さっそく質問があったので答えてみましょう。
ファニチャー ロウ レーシングとは何ぞや?という話。
書き出すと実は結構深ーい話があります。
FRRはWikipediaによると2005年に参戦を開始した比較的新しいチームです。
オーナーはバーニー ビッサーという人で、チーム名でもある
ファニチャー ロウという会社の共同オーナーでもあります。
ファニチャー ロウは家具やさんで、全米に116店舗ある模様。
日本だと大塚家具とかそういう感じでしょうか?
チームのスポンサーもファニチャー ロウと、デンバー マットレスが主体。
本拠地はコロラド州デンバーで、ノース カロライナ州に拠点を構えるのが
当たり前のNASCARにおいて異色の存在です。
当初はシボレーを使用していてリチャード チルドレス レーシングの
サテライト系チーム。RCRには今も多くのサテライトがありますが、
簡単に言うと自力で道具を集められない小規模チームが
大規模チームからシャーシやらエンジンやら人員やらを供給してもらうことですね。
当たり前ですが最初は下位チームで、福山 英雄的表現をすると
「2流どころか3流チーム」となるわけですが、ビッサーさんはたぶん
お金もやる気もあったので、体制を少しづつ強化、
2011年にリーガン スミスが初のトップ10、トップ5、そして優勝と果たします。
2012年途中にはクルー チーフとして元RCRのトッド ベリアーを加えます。
ベリアーは長くケビン ハービックのクルーチーフを務めていました。
さらに、この年の終盤にはカート ブッシュが加入。
カートは2011年いっぱいでペンスキーのシートを失い、この年は
フェニックス レーシングから参戦。問題行動と不安定な成績から1流チームを離れて
下位チームで走るカートは崖っぷちでしたが、FRR加入後はシーズン最後の3戦で
トップ10フィニッシュ。
そして、2013年には未勝利ながらチェイスに進みました。1台体制のチームとしては
史上初の出来事で、FRRはトップチームの一角を担い始めます。
ただ、崖っぷちカート君はこれでスチュワート-ハースのシートを得て移籍。
そこに入れ替わりで来たのがマーティン トゥルーエックス ジュニアです。
トゥルーエックスもまた崖っぷちでした。2013年は
マイケル ウォルトリップ レーシングでクリント ボイヤーと双璧をなして
チェイス枠の最後の1つを争い、見事ギリギリ滑りこんだ、かに思われました。
ところが、この滑り込んだレギュラー シーズン最終戦、MWRが
トゥルーエックスを有利にするため、故意にボイヤーにスピンさせて
コーションを出したことが発覚。
トゥルーエックスは罰則を受けてチェイス進出は無し、さらに、スポンサーだった
NAPA(現在はチェイス エリオットのスポンサー)が
「このような不公正なことをするチームとは縁を切る」とスポンサー打ち切りを
即座に表明。NAPAはオーナーのウォルトリップと長く親交のある
大事なスポンサーだったためチームは壊滅的な打撃を被ります。
NAPAの支援無くしてMWRにトゥルーエックスを乗せる車が用意できず
トゥルーエックスは無職に。そんな彼をFRRは引き入れました。
2014年はトップ10フィニッシュ5回にとどまりランキング24位、
ああ、チェイスはやっぱカート抜きでは無理なのかなと思われましたが、
翌2015年、新たなクルー チーフ・コール パーンと共に開幕から絶好調。
15戦で14回のトップ10という快進撃を見せます。
で、このころから、FRRにトヨタ陣営移籍の噂が立ち始めます。
オーナーのビッサーは、トップチームを差し置いて活躍する自チームに対し、
シボレーからのさらなる援助が必要、と述べる一方、トゥルーエックスの
古巣であるMWRは、大口出資者が突然撤退し存続の危機。
詳しくはこちらを参照
ZURA SPORTS web MWR消滅か?
これでTRDからすると、トヨタ系チームが欲しいところで、
できるだけ手厚い支援で、いうなればワークス格で戦いたいFRRとは利害が一致。
おそらくトヨタ移籍をちらつかせてビッサーはシボレーに対して
支援増額を要請したのではないかと思われますが、
結局翌年からジョー ギブス レーシングのサテライトとしてトヨタに移ることが決まります。
シボレー最終年、トゥルーエックスは4位という好成績をFRRにもたらしました。
で、やっと今の時間軸に話が移ります。
2016年、FRRは今度はJGRのサテライトということで、現地の放送ではよく
JGRのドライバーと「チームメイト」と表現される立場に。
シボレー時代のRCRは、シボレー内ではヘンドリックに次ぐ位置でしたが、
JGRはトヨタの最大チームであり、それと同じ道具、しかも前年に
カイル ブッシュがチャンピオンになったこの時点での最強の体制ですから、
願ってもない立場です。
シボレー最終年に親玉のRCRより速い車を作っていたように、どうも彼らの
セットというのは何か他と違うものがあるらしく、コース上では
場合によって『JGRの5台目』として振舞いつつも、レースでの安定性が高い
安定志向の車で好成績を上げ続けました。
エンジンさえ壊れていなければ、チャンピオンの可能性はじゅうぶんにあった
シーズンでした。
そして今年は2台体制で、エリック ジョーンズが加入。
ジョーンズはJGRの秘蔵っ子で、JGRのシートに空きがないから
派遣されてきた感じです。
台数が増えてもチーム力に衰えが見えないどころか2台とも速く、
やはり親玉のチームとはちょっと違った車の仕上がりなように見えるので、
エンジニア力になにかすごい隠し玉がありそうです。
バスプロショップなど、トップの選手が得るスポンサーも
ちらほらと見られるようになりましたが、今でも多くのレースは
つや消しブラックのファニチャー ロウ/デンバー マットレスのスキームで
走っているあたりは自社がスポンサー圏オーナーで、費用対効果があるという
証かもしれません。
余談ですが、今年カップのスポンサーにMonster Energyが入り、
それによって「新たなエナジー ドリンクのスポンサー契約はできない」
という排他契約が成立したため、ジョーンズの5-hour Energyは大丈夫か?
と一時冷や冷やする場面がありました。