Monster Energy NASCAR Cup Series
Coca-Cola 600
Charlotte Motor Speedway 1.5miles×400Laps
                  (100/100/100/100)=600miles
winner:Austin Dillon(Richard Childress Racing/
               Dow Salutes Veterans Chevrolet SS)

 MENCS シャーロット600。佐藤 琢磨がインディアナポリス500に勝った
その日の夕方~夜のレースになります。
 このレース、なんとNASCARは通常の3ステージ制ではなく
特別に4ステージ制を採用。100周ずつというまあなんとも
600マイル台無しな制度です。
 アメリカ人にとってメモリアル デー≒戦没者慰霊記念日というのは
やはり大きな日で、日本人がインディー500で勝つとは不愉快、といった
暴言が出てくる一因であろうと思います。
 昼はそんな展開でしたが、その記者も夜は満足したことでしょう。
なんと日本のトヨタが上位を独占する『極めて不愉快』な展開をうっちゃって、
アメリカの主要企業であるダウをスポンサーに構えるアメリカのシボレーの
栄光のカー ナンバー3、オースティン ディロンがキャリア初優勝を
果たしたのですから。
(お分かりかと思いますが記者を揶揄してるだけで私が
差別してるわけではありませんので)

 ディロンはこのレースを前に、クルー チーフがスラッガー ラビーから
ジャスティン アレグザンダーに交代しています。
 情報では、RCRからのリリースで、ラビーについて
「他の機会を探すためにチームを離れる」ことを理由とした交代だそうで、
その真意はよく分かりませんでした。
アレグザンダーはXfSのNo.2のクルーチーフを務めていました。
 ちなみに代わってXfSの方にはランドール バーネットが加入しています。


 さて、レースの方はケビン ハービックとカイル ブッシュが1列目でスタート。
しかしスタートから勢いの良かったカイルがリーダーに。
先週のオール-スター勝者は今週も出足好調です。
 20周目、いきなり大きな事故が発生。ジェフリー アーンハートの車が
トラブルを起こし、その際に飛んだ小さな破片を踏んだチェイス エリオットの
左前が壊れて出火し減速、そこに、オイルに乗って制御が効かない
ブラッド ケゼロウスキーがまともに突っ込む不運な多重事故でした。
チェイス君はこのところあまり流れがありませんね。
 結局この後もカイルが圧倒的で、ステージ1を制します。
2位には昨年のこのレースの勝者、マーティン トゥルーエックス ジュニア。
 予選前の車検に引っかかって39位スタートだったカイル ラーソンも
既に6位まで上げてフィニッシュ。こちらも先週速かっただけに
この後が期待されます。

 ステージ2はカイルがピットで珍しく順位を落としたため
トゥルーエックスがリーダー。リスタートを決めるとそのまま快走。
 ステージ42周目、マット ディベネデトーがクラッシュしてコーションと
なりますが、コーション中に雷雲が襲来。雷と雨で約1時間40分の
中断となります。
 中断中にすっかり夜になりリスタート。この後もコーションが出ましたが、
トゥルーエックスが制しました。2位にはジミー ジョンソン。
3位マット ケンゼス、4位にカイル。今日はJGR勢がFRRも含めて6台すべて
好調で、この後も上位で争います。

 ステージ3もトゥルーエックスのターン。
ステージ46周目、中団勢がアンダーカットで状況を打開しに行き始めた矢先に
タイ ディロンがオイルを撒き、ハービックがスピン。そしてそれとほぼ同時に
ケイシー ケインの左リア サスペンションがいきなり折れてクラッシュ。
コーションが発生します。
ラーソンも似た時期に壁にこすって右前のフェンダーを破損。
作業時間確保のため、ピット クローズ中にピットへ。


 なおケインですが、主要スポンサーの1つであるグレート クリップスが
今季限りでスポンサー契約を終了するとこの後発表されます。
既にファーマーズ インシュランスも今季限りと発表されているそうで、
来季のスポンサーを早急に確保する必要に迫られています。
ケインとチームの契約は来年までとなっています。


 レースに戻りましょう。ジョンソンはちょうどピットが締まる前に
ピットへ飛び込み大ラッキー。これで先頭でリスタートできます。
が、リスタートであっさりトゥルーエックスがそれを奪い返します。
 カイルも2位に上げてくると、ステージ終盤には11位までにすべての
JGR&FRRのカムリが入る久々のトヨタ無双。
 しかしステージ残り8周、ラーソンの右前タイヤが壊れたか再びのクラッシュ。
このピットでなんとデニー ハムリンが5位から1位に上げるマジック。
逆にジョンソンは4つも順位を落としました。
ジョンソンの前のピットがエリック ジョーンズ。ジョーンズは
トゥルーエックスのチームメイトですが、どうも故意にピット ボックスの
後ろ寄りに車を止めてジョンソンが出るのを妨げている様子。
ジョンソンも対抗してギリギリまで下がるものの、ジョンソンの後ろがカイルで、
先にカイルが入ってしまうとあまり手前にも止められず、できることがありません。
クルー チーフのチャド カナウス。ジョーンズ陣営に文句を言いますが、
あんまり聞いてない模様(´・ω・`)
ちなみにこのピットではジョンソンの作業がイマイチで、ジョーンズは
ジョンソンより先に動いていたので邪魔にはなっていませんでした。
ジョンソンからしたらどっちにしろ面白くないわけですが。

 さて、残り3周の短距離戦はリッキー ステンハウス ジュニアが
ステイ アウトを選択したため彼と同じ外レーンの人は邪魔になって勝負権無し。
インからリスタートしたハムリンがそのまま勝ちました。ほぼピットで
勝ち取った10点&ボーナス1点です。
このステージはカムリがトップ5を独占しました。


 そしてやっとこさ最後の150マイルのステージ4。
ここでハムリンがリスタートに大失敗、カイルがリーダーに。
トゥルーエックスが追う中、残り72周というところでコーション。
このタイミングが勝負の分かれ目でした。

 残り67周でリスタート、2位からトゥルーエックスが完璧なリスタートで
リードを奪います。リスタートが大得意なカイルを凌ぐ抜群の出足でした。
 燃料ウインドウではせいぜい60周ぐらいだろうと予想されており、
60周以上グリーンが続くとも思えないので、ほとんどの陣営は
『1ストップ レース』と何の疑いも無く考えていたと思います。

 トゥルーエックスはカイルに2秒以上の差を付けて快走。3位以下も離れ、
残りが33周ほど(=リスタート時の残り周回を半分に割った距離)
となったあたりから各陣営が最後のピットへ向かいます。
 しかし入らなかった人が数人、この時点では、コーション待ちなのかと
思えました。ジョーイ ロガーノの無線では「5周足りない」と言っています。
 入らない組の先頭がジョンソンで、2位がディロン。
ただ、周回を重ねるとだんだんと「こいつら走り切る気か?」という雰囲気に。
 マット ヨーカムのリポートで、ジョンソンに対してカナウスが
「31秒中盤ぐらいで走れ、トゥルーエックスは1.5秒ぐらい速いけど、
まだ15秒後ろにいる。ただ計算だと399周目にガス欠するから、とにかく
燃費走行してブレーキを丁寧に使え」という指示が出ているという話。
これはもう完全に走り切るつもりです。

 一方その頃、ディロンの方はだんだんとジョンソンとの間合いを詰めていました。
残り13周、ディロンへの無線では「トゥルーエックスがピットに入っていて
0.5秒ぐらい速いタイムで捕まえに来てるけど、このまま行けるぞ」
という話。同じ作戦でジョンソンと比べて追いついており、一方で
ジョンソン側はさらなる燃費走行が求められています。
どうやらディロンの方が余裕がありそうです。
 また、時折映る空撮映像を見ていると、どうもトゥルーエックスはここに来て
ターンの出口での動きがあまり良くないように見えました。
ディロンに対するタイム差も無線の通り小さくなっており、
だんだんとガス欠を祈るしかない雰囲気が漂ってきます。

 残り4周、ランドン カッシルが壁に当たるも、コーションは出ず。
そして残り2周のバックストレッチで予想よりも早くジョンソンガス欠。
ディロンがトゥルーエックスに1.4秒の差を付けて最終周に入ると、
そのトゥルーエックスはむしろカイルに抜かれます。
そのカイルももはやディロンには及ばず、ディロンが見事に逃げ切り成功。
参戦133戦目での初優勝でした。

 No.3の車がカップ戦で優勝したのは2000年10月のタラデガで
デイル アーンハートが優勝して以来で、アーンハート以外のドライバーの
No.3による勝利は1983年のリッキー ラッド以来です。
 また、シャーロット600が初優勝だったのは1972年以降で6人目となり、
この過去5人のうち3人が後にチャンピオンになっています。

 初優勝を挙げたドライバーはこれでステンハウスに続いて今季2人目で、
3戦で2人の初優勝者が誕生するのは2011年の
ポール メナード、マルコス アンブローズ以来。
 
 ディロンはレースをリードしたのが最後の2周だけで、今季通算でもまだ9周。
昨年はトゥルーエックスが392周リードで優勝なので正反対。
そのトゥルーエックスはこのレースでも最多の233周をリード、
そしてラーソンを抜いて選手権でトップに立ちました。
 


 それにしてもディロンの勝利は驚きでした。クルー チーフが代わって
いきなりというのも驚きですが、コーション時の状況やRadio Activeを見ると、
最後まで走れると信じて最初から作戦を遂行したのは見事に裏をかきました。
 というのも、あのコーション時、リード ラップの後方=ピットに
複数回入っても損しない人たちは、現地の解説だと燃料のつぎ足しを
全く行っていません。
「何でトップ オフしないの?」>「しても全然足りないから」
といったやり取りがされていたと思います。
 ロガーノの無線では
「みんな7~10周は足りないよ」
カイルの無線でも
「誰も最後まではもたない」
と、クルー チーフも無給油作戦を全く頭に入れていなかった可能性が高いです。
 一方ジョンソンの方は無線で
「そのリズムのまま下がってくれ、恐ろしくタイムを失ってる」と指示されて
いるようなので、抜けないから急きょギャンブルに切り替え、
基本はそれでもコーション待ちだったように見えます。
 ロガーノは完全にコーション待ちで走り切るつもりが無く
「5周ぐらい足りないけど、コーションまでできるだけ引っ張ろう」
と言われています。
 そんな中でディロンだけは着実に作戦を遂行しているようで、
「ラインを通過したらグリーン スイッチだ、フル ペースで行け!」と
ある程度燃費目標を達成している無線がありました。

 かたや、追う側のトゥルーエックスはやはりハンドリングに難が
あったようで
「このままのペースで行けば捕まえられるぞ」と言われ
「分かってるよ。やってんだけど、ペース上がんねえんだよ!」
 カイルはさらに不機嫌で
「ア――――――――――――――――!!!!!!!!畜生!!!!!!!!」
 レース後インタビューではふてくされて

この有様ですw

 展開が味方したのは確かですが、ディロンにとっては大きな勝利です。
ラーソンも1つ勝ってからはより安定感が出てきましたし、
ディロンもこの後、新クルー チーフとのコンビも含めて大いに期待です。

 そして、カイルは不満ですが、今回JGR勢が久々に速さを全体として
見せてくれました。
 今年の走りを素人目に見ていると、JGRの車はコンディションに対する
いわゆるスイート スポットが狭くてピーキーな印象で、FRRの方は非常に
柔軟性があって、新人のエリック ジョーンズもいきなりトップ10で
争えるぐらい、非常に扱いやすい味付けがしてあるように思えます。
 シャーロットはコンディション変化という点では大きいレースですが、
路面自体は非常にスムーズなトラックなので、ピーキーな車でも
走りやすかった可能性もあり、そういう点ではまだこの1戦だけで
JGR復活と言うのは早いのかなという気が個人的にはしています。

 次戦は私が好きなトラックの1つ、ドーバーです。