梅雨が明け、夏の暑さは季節を感じさせる一方で、終わりの見えない未曽有の感染症には季節感、

時の流れが分からなくなる時がある今日この頃。8月といえばそろそろ来年の話が出始めるころでして、

NASCAR Cup Seriesでもいくつか動きがありました。

 

 チーム ペンスキーは、ブラッド ケゼロウスキーと契約を延長したと発表しました。

ニューハンプシャーで今季3勝目を挙げた36歳のケゼロウスキー、ペンスキーとの契約が今季で切れるため、

ヘンドリック モータースポーツにジミー ジョンソンの後釜として加入するのではないか?との噂もありましたが、

ニューハンプシャーでのレースの翌日に契約更新が発表されました。年数は公表されていませんが、

Associated Press(いわゆるAP通信)が関係者の話として伝えた情報では1年契約となっています。

 

 これで、ペンスキーは3名のドライバー全てが来季の契約をしているので、マット ディベネデトーが

ペンスキーに”昇格”することは無くなりました。

 

 スポーツ ビジネス ジャーナルのアダム スターンが伝えたところによると、チップ ガナッシ レーシングが

来季の#42のドライバーとしてバッバ ウォーレスに関心を示しているということです。

 しかし現在所属するリチャード ペティー モータースポーツもウォーレスの残留に意欲を示しており、

フォーブスのデービッド スミスは、『RPMがウォーレスにオーナー兼の一部を譲る考えがある』と伝えています。

これはニューハンプシャーのレース中にも放送で少し話題に上がっていたものですが、その後の情報では

10%~20%の権利になるのではないか、と伝えられています。

 ウォーレスはカップシリーズでまだ一度も勝ったことがないですが、シリーズ唯一の黒人系ドライバーとして

知られており、昨今の差別反対運動においても多くの発言を行うなど、知名度が大きく向上しています。

オールスターのファン投票でも上位で、チーム側としてはウォーレスの存在自体が1つの大きな魅力に

映っていると思われます。中継内のリポート内容はうろ覚えですが、ウォーレスはいくつかのオファーがあることを

認めた上で、8月中には何らかの方向性を示したい意向を示していたと記憶しています。

 

 

 COVID-19パンデミックによる資金面の影響で売却されるとの噂が出ていたリバイン ファミリー レーシング、

8月4日にオーナーのボブ リバインが、チームを売却したことを正式に認めました。

2020年シーズンは最後まで参戦するとしています。

 

 売却先は非公表で「こちらから言うことはないので向こうから発表がある」と電話会議でコメントしましたが、

関係者の話によれば、#77 Spire Motorsportsを運営するThe Spire Agencyが有力とされています。。

 この売却にはチームの建物、チャーター、在庫がある一方で、車両一式はジョー ギブス レーシングから

与えられたものであるため、シーズン終了後にJGRに返却されるため売却対象ではないとのことです。

 

 オーナーのボブ リバインは建設会社の人で、このパンデミックによって本業が多大な影響を受けました。

電話会議の内容は長いので細かく和訳するのがさすがに面倒でやってないんですが、どうやらリバインは

現在のチャーター制度や、パンデミックを受けて行われたNASCARとチームとの対応協議で何ら内容が

示されなかったことについて不満を述べた模様。LFRは2016年のサークル スポーツ モータースポーツと

提携してチャーターを合流により取得したのに、提携が1年で解消されてチャーターを失ってしまい、

高いお金を払ってトミー ボールドウィン レーシングからチャーターをまた買うことになったことが

制度上の不備であると考えているような話がNBCの記事からは感じ取れました。

 

 これによりJGRのドライバーにも影響が出そうです。TRDはエリック ジョーンズとクリストファー ベル、

若い2人のドライバーがいずれも来季のトヨタ陣営に残ることを望んでいますが、LFRが無くなれば、

スパイアーがJGRと提携して新たな供給先になるか、既存チームがトヨタに鞍替えしない限り、

シートの数が1つ減ってしまいます。

 ジョーンズとJGRの契約は今年限り、一方でベルは本来LFRと2年契約で来年までの契約でした。

LFRとの契約は事実上TRD主導のものですから、そういう点でLFRが無くなって行き場が無ければ、

当然ベルはJGRでの契約継続を望むでしょうし、ある程度そうする必然性が出てきます。

ジョーンズはJGRで唯一今季未勝利でプレイオフも当落線上にいますから、契約が更新されなくても

不思議ではありません。ジョーンズがダニエル スアレスと同じようにJGRのシートを失って、仕方なく

下位チームと契約する、ということは十分起こり得ると思われます。

 

 ところで結果論ですが、マット ディベネデトーがLFRを出たのは正解だったかもしれません。

LFRがJGRと提携し、競争力のある車で快進撃を見せた!のにTRDの意向でLFRを志半ばで追われた

ディベネデトーですが、その後ウッド ブラザーズ レーシングのポール メナードが引退の意向を固めた上で

「俺の後継者を選ぶならディベネデトーだ」と直訴して2020年にウッドブラザーズへ移籍。そして今季

プレイオフを争う活躍を見せ、古巣は消滅に至ってしまいました。もし残留していたら、最悪来季のシートは

見つからなかったかもしれません。人生何がどう転ぶか分からないものです。

 

 JGRの提携先が消滅するのはファニチャー ロウに続いて2件目。状況が全く違うとはいえ、数少ない提携先、

事実上の5台目の車でもあるわけで、JGRとの提携料を負担・減免するとか、何かチームが簡単に消滅しない

手立てをうつことはできないのかなと個人的には感じます。購入した側が今後どうなるのか分かりませんし、

COVID-19の影響はここだけではないのでこの先も同様の事態はじゅうぶん起こり得ますが、

あまりにあっさりとした幕引きには残念な気持ちしかありません。