 

長文最後まで読んでいただきありがとうございました & お疲れ様でした!