Monster Energy NASCAR Cup Series
Bank of America Roval 400
Charlotte Motor Speedway Road Course 
                 2.28miles×109Laps(25/25/59)=248.5miles
winner:Ryan Blaney(Team Penske/Menards/Pennzoil Ford Fusion)

 MENCSプレイオフ 第3戦、ラウンド オブ 16の最終戦シャーロット。
史上初、混乱必死のローバルです。
ローバルの説明は前回まとめたのでそちらへ


 レースは予想通りの波乱、混戦、大爆笑(?)。ライアン ブレイニーが
まさかのキャリア2勝目を挙げました。
そしてプレイオフの脱落圏をめぐる争いは、チェッカーを受ける
その瞬間まで終わることはありませんでした。

 レース前のプレイオフ争いはご覧の状況。
イメージ 1
 予選はカート ブッシュがPP、2位にA J アルメンディンガーとなります。
前回の記事にあったように練習で車両を大破させた人もおり、
勝つしかないデニー ハムリン、エリック ジョーンズもリアからのスタート。

 10月は乳がん撲滅運動月間的なものなので、ペースカーは
シェリー ポレックスが運転。PPではないですが
マーティン トゥルーエックス ジュニアが特別に背後を走って
二人なかよく運動のアピールです。トゥルーエックスは13位スタート。

 レースが始まるとカイル ラーソンが好調でカートと暫し
テール トゥー ノーズ。ラーソンはいつもロードでは速いけど
リアをつぶしてダメになるので、今日も同じパターンだと勝手に
決めつけていましたが、冷静にカートの動きを見極め、タイヤと
ブレーキも労わりながら、CM中の6周目にリーダーに。
 この後、2006年以来のカップ戦決勝レース・スタントン バレットが
ターン1で真っすぐ刺さってコーションとなり作戦が分かれますが、
ラーソンは以後も後続を寄せ付けずにステージ1を制しました。
ロードが上手くなったのか、ローバルで全編コーナーでなければ
デメリットが消えるのか、これは脅威になりそうです。


 ステージ間コーションではカートがピットに入った一方、
上位陣はラーソンを含めまだステイ アウトも複数います。
燃料的には35周程度もつということで、ここを前で
リスタート→40周目あたりでピットしてステージ2走り切る→
ファイナル ステージを前からリスタートして85周目前後で最後のピット、
という『2ピット作戦』を考えているものと思われます。
ファイナルステージは絶対1ピットしないと走り切れないため、
可能な限りリスタート順位を維持して混乱を避ける戦略です。


 ステージ2もラーソンが好調ですが、上記の通りピット必須、
一方4位リスタートのブレイニーは最初のコーションでピットに
入っていたためこのステージピット不要。
無理に順位を争う必要もなく、安定した走りでステージ終盤へ。
当落線上にいる彼にとっては
『ステージ優勝で10点獲るけどリスタート順位が下がる』ことを
どう考えるかがポイントになりますが、やはり獲れるものは獲るのが鉄則、
そのまま逃げ切ってステージ勝利。10点を手にします。
 ジミー ジョンソンがそれに次ぐ2位、ステージ1と併せて
14点を獲得し、脱落圏からの脱出へ好材料、車の調子もよさそうです。

 コンテンダーでは、もらい事故でエリック アルミローラが
ウォールに追いやられて壁に当たってピットを余儀なくされた上、
クルーがあれこれ修理に追われてタイヤの管理がおろそかとなり、
アンコントロール タイヤのペナルティーまでいただきました。
点数に余裕があるとはいえリタイアすると痛手になります。

 さらにブラッド ケゼロウスキーとトゥルーエックスが絡んでスピン。
進出決めてるから関係ないとはいえ遺恨を生むと今後大変です。
なおNASCARでは、シケイン不通過はその先できちんと一回停止してから
再度発進する『ペナルティー自己消化』を求めており、
不通過なのに止まらなかった、と判断されるとペナルティーを受けます。


 ファイナルステージ、ピットに入った時期がバラバラですが、
ラーソンがリーダーで全員最低でも1ピット、という状況だけ頭に
入れつつリスタート。
ジョンソンはピット組でトップの19位からリスタートし、上手いこと
混乱をすり抜けてあっという間に11位まで浮上します。

 59周目、スロー走行になっていたクリス ブッシャーを避けようと
バンク部分でアウトにラインを変えたオースティン ディロンが
そのまま曲がれずウォールへ、デブリーでコーションになります。

 62周目のリスタートではアルメンディンガーが完全に
ミサイルになってハムリンに当たりますが、なぜかみんな
うまく立ち回って荒れずに進行(´・ω・`)
しかし66周目、ディロンが再びクラッシュ。今度は修復不能で
ガレージ行き。事実上脱落が決定します。

 68周目にリスタートされますが、69周目に別々の2件の
スピンが発生してまたもやコーション。
 ブッシャーがレース中に新スポンサー、エコパークを獲得しましたww
イメージ 1
 アルミローラはリッキー ステンハウス ジュニアに押されたようで、
こちらも看板の重りのために下に置いてる砂袋を引きずってしまいピットへ。
 そして、ここでほぼ全車、燃料はギリギリですがピットを決断、
燃費レースの様相を呈します。

 リスタートではステイしたステンハウスとポール メナードが
1列目に並びますが、既にボロボロなステンハウスはすぐに自滅。
 カイル ブッシュが全然コースじゃないところを走りますが
イメージ 2
 追突回避だったのと順位を上げなかった(むしろ下がった)ためお咎めなし。
エリック ジョーンズはチームメイトのダニエル スアレスと接触して
タイヤを傷めピットへ。
 このあたりで、ジョーンズ、ハムリン、ディロンの脱落は
ほぼ決定で、あと1つの脱落枠をポイントで争うことになります。
ボイヤー、ブレイニー、アレックス ボウマンの3人が
争う構図になってきたようです。

 レース中にスポンサーを見つけるのが流行っているようで、
J J イェリーはボージャングルズの看板を持ってピットへ。
イメージ 3
BKレーシングが他所の外食チェーンを持ってくるという
シュールな状況で私はここで大爆笑、腹いてえw

 この後ケゼロウスキーがリードを奪いますが、彼もステイ組で
最後のピットは2つ前のコーションの66周目、燃費走行している
ようには見えないですが、ケゼロウスキーは勝てないなら
ガス欠でも構わない立場なのである程度賭けに出ているようです。

 その燃料に関しては「3周ショート」と言っているチームもあれば
「半周」というところもありまちまち。
 解説でも「ここでレースした経験が無いので、長いスティントで
どのぐらいペースが落ちていって、結果どのぐらい燃料を使うのか、
正確なデータに乏しいからブレが大きい」と言っています。

 83周目、ケゼロウスキーが縁石に思いっきり乗って左側の
スプリッターがへしゃげるダメージでラーソンが迫ってきます。
 残り21周では、このままの位置で走っていると脱落が決定してしまう
ボウマンが状況打開のためピットへ。
すると、争う2台も作戦が割れてリスクになるのを避けるため
作戦を合わせ、ブレイニー、ボイヤーもピットへ。ちょうど同じような
順位で争っています。

 残り8周、お騒がせステンハウスがターン1で思いっきりクラッシュ。
これで残り6周でのリスタート、解説で
これほど使い古したタイヤでのリスタートはまだ未経験だから
何が起こるか、というようなことを話していたんですが、、、
なんっっっっじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!! 

 あろうことかリーダーのケゼロウスキーが曲がり切れず、
2位のラーソンも曲がれず、前2台が絡んで後続が大混乱。
もうわけ分からんw
 ラーソンは単独なら順位を下げる程度のミスでしたが、
ケゼロウスキーが壁に刺さって跳ね返ったがためにそこに命中して
サスペンションが折れてしまった模様。
まだたくさんの車がレースに残っており、もしリタイアだと
いきなりプレイオフ脱落の最悪の展開。
アルミローラもダメージを受けてピットに入り順位を下げ、
彼らがどの位置で終えるかが最後まで分からない情勢です。
イメージ 4
これでコースが散らかりすぎて赤旗。ブレイニーも軽く
巻き込まれて順位を下げましたがダメージは免れました。

 残り3周、トゥルーエックスとジョンソンのトップ2でリスタート。
さすがに慎重にみんな走って、この2台がトップ争いのまま
最終周へ突入。ラーソンはなんとか走っていますがもはや風前の灯。
 さあ、ジョンソン、長い長いトンネルにピリオドか、トゥルーエックス
逃げ切りか、最終ターン突入!!!
 ぶつかったああ、しかも巻き込まれたあああ( ゚Д゚)カオス!!

 ジョンソン飛び込もうとして最初から明らかに姿勢を乱して
そのままトゥルーエックスも巻き添え。
6位リスタートから上がってきていたブレイニーが脇を
すり抜けてトップでチェッカーを受けました。
キレたトゥルーエックス、チェッカー後ジョンソンに仕返し。
ただ、これだけならジョンソンも大した損害はありませんでした。
問題は、スピンして順位を失ったことでした。
あのズッタボロのラーソンはどうなったかというと
別のアクシデントで止まっていたジェフリー アーンハートを抜いて
25位でチェッカー。
この変動によるたった1点で、ラーソン、ジョンソン、アルミローラの
3人が同点で並びました。
同点の場合、タイブレイカーは
『当該ラウンド内での最高順位』と規定されています。
ラーソンは2位、アルミローラは5位に対して、ジョンソンは
8位だったため、フィニッシュ100m手前まで進出濃厚だった
ジョンソンがまさかの脱落。
ラーソンはまともに曲がれもしない車でまさかの生き残りでした。

 ジョンソンとすれば、ドライバーなら行くしかない、
というのもありますし、勝ってプレイオフ ポイントを得ないと、
進出したところで結局次で落とされる、というのもあったかとは
思いますが、勝ち残れないと何も始まりません。
まさかスピンして8位まで落ちる、そのせいで圏外だと思ってた
ラーソンに負ける、そんなことが起こるとまでは考えて
いなかったでしょうが、ずっと勝てていない状態、目の前の勝利、
色んなものが重なって、つい行き過ぎた感じがありました。

 他方、ブレイニーはピットのタイミングが結果的に全部
見事にハマって、プレイオフポイント6点を追加して
次ラウンドですから、これは大きなレースになりましたし、
この映像は来年以降も長く名場面としてローバルのたびに
使われることになるでしょう。
途中「あちゃー、ここで落とされるか。。。」と私もちょっと
諦めかけてましたが、ツキがありました。


 ところで、ボコボコのラーソンには1つ疑問が。
NASCARにはダメージ ポリシーというのがあり、事故で負った
破損の修復はピット ボックスで合計6分の作業時間まで。
そして、規定の最低タイムをクリアできた場合には時間は
リセットされる一方、クリアできない車の場合は修理できなかった、
クラッシュで壊れた、とみなされてガレージ行き=リタイアとなっています。
 ラーソンはまともなスピードでは走行できておらず、
そもそもラーソンは失格では?という疑問が出てきました。
この件に関し、NASCARのスティーブ オドネルは、

「もしレースがもう1周あれば彼はペナルティーを受けただろう」

とコメント。ではなぜそうならないのか説明しました。

ダメージ クロックを使い切ってコース上へと戻された車は

「最低速度を出すために3周することができ、それでタイムが出なければ
 レースを終えることになる。」

規則で、猶予期間が3周あるわけです。

「ラーソンのケースでは、クルーは彼にコースにとどまるよう指示をした。
 最終ラップは彼にとっての3周目だった。彼は最低速度を出すことは
 できなかった。しかし3周の期間内だからOKだ。彼は完全に
 合法的に3周を走り切った。」

つまるところ、最後の3周でリスタートした場合が抜け穴のように
なっていたわけです。
大抵の場合、そんなぶっ壊れた車が残り3周でガレージへ行こうが
壁に当たりながら走ろうが大した問題ではないですが、
今回は偶然が重なった結果、天と地ほどの差を生みました。

今後規則を変更する必要性があるのではないか?という
疑問にオドネルは

「実際、規則上の文言としては完璧に機能していると思う。
確かに、カイルはそれから恩恵を受けた。こんなことは初めてだ。
しかし、誰もがこのルールに従い、適切に実行されていて、
満足をしている。」

 少なくとも、最後の3周を連続して規定以下でしか走れなかった場合には
ペナルティー、ないしは3周減算などの対象とする文言があれば
良いのでは?と思いますが、そうすると、じゃあ残り2周だったら、
とかいう話になってきますね。
 最後の周、と規定するとゴール前のクラッシュで走れなかった人が
全員処分対象になるため、規則の文言で対象となるドライバーを
きちんと定義づけしないといけないですし、
思わぬ形でこの制度の問題点が浮上した形となりました。


 改めて整理すると、このラウンドで
ジョンソン、ディロン、ハムリン、ジョーンズの4人が脱落しました。

 シャーロットの高速バトルも素晴らしいので、
ロード使うなんて邪道、、、という気もしていましたが、
なかなかストックカーで走るにはクセモノのコース。
 最近の若い人はロードも上手いですし、制度面と相まって、
ここだけスペシャリストが速い、とかいう時代でもないので
非常に面白く、率直に『あり』だと思ったレースでした。
最後の結末はさておきw
 他にもロードを使いたい意向のトラックはあるようですし、
以前書いたことがありますが、サーキット オブ ジ アメリカズが
誘致を検討するなどロードコース戦への需要もあるようなので、
今後とりあえず1~2戦はローバルが増えてもおかしくなさそうですね。



 ところで、ウルミコスさんがプレイオフ前に立てた予想をふと振り返ると

脱落:ボウマン ジョンソン ハムリン ディロン

と書いてあり、3人的中させました( ゚Д゚)
リッチモンドでの弟ブッシュの勝利と併せて4つ的中。
さすが!(っ ◠‿◠ c)

 次戦はこれまた私の好きなドーバーから始まります。