本『ヒルベルト空間と量子力学』(新井朝雄,共立出版)で80頁にわたって解説されていることを,話の流れを掴みやすくするために無理やり3頁に詰めたあれ。定義も証明もほとんどすべて省略している。なお例はすべて消し飛んだ。
以下ではすべての文に [ ] の形で印を付ける。
自分の復習用のノートなので多分他の人が読んでもよくわからないと思う。
スペクトルにはまだ入っていない。
[Def]は定義。
[Axiom],[Method],[Remark]はの三つ定理(ときどき定義や公理)で
[Axiom]は理論の基礎になっているもの(単によく使うという意味で,論理的な意味での公理ではない)
[Method]は証明も含めて大切と思うもの
[Remark]は気を付けておいたほうがいいもの(しかし定義とか定理というほどの大それたものではない)
[Question]は(下で使っているかわからないが)私が思う疑問点
というように主観的に使い分けている。私の理解が至らない関係で[Axiom]とすべきところが[Method]になっていたり[Method]であるべきところが[Remark]になっていたりする。
1.ヒルベルト空間H内の一次結合の一般論
[Def] 集合は複素係数の一次結合に関して閉じているとき,(ここでは)線型集合という。
[Axiom] 無限次元公理:線型集合Hは一次独立な生成族が存在するとき有限次元(または有限生成)といい,任意有限個数の一次独立族が存在するとき,無限次元という。線型集合Hは有限次元でないとき,Hは無限次元である(点列の存在原理)。
[Def] Hの線型部分集合Dに対して,Dの元の有限和全体(線型包)をL(D):={有限和∑a_n f_n ;a_n∈C, f_n∈D.}で表す。
[Def] 内積を<・|・>で表す。<f|g>=0のとき直交するといいf⊥gで表す。内積から定まるノルムを|・|で表す。
[Axiom] 非退化性の公理:f=0⇔∀g∈H, <f|g>=0. これは一意性原理の基礎である。
[Axiom] 完備性の公理:ヒルベルト空間Hはノルムを距離と思ったとき完備(基本列が適当なHの元に収束する)である。これはあらゆる存在原理の基礎になる。
2.閉部分空間と正射影原理
[Def] Dを部分集合とする。任意のf∈Hに対して,Pf∈Dが存在して,(f-Pf)⊥Dであるとき,PfをfのDへの正射影といい,PをDへの射影子という。
[Method] 正射影原理(有限生成の場合):任意の有限次元の線型部分集合Dに対して,Dへの射影子が存在する。
[Method] グラム・シュミットの直交化:任意の一次独立族{f_n}に対して,ある(正規)直交族{g_n}が存在して,L({f_n})=L({g_n})である。(∵f_nから{g_1,…,g_(n-1)}への正射影成分を逐次引いていくことにより直交化される)
[Remark] Hの閉部分空間は部分ヒルベルト空間である。以下,部分集合Dの閉包を[D]で表す。なお,任意の有限次元線型部分集合は閉部分空間であることに注意する。
[Def] 部分集合Dに対して,直交補空間をD^⊥:={f∈H | ∀g∈D, f⊥g.}で定義する。これは閉部分空間である。
[Remark] 部分集合Dに対して,D^⊥=L(D)^⊥=[D]^⊥である。
[Axiom] 正射影原理(極限で閉じてる場合):閉部分空間Dに対して,Dへの射影子Pが存在する。(∵f∈Hに対して,Hの距離で測ってfに一番近いDの元が正射影Pfである。この存在には完備性が利いている)
特にDが全域Hに等しくないとき,D^⊥\Dは空でない。
[Method] 直交和分解:Dが閉部分空間のとき,H=D+D^⊥(直交和)である。また,D^⊥⊥=[D](二重直交補空間は閉包)である。
3.完全系
[Remark{ f_n}を正規直交族とする。任意のf∈Hに対して,無限級数F(f):=∑<f_n|f>f_n (=fのf_nによる展開)は(Hの完備性により)収束する。しかし一般にはF(f)≠fである。
[Def] 正規直交族{f_n}は,任意のf∈Hに対してF(f)=fのとき,完全正規直交族(C.O.N.S),または単に完全系という。
[Remark] 次の三つ(i)(ii)(iii)は同値:(i) {f_n}は完全系 (ii) 任意のf∈Hに対して,|f|^2=∑|<f_n|f>|^2である (iii) L({f_n})^⊥={0},つまり任意のnに対してf⊥f_nならばf=0
[Remark] 部分集合Dに対して,DがHで稠密なための必充条件はD^⊥={0}であること。
[Def] Hは稠密な可算部分集合を持つとき可分という。
[Remark] 完全系が存在するための必充条件は可分であること。
4.線型作用素の共役
[Remark] ヒルベルト空間HからKへの線型作用素は定義域D(T)がH全域であるとは必ずしも仮定されない。Tの定義域D(T)がヒルベルト空間でない(しかしあるヒルベルト空間に含まれていはいる)ようなものも考えるためである。
[Def] TはHからKへの線型作用素とする。<Tf|g>=<f|T^* g> (∀f∈D(T))を満たすKからHへの線型作用素T^*をTの共役という。(ここではT^*が存在するかどうかはまだわからない)
[Method] Tが稠密な定義域D(T)を持つ( [D(T)]=H )とき,T^*は存在する。(存在域D(T^*)および各g∈D(T^*)に対する一意な像T^* g を決定できる)
[Remark] Tが有界のとき,T^* も有界で,T^**=T