まずはデイトナ後の情報をいくつか。
F1開催サーキットであるサーキット オブ ジ アメリカズは
NASCAR開催に意欲を示しているようです。
COTAのボビー エプスタインは
「NASCARはロード コース、オーバル以外のレースを増やしたいと
考えているわけだから、楽観的に考えているよ。彼らがそう考えるなら、
うちは最高の環境だ。多くのファンが望むなら、ぜひここで開催したい」
と、前のめりな発言。
一方、同じテキサス州では既にテキサス モータースピードウェイで
レースが開催されており、COTAで開催=TMSのレース数削減の可能性が
考えられることから、TMSのエディー ゴセージは
「彼らがレースをやりたいと言っているのを非難する気はないが、
20年遅れだと言いたい」
「彼らはビジネスを知らないんじゃないかと思うよ、でなきゃそんなこと
言わないだろう」
と不快感を示しました。
ジョーイ ロガーノはチーム ペンスキーと2022年までの契約延長で
合意しました。収容スポンサーであるシェル/ペンゾイルも同様に
2022年まで契約を延長したそうです。
また、フェデックスもジョー ギブス レーシングのデニー ハムリンとの
スポンサー契約延長で合意しました。
さて、2017年のNASCARは3ナショナル シリーズで『ステージ制』という
新たな規則が導入され、デイトナ500は全く違ったレースへと様変わりしました。
何が起きたのかを振り返りつつ、私はどう感じたか、今後どうなりそうかを
占ってみたいと思います。
事前から予想されたことでしたが、レースの姿は従来のデイトナ500とは
全く違うものになりました。
レース開始からわずか15周、ジョー ギブス レーシングとファニチャー ロウ レーシングの
計6台のカムリがピットへ飛び込みました。
ステージ1終了まで走り切るためのウインドウに入ったんですよ!と
解説するラリー マクレイノルズ。
従来のレースで、航続距離の3分の1しか走っていない車が望んでピットに入るなんて
あり得ませんでした。
彼らは、60周のステージ1を15周/45周と分けることを予め考え、
身内の車だけでパックを組んで速度を維持しつつ、トラブル回避、コーションが
発生した場合のトラック ポジション確保を狙いに行きました。
残念ながらピットに入り損ねるわタイヤはおかしいわで6台が3台に
分断される大失敗に終わったわけですが。。。
その後もステージ2終了までは戦略的な動きが続きました。
従来のレースは、序盤から無理する意味はないので、とりあえずちゃんと
集団の中で走って、動きながら集団での車のバランス、先頭での動き、
誰が速そうか、いざという時誰についていこうか、そんなことを頭の中で
練りながら、コーションが出たらその都度戦略を考えるレースでした。
しかし、機械的にコーション発生時期が設定された新規則では、事前に
ピットに入る周回数を決めた上でドライバーが動くことになったわけで、
『レースに合わせて作戦を動かしていく』から
『まず作戦があってレースをする』へと、話の入り方が、180度とまで言うと
言い過ぎかもしれませんが、大きく転換したと思われます。
結果、ピットに入る時期が前半/中盤/後半と極端な3グループに分かれました。
よく言えば
「レース展開を読みにくくし、戦略性が増して、リード チェンジが増加した」
と言えるでしょうし、悪く言えば
「集団がどんどんばらけて別々の場所で身内ドラフトをしていて緊張感が無い」
と言えます。
私のように、序盤は何も起きなくて退屈に見えるけど、その裏には見えない戦いが
あって、それこそがデイトナだ、と考える守旧的な人間からすると、
戦術方面に話が振れすぎるこの制度は極めて人為的、なんというか、
見てくれだけ面白そうに見せかけた偽物に見えてしまったと思います。
一方で、今の若い人には娯楽が多すぎて、最後の10分のために3時間待てない、
というのも事実で、そこに手を入れるための制度改正ですから、NASCAR側とすれば、
そうした批判は想定内、それを補って余りある面白さ、新規ファンを開拓できると
踏んだからこその制度変更だったのでしょう。
実際、ステージ1・2とも、最後の数周は、フィニッシュほどの無茶は
もちろんしませんが、それなりに1つの順位をめぐる争いがあり、
別にそんなにしなくても、、、というぐらい、ロガーノがブロックしていたりして、
ああ、ドライバーってやっぱりいざ走ったら、無理しないように、なんて
考えはどっか消えちゃうのね、と思わされました。
ちょうど10位あたりは車が集結しているので、ちょっとしたことで
やらかしそうな緊張感もあり、私が事前に想像していたよりも
『フィニッシュ感』はありました。
結構右に左にブロックしてるNo.22 ロガーノ
ただ個人的には、こうなるともはや500マイルという距離の否定とも言え、
それならザ クラッシュとどう違うんだ、もう200マイルもあればいいんじゃないか、
と思えてしまいます。
興行的に時間は3時間以上欲しい、でも客が退屈しないためには
1時間程度の短距離走がやりたい、という中で生み出された規則だと思いますが、
目先の利益にとらわれて大事な要素をないがしろにしないか心配です。
そして今回はクラッシュが頻発しました。
前回も書いた通り、ジェフ ゴードンが残り60周以上あるのに
もうバンプするわ3ワイドになるわの戦いぶりに疑問を呈していたようでした。
想像ですが、今までのレースであれば、ドライバーもチームも
レースの流れに合わせて段々と締めくくりへの考えをまとめていき、
残り120周、そろそろ考えるか、100周、あと2ピットか、80周でコーション、
いや、まだ仕掛けるのは先、65周・・・と、流れとともにテンションを
最大へと上げていっていたものが、最初から
『残り80周で最終ステージですよ』と言われているがために、
ステージ3が始まる=勝負!という、明確なスイッチの入りどころができたことが
要因の1つではないかと思いました。
実際にはステージ3開始後はまだ70周以上あり、必ず1ピットはあり、
コーション無しで終わるとは思えないので、次のコーション、ないしは
残り40周を切ったあたりから考えればいい、というか今までならそうだった
はずなのに、区切りを設けられたために、テンションの置き所が狂わされた、
規則に踊らされた、そんな風に見えました。
ステージ3だけで2回もバンプしすぎて多重事故の原因を作った
ジェイミー マクマーリーは、ひょっとすると火曜日ぐらいになって
「あれ、俺なんであの段階であんな焦ってたんだろ・・・?」と、冷静になって
後悔しているかもしれません。
前で何か起きればスポッターの瞬時の指示が
ドライバーの『生死』を分けることになる。
言われたからって必ずそう動けるとは限らないけど
今回日テレG+では、解説陣の1人、桃田 健史がデイトナにいて、電話で何回か
テンションの高いリポートを入れてくれましたが、その中で
「お客さんもどうなるのか頭を使いながらすごく真剣に理解しようとして見ている様子」
「とりあえず1回やって、分かった感じ。ああ速く入る人がいるのね、とか、
レースのやり方を理解した」
といった話をしてくれました。
現地のお客さんもとりあえずは新しい規則に対して、興味深く見て、
理解して、そして大好きなクラッシュもたくさん見れたので、面白くて満足、
なるほど、これからのレースはこうなるのね、と思いながら帰ったのかなと思います。
今後の解説回で桃田さんにぜひ改めて現地の雰囲気を話してもらいたいです。
そして次戦以降、スーパースピードウェイ以外のレースでは、
ここまでの戦略が出ることは考えづらくなります。
集団戦法なんてありませんし、ピット=周回遅れなので早すぎると
損する確率が高くなります。
次戦のアトランタは1.54マイルを325周の500マイル。
85/85/155と分かれており、最初の2ステージは距離的には1ストップの距離。
ただしスーパースピードウェイと違ってタイヤの影響をもろに受けるので、
あるとすれば、1ストップか2ストップか、ということになるでしょう。
1.5マイルのオーバルでは概ね似たような傾向になり、あとはそのタイミング、
スティントをどう分けるかの勝負になると思われます。400マイルのレースだと
ステージ1・2はレース距離の30%にあたる80周でたいてい設定されており、
できるだけ1か2か悩ませたいのかなという意図を感じます。
仮に2ストップ主流のレースであれば、周回数的には結構ウインドウの幅が広いので、
(3で割った時の周回数がかなり少ないので、少々早く入っても十分走れる)
今までよりはアンダーカットに出る車が増えそうで、そのせいでうっかり
周回遅れになる車も出てきそうだなと思います。
下位チームが1ストップのギャンブル、上位勢は理論上速い2ストップ、
あ、変なとこでコーション出た(´・ω・`)みたいなレースも出てくるでしょう。
そうなると、ロングよりもショート ランの得意な人が有利になるので、
じっくり型のドライバーにとっては残念なお知らせです。
と書いていると、ああ、NASCARなのになんか戦略性が日欧のレースと
同じになったな、と感じさせられます。これでいいのかNASCAR。
私は、新チェイス制もそうですが、文句を付けつつ、楽しみ方を把握して
それなりに悪法でも対応して楽しんでしまう人間のようなので、結局はすぐに
馴染んでしまうと思いますが、受け入れられないという人が一定数出てくることは
ある程度想像できます。
例えば、大山のぶ代が引退した時点でドラえもんは終わっていて、
水田わさびドラえもんは全く別のもの、私にとってはもう終わった作品で見ません、
というような人がいるように、ああ、デイトナ500は終わった、これは別のレースだ、
と離れる人もいることでしょう。
顧客にもある程度の新陳代謝は必要ですから、守旧派の意見だけ聞いていては
時代遅れになるわけですが、F1を見ていると、勢い余って変な規則にした上、
その後迷走するケースも数多くあります。
まだ1レースやっただけ、ましてやデイトナ500という特殊なレースを
1つ終えただけですから、評価できる状況ではないわけですが、
果たして、ここまで極端に変える必要があったのか、私の中ではまだ少し
期待より疑念が上回っています。
ちょっとレース展開が人為的すぎる違和感が拭えない状態です。
ここで期待して乗っかれる人が、順張りでトランプ相場に乗って
儲けられる人なんでしょうかねw