いよいよ2017年のMonsterEnergy NASCAR Cup Seriesが開幕します。
他に見るもの無いから1回ぐらい見てやるか、と思っている方もひょっとしたら
いるかもしれないので、開幕戦Daytona500をどう見たらいいか
私なりにいくつかのポイントに分けて解説をしてみたいと思います。
舞台となるデイトナインターナショナル スピードウェイは1周2.5マイル、
最大バンク角31度の広大なトラックです。
旋回半径が大きく、バンクも高いのでトンでもない速度でターンを曲がれてしまいます。
このデイトナと、1周2.66マイル、最大バンク角33度とデイトナよりも
さらにちょっとだけデカいタラデガスーパースピードウェイの2つのトラックでは、
車が速くなりすぎて危ないため、エンジンのリストリクタープレート
(吸気制限装置)の吸気口の径が通常よりも小さく絞り込まれ、
エンジン出力が下げられます。
通常なら750馬力程度の出力は500馬力程度にまで抑えられます。
1500㎏を超える車重がある車なので、500馬力で動かすとなるとなかなか加速しません^^;
このため、デイトナとタラデガは俗に『リストリクタープレート レース』と呼ばれ、
プレート レースが行われるこの2つのトラックを『スーパースピードウェイ』と呼びます。
なお、シーズンには他にインディアナポリスとポコノが1周2.5マイルの大きな
トラックですが、この2つはターンのバンク角が浅く、旋回半径も小さいために
減速しないと曲がれない形状のためプレートは必要なく、
通常スーパースピードウェイとは呼びません。
プレートを装着し500馬力に抑えられた車両は、概ね1周半ほどかけて
190mphあたりまで加速すると、エンジン出力と走行抵抗が均衡してしまい
それ以上速度が上がらなくなります。
一方、この程度の速度では、巨大なスーパースピードウェイのターンは
全く減速の必要が無いどころかスロットルを戻す必要すらなく、1周の間
ずーーーーーーーーーーーーーーっと踏みっぱなしになります。
カップシリーズには現在トヨタ、シボレー、フォードの3メーカーの車両が参戦し、
前後ライトとグリル周りは各メーカーのデザインに似せるような形状になっていますが、
それ以外の部分は共通で、異なるメーカー独自の形状でさえ、空気抵抗値はNASCAR側の
厳格なテストによって有利不利が出ないように調整されています。
エンジンも、トヨタはTRD、他はいくつかのエンジンビルダーが作って供給しており、
昨年終盤の段階では僅かながらトヨタのパワーが出ているように思えますが、
スーパースピードウェイではそれよりも空力的要素の影響度の方が大きいため、
レース結果に露骨に影響を及ぼすほどではありません。
つまり、ずーーーっと踏みっぱなしで走っている分には全部同じ車だと言ってしまっても
いいぐらい差が無い環境です。
何年も前からNASCARのブログを書いている、メタボ教授さん
(メインはパチスロのブログによる広告収入のようでNASCARは趣味のオマケだそうですが)
はこのようなレースを『疑似直線レース』と表現していて、良い表現だなと思っています。
最初に言ったのが誰かは知りませんが(´・ω・`)
そして、他のレースと違って、疑似直線であるということが、
プレートレースを、同じオーバルのレースであっても、他のレースと全く異なるものに
している最大の要因で、その中身、何が起こっているのか、戦い方、といったところの
理屈をザックリ理解し、外からドライバー、チームの中で起こっていることを
想像することがこのレースを楽しむ鍵になります。
「ただアクセル踏んでるだけで、技術も何もいらない低レベルな遊び」
「クラッシュが見たいだけだろ」
「スリップがあるから追い抜きが簡単すぎてレースじゃない」
なんてのは全部、見ていないのに勝手に作り上げた思い込みです。