2016 NASCAR Sprint Cup Series
Driver's Champion:Jimmie Johnson(Hendrick Motorsports)

 スプリントの冠スポンサーとしては最後のシーズンとなった2016年のNSCS。
そのチャンピオンにはジミー ジョンソンが輝き、史上最多タイとなる
7度目のチャンピオンとなりました。
 序盤にさらっと2勝した後長いトンネルに入り、7という数字にたどり着くのは
容易ではないと思われていた中で、チェイスに入って一気に調子を上げて
現行チェイス制度3年目で初めてのチャンピオンシップ進出。
その最終戦も車検に引っかかって最後尾スタートとなり、正直
勝負権が一番なさそうに見えた中からアジャストを決めて、アクシデントを
味方につけ、最後の最後には一番車が速いという、これもまた『神ってる』
レースだったんじゃないかと思うようなチャンピオンの決め方でした。

 ジョンソンがシーズンの真ん中あたりでお休みモードに入り、
チェイスで調子を上げてくること自体はそれほど珍しくはなく、
チェイス進出が決まったら色々とテストをしながらシーズンを消化しているで
あろうことはある程度推測できます。が、今年に関しては本当に
速く走れていない時期が長く、テストしているにしてもあたりセットが無さ過ぎて
迷宮入りしているわけで、かなり苦しい状況だったのは確かでしょう。
 ここで、単純なポイント合算だった場合のドライバーの順位、
というものがあります。
チェイスを加味した順位と比較してみると、

チェイスあり


チェイス無し


Jimmie Johnson

5040
Kevin Harvick
1159
Joey Rogano
5037
Joey Rogano
1133
Kyle Busch
5035
Kyle Busch
1105
Carl Edwards
5007

Brad Keselowski

1089
Matt Kenseth
2330
Denny Hamlin
1084
Denny Hamlin
2320
Kurt Busch
1055
Kurt Busch
2296

Jimmie Johnson

1007
Kevin Harvick
2289
Carl Edwards
1005
Kyle Larson
2288
Matt Kenseth
997
Chase Elliott
2285

Martin Truex Jr.

991

Martin Truex Jr.

2271
Chase Elliott
966

Brad Keselowski

2267
Kyle Larson
931

Jamie McMurray

2231

Jamie McMurray

907
Austin Dillon
2223
Austin Dillon
902
Tony Stewart
2211
Kasey Kahne
898

Chris Buescher

2169
Ryan Newman
895
Kasey Kahne
898

A J Allmendinger

830
Ryan Newman
895
Ryan Blaney
812

A J Allmendinger

830

Ricky Stenhouse Jr.

772
Ryan Blaney
812
Trevor Bayne
762

Ricky Stenhouse Jr.

772
Greg Biffle
691
Trevor Bayne
762

Danica Patrick

689
Greg Biffle
691
Paul Menard
678

Danica Patrick

689
Tony Stewart
642
Paul Menard
678
Aric Almirola
638


チャンピオンのジョンソンは単純合算だと7位で、なんとそんなに
速い印象がない、どちらかというとチェイス コンテンダーの中では
下位のイメージがあったカート ブッシュよりも下です。というかカートは
実はこつこつポイントを集めていました。
イメージだけで言えばマーティン トゥルーエックス ジュニアの方が遥かに
稼いでいる気がしていますが実際は全くそんなこと無いようです。
なお、クリス ブッシャーはポイントだと28位です。

 その単純合算ならチャンピオンなのはケビン ハービック。
ジョンソンといくつかの数字で比較してみると、



wins
Top5's
Top10's
Poles
DNF
AVG
Start

AVG

Finish
Johnson
5
11
16
1
4
12.1
14.0
Harvick
4
17
27
2
3
11.7
9.9


特にアベレージ フィニッシュで差がついています。
ジョンソンの14.0という数字は2014年に次ぐ自己ワースト2位の数字で、
トップ5フィニッシュ11回も、デビューした2002年に次いで、2014年と並ぶ
ワースト2位。しかしチェイスに限るとこの数字は
 アベレージ スタート 12.2、アベレージ フィニッシュ 10.6。
クラッシュに巻き込まれたフェニックスを除くと7.5という数字になります。
ジョンソンの不調と、その後の最後の追い込みを表す数字ではないでしょうか。

 ジョンソンを困らせたのは今年の低ダウンフォース空力パッケージ+柔らかめの
タイヤに対する理解、そしてトヨタ使用者の強さだったことでしょう。
トヨタは昨年カイル ブッシュが初めてドライバー選手権を制しましたが、
今年は初めてマニュファクチャラー選手権を制しました。
今年のメーカー別の勝利数は

トヨタ  16
シボレー 12
フォード 8

 エンジン面での優位性が昨年から引き続いているように見えましたが、
シーズン終盤にかけては3メーカー互角のように見えました。
 低ダウンフォースは走りにくさを生むと睨んでの導入でしたが、いざやってみると
各ドライバーあっさりと対応し、むしろロング ランの展開になると
タイヤのライフを気にしてみんな慎重になるので案外淡々と周回数が
進んでしまう、ということが起こりました。ダーティー エアーの問題が
解決されたわけでもなく、抜きづらさ、先頭走者の優位性にさほど変化は
見られなかった気がします。唯一、タイヤのソフト化でリスタート後だけは
昨年より遥かにアグレッシブになりました。
来季はさらにダウンフォースが削られたパッケージになりますが、
果たして最初に対応してくるのはどこになるでしょうか。

 そして今年は若手ドライバーが少し芽を出し始めたのも良かった点です。
カイル ラーソンがようやく初優勝、オースティン ディロンもチェイス入りし
良いレースが増えてきました。
そしてなんといってもチェイス エリオットが新人らしからぬ走りで
楽しませてくれました。勝てそうなレースで勝てなかったのは、
案外数年長引いたりするので、早めに1つ勝ってもらいたいところですが、
偶然勝ってシンデレラ ボーイになったブッシャーも含め、
今後が楽しみな人が増えたのはカテゴリーにとって良いことです。

 一方で、デイル アーンハート ジュニアが脳震盪の症状で
シーズンの後半を完全に欠場することになったのは非常に残念で怖いニュースでした。
一時期、このまま引退するんじゃないか、と思ったほどでしたが、
来季の開幕に戻ってくることで間違いなさそうです。
改めてこの競技のリスクを思い知らされました。


 ところで、来季からスチュワート-ハース レーシングがフォードに
メーカーを変更し、なんで変わるの?という疑問を抱きましたが、
ダッジに復活の噂があるということは、

ダッジ復活→当然強豪チームと組みたい→元々組んでいたペンスキーが有力→
フォードからすると最強のチームが抜けたらマズイ→先手を打ってもう1チーム
なんとしても引き入れたい

と考えると合点がいく気がします。
これは完全に私の想像で海外サイトに書いていた話では一切ありませんが、
なんとなーく、そういう気がして、そうであれば、復活の確率は高いんじゃないか、
と思いました。