シーズン終了から少し経過したNASCARですが、去る10月2日、
2019年の車体規則の概要が発表されました。

 2013年に導入された現行の車体、Generation-6(Gen6)は
ダウンフォースが旧来のCar of Tommorow(CoT)に比べて増加、
結果的にクリーン エアーを受ける先頭車両が逃げ、追う側は
乱気流に阻まれて終えない、抜けない、ということが批判されました。

 そこで2015年以降、NASCARはダウンフォース削減に取り組み、
摩耗の早いタイヤと組み合わせることで追い抜きの促進や
ドライバーの力量を規則方向へと舵を切ってきましたが、
これが来年大きく転換することになりました。

変更点を箇条書きすると
・スポイラー高を2.375インチ→8インチに(幅は61インチで据え置き)
・従来より大きな2インチのオーバーハングのスプリッター
・従来より大型の、前方37インチから後方31インチに
 絞り込まれるラジエーター パン
・1マイル以上の計17レースで用いられるエアロ ダクト
・エンジンに
 1.17インチのテイパード スペーサー(1マイル以下のトラック)
 0.922インチの  〃      (1マイルより大きいトラック)
 のいずれかのスペーサーを装着

となっています。イラストにしたものがこちらです。

 分かりやすいのはスプリッターとスポイラーの拡大で、
ダウンフォースが増加します。
 そしてエンジンが大きな変更点で、テイパードスペーサーというのは
まあリストリクター プレートと同じだと考えれば良いでしょう。
私もどういう意味で使い分けてるのかよく分かりませんw
 で、これを2パターン用意し、1マイルより大きい高速オーバルでは
0.922インチを使用します。これは今までのリストリクタープレートと
呼ばれていたものとかなり近いサイズです。
 そして、この『1マイル以上』には、デイトナ・タラデガも
含まれており、つまりスーパー スピードウェイとそれ以外で
エンジンは基本的に同じ仕様になります。
(後述しますが開幕戦のデイトナ500のみ対象外です)

 一方で、1マイル以下のショート トラックとロード コースでは
パワーが無いと寂しいので1.17インチを使用。こちらは
約750馬力で現在と大きな差はありません。

 そして、小パワー仕様では、空力面でも『エアロ ダクト』と
呼ばれるものが装備されます。これはフロントの両サイドから
取り入れた空気をタイヤ前部から横へと逃がすダクト。
NBCが昨年のXfinityのレースでこれに似た(実験元となった)
レースで動画解説してくれていました。
イメージ 2
 このようになるようです。ただ、これでどう効果が有るのかは
調べてもイマイチ不明(。∀°)NASCARは接近しやすくするためと
説明しているようですが。
 ただし、このダクトは
ポコノ―(2戦とも)、アトランタ、ダーリントン、ホームステッド
の計5戦では使用しません。
 そして、高パワーパッケージではいずれもこれは不使用となっています。

 だんだんややこしくなってきましたねw
整理すると組み合わせは

・1マイルより大きいトラック全22戦のうち17戦
 =低パワー+ダクト

・1マイルより大きいトラックのうちポコノ―、ダーリントン、
 アトランタ、ホームステッドの5戦
 =低パワーでダクトなし

・1マイル以下のトラック10戦とロード3戦
 =高パワーでダクトなし

となり、デイトナ500だけは2018年の規則を引き継ぎます。
 なぜデイトナだけ除外されているのかというと、
デイトナはここだけを目指す小規模チームも多く、
プレートレース用のエンジンや車体が規則発表段階で
既に準備されている可能性が考えられるため、そうしたチームに
配慮するためであるとされています。
ですから、2020年も仮にこの規則が維持されるなら、その時は
新規則で開催されることになります。

 「2年以上に及ぶプロセスによって、レース チーム、完成車メーカー、
  そしてとりわけエンジン ビルダー、もちろんドライバーを含む
  多くの利害関係者と協力してこのパッケージにこぎつけたんだ」

 とNASCARの上級副社長兼最高競技車両開発責任者のスティーブ オドネル。

「我々は、とにかくドライバーに焦点が当たるNASCARへと
 回帰することに集中した。接近したサイド-バイ-サイドのレースと
 それ以上のものを提供するためだ。」

 ファンの中には、(私もそうですが)単なる疑似直線レース、
人為的なパック レースになることに対する批判も出ていますが、
オドネルはそれも承知の上であるとしています
「ファンを取り戻すことが大事じゃないかな?」
「確かに何人かのドライバーからもそうした声を聞いた、
 一方で何人かのドライバーからは逆に意見を聞いたこともある。
 そして来年に向けて重要なのは、ドライバーに焦点が当たるように
 したいということだ。彼らは我々のスターであり、アスリートであり、
 そして同時に我々のチームだ。今日のこのスポーツを見てみると、
 空力とドライバー・車の重要度合いのバランスが崩れているかもしれない、
 これをとにかくドライバーの手に戻したいんだ。」

 この規則によって、スーパースピードウェイと他のトラックでの
仕様の差も無くなり、使用するパッケージが単純化されることで
コストの削減を行う、という意味合いも含まれているようです。

 そもそも、空力に焦点が当たりすぎている、として
ダウンフォースを削減して『ドライバーの力量をより魅せる』
はずで、F1関係のプレスからも
『レースを面白くするならNASCARの方向性
(あるいはエアロ キットを廃止したインディーカーの方向性)が
あるべき方向で、ダウンフォース増大は逆ではないか?』
という意見が出ていたにも関わらず、流れをひっくり返すこの決定。
果たしてどういうレースになり、誰がまず優位に進めるのか、
来年が楽しみ半分恐ろしさ半分です。