NASCAR Cup Series
Xfinity 500
Martinsville Speedway 0.526miles×500Laps(130/130/240)=263miles
competition caution on Lap60
winner:Chase Elliott(Hendrick Motorsports/NAPA AutoParts Chevrolet Camaro ZL1 1LE)
NASCAR Cup Series、プレイオフ Round of 8の最終戦マーティンズビルです。このレースでいよいよ最終戦でチャンピオンを争う4人が決まります。最後の最後にはぶつけてでも抜くことがあるトラックだけに、チェッカーを受けきるまで目が離せません。
マーティンズビルはシリーズ最少の0.526マイル、バンク角が低いペーパークリップ型で、日欧で言うヘアピンを延々と曲がり続けるようなトラックです。知らない人が考えるオーバルのイメージとは程遠いですが、NASCARの面白さという点では実は非常に魅力的なので、初心者の方にはむしろ2マイルなんかの大きなトラックより私はこちらをおススメします。ではレース前のポイントを確認しておきましょう。
1 | Joey Logano | win | |
2 | Kevin Harvick | 4137 | +42 |
3 | Denny Hamlin | 4122 | +27 |
4 | Brad Keselowski | 4120 | +25 |
5 | Chase Elliott | 4095 | -25 |
6 | Alex Bowman | 4095 | -25 |
7 | Martin Truex.Jr | 4084 | -36 |
8 | Kurt Busch | 4039 | -81 |
下位4人はいずれも勝たないと、ポイントでの進出にはほぼ権利がない状態、一方ロガーノ以外の上位3人は、下の人が勝たなければ比較的安泰な一方、もしそうなってしまうとデニー ハムリンとブラッド ケゼロウスキーは僅か2点差で4枠目を争うことになります。17点リードのハービックは普通に行けばそうそうやられることは無い、とレース前の段階では思われました。じゃあ実際問題下の4人に勝ち目があるかというと、マーティン トゥルーエックス ジュニアはマーティンズビルで2連勝中、ロード コースで強いチェイス エリオットは、この低速ターンが続くトラックでも当然速いはず。大逆転はじゅうぶん起こり得ます。
ケゼロウスキーとトゥルーエックスの1列目でスタート。トゥルーエックスはよく戦い方を心得たもので、外側からのスタートで下手にケゼロウスキーと並走して争うのではなく、すぐに空間に入ってまずは2位の位置を確保。そして4周目に早くもケゼロウスキーを仕留めてリーダーになります。ここで、ハムリンもついでにケゼロウスキーのインに入ってやや強引な走りで2位へ。ハムリンは右リアのサスペンションにパッカーを入れていたものの、セッティング的に不要と考えて取り外すことを考えました。しかし、既に車検を終えていたため、取り外すと最後尾になるとNASCARに言われたため、とりあえずそのままスタート、次のコーションで取り外したい、という情報です。ただその割には結構走れてます。
トゥルーエックスは快調に逃げていましたが、目の前で周回遅れが争い始めて行き場を無くし、その間にチェイスが背後に。この2台の順位争いが行われている中でコンペティション コーションとなりました。ハムリンはここで懸案のパッカーを取り外しました。
69周目にリスタートしますが、5周後にクリント ボイヤーがスピンしてコーション。チームメイトのエリック アルミローラを無理にブロックしようとして接触していました^^;
80周目にリスタートされると、89周目にチェイスがトゥルーエックスをかわしてリーダーへ。トゥルーエックスも無理に抑えず行かせた感じです。残り周回数が少ないなら意地でも防御するでしょうが、長い距離があるときは、下手に粘らずとりあえず譲ってしまうのもマーティンズビルでは非常に重要。この後周回遅れが出始めて、2台は引き続き接近した争いになりますが、105周目にギャレット スミスリーがターンを曲がれずに車を止めてしまいコーションとなります。
110周目、6台ほどステイ アウトでリスタート。いきなりターン1でステイアウト組のボイヤーがアルミローラに対してさっきのお返しとばかりに思いっきりぶつけて抜いて行き、これで前がごちゃついてハムリンが3位へ。ハムリンは四輪交換しており、圧倒的に速いペースでトゥルーエックスとチェイスもあっさりとかわしてリーダーに。そしてその直後、クイン ハウフがスミスリーと接触、スミスリーがスピンしてコーションとなりました。タイヤを換えていないチェイス&トゥルーエックスには痛手ですが、ステージ1は残り僅か、今さらピットにも入れないので耐えるしかありません。
コーションにまでは至らなくとも各所で接触が頻発。これぞマーティンズビル
ステージ残り10周のシュートアウト、ハムリンは独走でステージ勝利、新品タイヤ組がどんどんと後ろから迫る中、チェイスは4位、トゥルーエックスは6位でした。ハービックはステージ14位、マーティンズビルは通算で平均順位が14位台とあまり相性が良くなく、今日は10位前後での走行が続きます。
ステージ1のポイントを加算すると、
2 | Kevin Harvick | 4137 | +33 |
3 | Denny Hamlin | 4132 | +28 |
4 | Brad Keselowski | 4128 | +24 |
5 | Alex Bowman | 4104 | -24 |
6 | Chase Elliott | 4102 | -26 |
7 | Martin Truex.Jr | 4089 | -39 |
当落線上のポイントで見れば情勢に大差無し。ただ、ステージ ポイントを加算できなかったハービックが対ハムリン、ケゼロウスキーで見てリードをかなり失ってしまい、下の人が勝った場合に危険にさらされる可能性が出てきました。
カイル ブッシュとカート ブッシュなど6台はステイアウト、ピット組ではチェイスを先頭にしてステージ2スタート。3周ほど並走を繰り広げた末に、外側リスタートの兄ブッシュが前に出ます。
147周目、玉突き事故でクリス ブッシャーのフロントが中破、冷却系を壊してしまいコーション。ハービックは25位と集団に埋まっており、このクラッシュに危うく巻き込まれるところでした。
159周目にリスタートされるとタイヤの新しいチェイスとハムリンが早々に1、2位に浮上。しかしリードを広げるチェイスに対して、ハムリンはタイヤの古い兄ブッシュに張り付かれたままです。序盤からずっとタイト方向の車に見えます。
184周目、なんとハービックが左リアのパンクで緊急ピット。既に接触でフェンダーがめくれあがっていたマット ケンゼスと並走して、めくれた部分がタイヤを切ったようです。これでまさかの2周遅れ。その後ブレナン プールのクラッシュでコーションになり、ウエーブ アラウンドで1周はラップ バックしたものの依然として1周遅れ。ただ1周遅れが現状彼とジェームス デイビソンしかいないので、コーションがすぐ出ればリード ラップに戻れます。なお、このコーション、プールは自身がフリー パスの位置だったため、フリーパスの該当者なしになりました。
エリック ジョーンズ陣営、レンチを外し損ねる
193周目、チェイスを先頭にリスタート。ハービックは可能な限りフリーパス位置を維持するために、前にいる自分より遅いリードラップ車両をかなり荒っぽくかわしていきます。かなり苛立ちが感じられますがノーズを凹ませてしまいました。しかしハービックの願いが通じたのか、CM中の216周目にジョン ハンター ネメチェックがスピンしてコーション。ハービックがフリーパス!と思いきや、チェイスがその直前にティミー ヒルを周回遅れにしており、フリーパスを手にしたのはヒルでした(;・∀・)
このコーションでチェイスとトゥルーエックスはピットに入りましたが16台がステイアウト。1列目はハムリンとロガーノになります。ところが、チェイスの圧倒的な速さに対して、前のドライバーたちは抑えても自分のペースが乱れるだけなのでみんな無理せずインを開け、チェイスはあっという間に15周ほどで2位にまで挽回。240周目にハムリンもかわしてリーダーに戻りました。ロードコースでもこんな感じですぐに抜いて順位を戻しますよね。そのままチェイスがステージ2を制し、トゥルーエックスが続きました。ハービックはここでもフリーパスを手にできません。
普段のレースならヒルやJ J イェリーのようなドライバーは真っ先に周回遅れになってしまいますが、今日はレース序盤にコーションが複数回出て彼らがリードラップに残り、その状態でハービックが先に周回遅れに落ちてしまったことがかなり影響しています。ハービックはいくら頑張っても自力ではラップバックできず、フリーパスを得たくても、下位チームのドライバーは30周も走れば新たに周回遅れになってしまうため、ハービックは走っても走ってもフリーパスを手にできないもどかしい時間が続いてしまっています。
リスタート後すぐコーションになるか、いっそのこともう10台ぐらい周回遅れになって、新しい周回遅れが生まれにくい状況になってしまえばいいんでしょうが、中途半端なタイミングでコーションになるため、ハービックにはできることが無い状態です。実際、このステージ2終了を含む直近6回のコーションでフリーパスを得た人は、イェリー、プール、ヒル、該当なし、ヒル、ヒル。ハービックより車としては遥かに遅いヒルが3連続フリーパスですw
ハービックが埋まる間にもライバルはステージポイントを積み重ねました。ステージ2終了時点では
2 | Denny Hamlin | 4140 | +28 |
3 | Kevin Harvick | 4137 | +25 |
4 | Brad Keselowski | 4132 | +20 |
5 | Chase Elliott | 4112 | -20 |
6 | Alex Bowman | 4104 | -28 |
とうとうハムリンがハービックを逆転、ハービックはポイントで争う状況に完全に追い込まれ、しかも自分はまず周回遅れをなんとかしないと全く順位があげられない状況です。
と、ポイント争いがますます重要になったところで、ステージ間コーションでハムリンにトラブル発生。左前のホイールのナットを外すのに時間がかかってしまい、装着を完了する前にジャッキが下ろされてしまいました。見切り発車はしなかったため一応ナットを締めはしたものの、いかんせんジャッキが落ちた後なのでホイールに車両の荷重がかかっており、本当にホイールを押し込んでナットを締められたのかは大きな疑問。結局ハムリン陣営は再ピットを決断し、リードラップ最後尾に転落します。
ファイナル ステージもチェイスとトゥルーエックスの争い。310周目あたりからかなりの接近戦になります。マーティー スナイダーからのリポートでは、マーティンズビルはかなり路面温度がハンドリングに影響を与えやすく、この日が傾いてきて路温が下がってきた条件でトゥルーエックスが何か優位性を手にしているかもしれない、とのこと。お互い、勝てば最終戦のチケット、2位ならポイントでは誰かもう1人事故ってくれない限り無理な状況です。そういえば2人ともマーティンズビルで最後の最後にぶつけられて勝利を奪い取られた経験者同士ですね。
両者ともクリーン レーサーなので、このまま行ったら最後はどうなるのかちょっと気になりますが、この後トゥルーエックスは攻めすぎた影響かややペースが鈍ったところに山のような周回遅れが立ちはだかり、1.5秒以上の差に拡大していきます。
351周目、ヒルが右リア タイヤのパンクで10回目のコーション。残りが150周弱、各車ピットに入り、ここでロガーノが先頭でピット アウト。トゥルーエックスが続き、チェイスは4番目のピットアウト。作業に時間がかかった理由は、なんとジャッキ マンが早く出すぎてしまい、一旦引き返してウォールに戻ってからまた出てきたからでした。
しまった、タイミングを間違えた!
タイヤ キャリアーとぶつかりながらでも引き返す
一旦両足をウォールに乗せてから再度出陣('◇')ゞ
野球のタッグ アップみたいなことになりましたが、「そんなん、引き返したってペナルティーは変わらんやろ~」とか思ってたら、なんとこれでペナルティーを逃れました( ゚Д゚) 解説陣も「シーズンで最高のプレー」「ルールを熟知した見事な動き」と称賛の嵐です。
調べてみたところ、競技規則の Section 10.9.8.g にはこうあるそうです。
「クルーの足が車両を整備する前にピット路面に時期尚早に触れた場合、クルーはペナルティを回避するために車両を整備する前にウォール側に下がるか戻れば位置を再設定できる」
そう、オーバー ザ ウォール トゥー スーンのペナルティー、実は、違反したクルーが一回引っ込んでやり直せば、ペナルティーの回避が可能だったのです( ゚Д゚) でも実際に適用されるのはほとんど例が無いでしょうね。普通は、行けてるつもりが映像で見たら早かった、というケースが99%だと思うので、今回のように自覚してしまうほど明確に一人だけ早い、なんてことが滅多に無いです。飛び出したのは滅多に無いぐらいの凡ミスでしたが、その後の対処は見事でした。
359周目にリスタート、ロガーノがリード、外ラインからリスタートのトゥルーエックスは、ライアン ブレイニー、兄ブッシュ、チェイス、と次々に内に入られるマーティンズビルあるあるにハマってしまい5位に後退。先ほどのランが長くてリードラップ車両が22台といくぶんか減ったため新たな周回遅れは生まれにくくなり、ハービックは我慢強く次のコーションを待ちたいところです。
369周目、ブレイニーがロガーノをかわしてリーダーになります。この2人は勝ってもプレイオフの枠に関係ないですから、ハービックとすれば自分がダメでも彼らが勝ってくれればなんとかなりそうなので、半分は他力に頼る格好です。
一方、クルーのある種神業でペナルティーを逃れたチェイスでしたが、日没とともに速さを見せるペンスキー勢を相手に苦戦。先ほどまでのようにあっという間に前に追いつくどころか、後ろからケゼロウスキーに迫られてサイドバイサイドの争い。ここで争っていてはチャンピオンシップへは進めません。
400周目、スミスリーがパワーを失ったようでトラック上で停止しコーション、とうとうハービックがフリーパスを得てリードラップに復帰します。一方上位争いはピットをロガーノ、ブレイニー、ケゼロウスキー、トゥルーエックスの順でピットアウト。ところがケゼロウスキー、なんと痛恨の速度違反でペナルティーを受けます。あれ?チェイスが前の方にいないぞ???なんとこちらは右リアのナットを外すのに手間取って大きく順位を下げ、5列目からのリスタートです。
残り92周のリスタート、なんとここで外側リスタートのトゥルーエックスがロガーノを大外刈り。チューズ コーンを前にトゥルーエックスは「俺は外側は行きたくないよ」と伝えましたが、「最前列だったら外へ行け」と指示を受けて外側の先頭についていました。結果的にケゼロウスキーがペナルティーで下がって3番目になり、ロガーノ、ブレイニーが連続でインを選んだためぽっかり空いた外側を選択、これをリスタートで生かした形ですから、ケゼロウスキーのミスはレースに大きく影響を与えます。
441周目、14位のウイリアム バイロンがリアを大きく壊すクラッシュで12回目のコーション。各車ピットに入り、トゥルーエックスが先頭でピットアウト、順位を維持します。バイロン車からオイルが流れたようなので処理のためややコーションが長引き、450周目にリスタート。なんとコリー ラジョーイがステイアウトして1列目のインを選んだため、トゥルーエックスは仕方なくアウトでリスタートします。
ラジョーイは想定外の好リスタートを見せ、トゥルーエックスは仕方なくタイヤとブレーキを使って大外刈りパート2。抜かれたラジョーイに詰まって後続が混とんとする中、チェイスが2位に上がってまたしてもこの2人の直接対決となります。ラジョーイはこの後抜かれまくった挙句押し出さて、そもそもリスタート位置より手前で加速していたためペナルティーを受けました。一体何しにステイアウトしたんだ・・・w
457周目、チェイスがトゥルーエックスのインに飛び込んでリード チェンジ!トゥルーエックスはバイブレーションを訴えており、右前が原因ではないかという話。もうあと40周しかなく、緊急ピットなら事実上終戦です。10周ほどするとトゥルーエックスからは諦めにも似た無線が飛び、もはやバイブレーションは許容範囲を超えた模様。残り25周、結局ピットに入りました。
しかし、勝つのがチェイスにしろトゥルーエックスにしろ、ハービックとケゼロウスキーが1点を争う状況となり、この段階でも同点という状況で1つの順位で明暗が分かれます。ハービックに対しては、ケゼロウスキーとの点差が逐一無線で伝えられますが、ハービックは「レースに集中させてくれ。点数の話は聞き飽きた!分かってるから」
残り20周、ここに来て苦戦するハムリンが順位を下げ始め、気づいたらハムリンもうかうかしていられなくなってきました。3つほど落としたらハムリンがアウトです。同点の場合、プレイオフの当該ラウンド内での最上位フィニッシュ順位がタイ ブレーカーとして適用されますが、ハービックはカンザスで2位なので同点だと有利な状況です。そして、ハムリンの後ろにはチームメイトのエリック ジョーンズがいましたが、今季限りでチームを離脱するジョーンズは相変わらず援護という姿勢が微塵も感じられず、ターンでなんと接触。ハムリンは「あいつぶつけてきやがった!!」と激怒。
チェイスはリードを奪った後驚速で、最終的に2位に5秒以上の大差をつけて、全然映像にも映らない状態からのトップ チェッカー。大逆転でチャンピオンシップ進出を決めました。
そして1点をめぐる攻防はというと、ハービックはあと1つ順位を上げれば、という状態で最終周の最終ターン。目の前にはカイル、やることは1つ、ぶつけてでも抜く!
明らかに左ターンで右にハンドルを切ったハービック
※レース後のセレモニーではありません
残念ながらやや遠い距離から無理して踏んでいってぶつけたため、ハービックも一緒になってスピン。自業自得と言える壮絶な幕切れで、今季最多の9勝を挙げたチャンピオン最有力候補はここでプレイオフから脱落することになりました。レース前にはまさかこうなるとは思いもしなかったですね。
しかしレース後にはもう一悶着ありました。先ほどハムリンにぶつけて怒らせていたジョーンズについて、無線で規則が禁止するチーム オーダーがあったのではないか?との疑念が生じたためです。公式動画のRadioactiveでもこんな場面が公開されています。
リック カレッリ(スポッター)「抜くなよ、ジョーンズ」
情報によればこの前からやり取りがあり、クルー チーフのクリス ゲイルはジョーンズに対して
「ハムリンは3点差で争っているから厳しくやり合ってくるぞ、気を付けろ」と指示。これに対してジョーンズは
「後ろに大きい空間があるよ」と答えました。
そしてその80秒後にカレッリからこの無線、「抜くなよジョーンズ。後ろについて、やれることをやってくれ」と指示が来たようです。
NASCARは調査を行いましたが、これらのやり取りはチームオーダーには該当しない、との判断でペナルティーは課さないとしました。オーダーと言えばオーダーですが、リスクを避けるように指示しただけ、と言われてしまえば、不正な順位操作とまで言い切ってレース結果に変動を与えるのは前例としてためらわれますね。というか、それを言ったらハービックの体当たりは完全にアウトになりそうですし^^;
実はハービックの前方にはチームメイトのボイヤーとアルミローラもいた(2回もぶつかったわりに同じ場所を最後まで走ってる)ので、その気になればチームはトラブルとかてきとーな理由で彼らを下げさせてケゼロウスキーを蹴り出すこともできたわけですが、それをやるとケゼロウスキーもちょうど2台チームメイトが前方にいるので泥仕合になったことは確実。さすがにそこまでのひどいことにはならず、最終的にハービックが自分で責任を取りに行って自滅の刃だったので、結末としては良かったかなと思います。
さらに言えば、ルース ウィールで周回遅れになったトゥルーエックスが、たまたまハムリン-ジョーンズの隊列の後ろに追いついてここで待機したため、ジョーンズと争っていたコール カスターの防壁として機能したのも地味ですが影響しています。カスターがもしジョーンズを抜けば、ハムリンはさらなる順位低下の危険にさらされていましたから、不正というより位置関係を活かしたレース展開の範囲だと思いますが、JGRは結果的に一丸となってハムリンの進出を守った形になりました。
これで最終戦でチャンピオンを争うのは、ハムリン、エリオット、ロガーノ、ケゼロウスキーとなりました。エリオットは初のチャンピオンシップ進出、ヘンドリックとしては2016年のジミー ジョンソン以来久々のチャンピオンシップ進出、シボレーもそれ以来です。クルーのタッグアップはおそらくカップシリーズに残る伝説として語り継がれることでしょう。そもそもミスなのであれで勝ったわけではないですが、取っ散らかって普通に作業してペナルティーを受けていれば、おそらく勝利はなかったと思います。
最後の1枠がこれほどまでに盛り上がったのは久しぶりな気がしました。最多勝ドライバーがチャンピオンを争う権利すらない、というのは他のカテゴリーのレースを見ている人からすれば理解不能でしょうが、(ちなみにプレイオフ制度を加味しない積算ポイントではハービックはハムリンに100点以上の差を付けており、仮に”普通の選手権”なら既にチャンピオンが確定した状態になっている)リーグ優勝決定戦で勝率1位チームが負けてワールド シリーズに出れないようなもので、他の競技の制度から考えれば起こり得る出来事です。
好き嫌いは横へ置くとして、さっさと決まると面白くないから、と採用した制度で、それなりにシーズンの戦績が加味されるプレイオフ ポイントの制度も機能して1点を争う勝負になったという点で、NASCARの思惑は見事に機能したと言えます。ハービックのファンにとっては残念でしょうが、テキサスでは開始早々壁に当たって修復を強いられた上にバイブレーションでも緊急ピット、そして今日も接触で緊急ピット。重要な2戦で続けて取りこぼしてしまったのは間違いありません。見方を変えれば「9勝してきた貯金のおかげでなんとかポイントで競っていた」とも言えます。
いよいよ次戦フェニックス、異例の2020年シリーズのチャンピオンが決まります。