私の祖父は、晩年は自宅で寝たきり状態となりました。
足腰が弱ってしまい、食事を食べるために立ち上がることも次第に困難となり、手すりにつかまってトイレに行くことも困難となったのです。
しかし、重い病気に罹患しているわけではなく、いわば老衰の状態であったため、祖父を在宅介護することになりました。
そして、立ち上がることも困難な祖父のために、訪問診療してくれる主治医から尿道カテーテルの挿入を提案され、私の親が了承し、尿道カテーテルを挿入することになったのでした。
この結果、週に一度、主治医が看護師をともなって尿道カテーテルを抜いて消毒をして、その後再び尿道カテーテルを挿入することの繰り返しとなりました。
ところが、あるとき看護師が祖父の性器から尿道カテーテルを抜こうとしたところ、抜けなくなってしまったのです。
私の祖父はすでに80代後半の年齢であり、すでに普通の食事もとることができず、点滴だけで毎日を過ごしていました。
つまり、1年以内に亡くなる確率が高かったのです。
そのような状況下で、尿道カテーテルが祖父の性器から抜けなくなってしまったのですから、私の親は主治医に対して抗議しました。
具体的には「カテーテルを挿入された状態でこのまま数ヶ月間も生活して、このまま親父に死ねというのですか」と、怒って抗議したのです。
しかし、主治医は冷静な表情で「尿道カテーテルが抜けなくなった原因は不明です。しかし、私を信用できないというのでしたら、今日限りで診察にはうかがいません」と言うのです。
親は驚きと怒りの表情を見せましたが、すぐに諦めの表情を見せ「たしかに原因はわかりません。仕方ありません。最後まで親父の面倒を見てやってください」と主治医に頭を下げたのでした。
それから6ヶ月後、祖父は老衰で亡くなりました。
今回の教訓としては、医師の医療行為に完璧さを求めてはいけないのだという点を得ました。
また、ミスと思える医療行為でも、原因不明である以上、ミスとして追及することは不可能であることを学びました。
そして、人間は死ぬまでなんらかの形で苦痛を味わなければならないのだと実感させられました。