答えは、「ヒンクリー・ポイントC原子力発電所」。

フランスEDFエナジー社が英国サマセット州で建設計画を進めている原発だ。建設費用だけで£18bn/2.8兆円。融資返済を考慮すると £24bn/3.7兆円との見方もあるなど、最終的な総額費用は未知数だ。(1ポンド=155円換算)


BBC Newsで、ヒンクリー・ポイントに匹敵する高額な建造物(object)はないかと、世界で巨額投資されているものを紹介している。あなたはいくつご存知だろうか。 

BBC News: April 29, 2016  "What is the most expensive object on Earth?"

・£1bn/1550億円: 

 「ブルジュ・ハリファ」 

 アラブ首長国連邦ドバイにある世界一高いビル。


・£4bn/6216億円: 

 「大型ハドロン衝突型加速器(LHC)」 

 欧州原子核研究機構(CERN)が持つ世界最大の加速器。フランスとスイスの国境を越えて設置され、全週27km。宇宙の解明に繋がる歴史的な大発見「ヒッグス粒子」を測定した加速器だ。


・£4.5bn/6993億円: 

 「サンフランシスコ・オークランドベイブリッジ」
  アメリカのサンフランシスコとオークランドを結ぶ全長7kmのつり橋の架け替え工事費用。
橋の工事としては最高額と言われている。今後1500年以内に起きる地震にも耐えうる構造になったようだ。


・£2.3bn/3574億円(現在£4.1bn/6,371億円相当) :

 「サイズウェルB原子力発電所」
 1995年に建設された英国内で最新の原子力発電所。


・£750m~£900m /1165億円~1399億円 :

 「エジプトのピラミッド」
 時代を遡り・・・4500年前の建造物。The Turner Construction Companyによる推定金額。一説には、実質無償だったと話す専門家もいるようだ。建設に使用された石は王の所有物で、労働者は税金で用意された食事を与えられ働いていたのがその理由。


 なお、 中国の「万里の長城」は、 ピラミッドよりも大掛かりなプロジェクトと考えられているが、いくつもの壁を繋ぎ合わせた集合体という点で「建造物(object)」の定義に合わず除外。


・£2.3bn/3574億円:

 現代に戻り・・・ 「ロンドン・ヒースロー空港ターミナル2」


・£14.8bn/2.3兆円(予定):

 「クロスレール」
 建設予定のロンドンとイングランド南東部を繋ぐヨーロッパ最大規模の鉄道。


・£16bn/2.5兆円(予定):
 サウジアラビアのメッカにある礼拝堂(マスジト・ハラーム)およびその周辺の交通網等の刷新費用。ただし、「建造物(object)」を拡大解釈した場合の費用。


・£13.7bn/2.1兆円 (現在の£20.1bn/3.1兆円相当):

 「香港国際空港」
 1998年に人工島の上に建設された空港。


・£37bn/5.7兆円:

 「ゴーゴンプロジェクト」
 米シェブロンが手掛けている最大級の液化天然ガス(LNG)開発事業。西オーストラリア州北西沖のバロー島において、この3月に生産開始。LNG合弁事業としては世界最大規模の事業費が投じられているそうだ。


さて、話題のヒンクリー・ポイント原子力発電所は2基の原子炉が建設される。エネルギー政策の専門家、グリニッジ大学のスティーブ・トーマス名誉教授によると、トルコで4基、南アフリカで6基の建設計画があり、ヒンクリー・ポイントの建設費用を優に超えるとの見方を示している。


それでは最後に、地球を離れて空を見上げてみよう。

今まで挙げた例すべてをしのぐものがある。
「国際宇宙ステーション」  お値段: £77.6bn/120.5兆円! 

(先日承認された2016年度日本の予算は、96兆7218億円)


以上



Biomimetics(バイオミメティクス)あるいはBiomimicry(バイオミミクリー)という言葉をご存知だろうか。生物が持つ優れた構造や機能を模倣して、工学や医療の分野に応用していく科学技術のことである。日本では「生物模倣技術」とも呼ばれている。


このほどスタンフォード大学の研究グループが、小さな蟻の生態から着想を得て、超小型ロボット6基(総量100g)で、乗用車1台(1800kg)を牽引することに成功した。人間に例えると、6名でエッフェル塔と自由の女神像3体を引っ張るようなイメージだそうだ。


この研究グループは、超小型ロボットにヤモリの指の粘着力を応用した機能を付加し、これまでにも1基で自身の重量よりも大きなものを動かすことには成功していた。今回はそれをさらに発展させた研究成果だ。


模倣したのは、蟻たちのチームプレイ。蟻は小さな体だが、お互い協力しながら巨大な物体を動かしている。研究者たちは、蟻が6本ある脚のうち3本を他の蟻たちと同時に動かすことで、ゆっくりでも非常に大きな力を発揮していることに着目した。超小型ロボットチームを結成し、同調した動きをさせれば、もっとすごいことができるのではないか。


The New York Times: March 13, 2016
"Modeled After Ants, Teams of Tiny Robots Can Move 2-Ton Car"


とても面白い映像なので、ぜひ視聴してほしい。蟻のチームプレイにたどり着くまでに、蜂を模した小型ロボットでも実験している様子も紹介されている。


【参考】特許庁:平成26年度特許出願技術動向調査報告書(概要)

戦後の1949年にタイより友好のしるしとして、日本の上野動物園に贈られえた象「はな子」も、今では69歳。井の頭自然文化園にて生活している。そんなはな子の老後生活をめぐって、論争が起きているようだ。




CNN: The race to "save" Japan's oldest elephant




ことの発端は、カナダの動物愛護運動家が昨年10月に書いたブログ。はな子の現在の生活を憂いて、タイに帰してあげたほうがよいと、動物園に訴えたのだ。嘆願書の署名は42万人、寄付は3万ドル集まっているとのこと。




困惑しているのは動物園側。通常、象の寿命は40歳程度で、はな子はかなりの高齢。歯は一本しかなく、バナナの皮も飼育員にむいてもらって食べている。おまけに、とても神経質な性格で、過去には誤って飼育員や泥酔者を殺してしまった経歴もある。とてもタイに帰すなど考えられない、というわけだ。




動物園を訪れている常連客も、長年お客さんとともに生活してきたはな子のことだから、急に環境を変えないほうが本人にも良いのでは、と話している。




さて、当の本人「はな子」はどう思っているのだろうか。


人間も介護される頃には、自分の気持ちを伝えることができず、あるいは、理解してもらえず、まわりが良かれと思う方向でお世話される。人間も動物も、いずこも同じ哀しい老後のようだ。