NASCARプレミア シリーズの来季の体制も徐々に中規模チームから
固まり始めました。


・来季JTGドーティー レーシングで走るクリス ブッシャーのカー ナンバーが
 37になると発表されました。これでJTGDは
 
 No.37 クリス ブッシャー
 No.47 A J アルメンディンガー
 
 と決定しました。

・ラウシュ フェンウェイ レーシングを離れたグレッグ ビッフルは、
 twitterの質問に対し、いくつかのオファーがあるとコメント。
 勝てる体制を得るために動いているようですが、まだ未確定のシートで
 そんなにいい椅子がある気がしないんですが・・・

・フロント ロウ モータースポーツは来季の体制について、
 昨年に続いてランドン カッシルと契約、そしてもう1台に
 一昨年まで所属し、2016年はBKレーシングだったデービッド レーガンを
 起用することを発表しました。
 カッシルは昨年から使用するナンバーが変更され、
 
 No.34 ランドン カッシル
 No.38 デービッド レーガン
 
 となります。

・こちらも2016年はBKレーシングだったマット ディベネデトーは
 Go Fas レーシングに移籍することが発表されました。
 36戦のフル出場予定です。
 
 No.32 マット ディベネデトー

 なお、GFRはチャーターの入れ替えも行います。
 GFRが保有しているNo.32のチャーターはウッド ブラザーズ レーシングのNo.21
 (ライアン ブレイニー)に貸与。
 そしてリチャード ペティー モータースポーツが保有しているNo.44のチャーターを
 借りることになりました。
 
・GFRにチャーターを貸与したRPM、No.44のブライアン スコットが
 引退してしまいましたが、2017年はNo.43 エリック アルミローラの
 1台体制となることが発表されました。
 チーム側の発表によると、2018年には2台体制に戻る予定で、その繋ぎとして
 来季はチャーターを貸し出すことにしたそうです。

 

 ところで、GFRなぜチャーターを持っているのにそんな面倒くさいことを
いちいちやるかというと、チャーター制度によるものです。
 この制度、NASCARが36台に対して与え、予選落ちが無く年間通じての
決勝出場が確約されるシード権のような制度ですが、付与する基準は過去3年間の
成績に基づいて決められ、3年間の成績が下位だった3台はチャーターを失い、
非保有者の上位3台と入れ替えられる、入れ替え制になっています。
 GFR自身が保有するNo.32のチャーターは、チームが弱小なのであまり成績が
良くなくて2016年はオーナー ポイントで38位とほぼビリです。
 一方でNo.44は33位でそれよりは少しマシ。つまり、保有するチャーターよりも
借りるチャーターの方がいくらか条件が良いので、どうせならそっちを
使いたいというわけです。
No.21は2016年に久々のフル参戦=過去3年間フル出場していない=チャーター無し、
の状態なので、条件が劣悪でも関係ありません。
チャーターがあること自体が大事です。お互いの利害関係が一致しました。

 RPMのリリースからすると、GFRは1年でチャーターを返還しますが、
その際にWBRからチャーターを返してもらうと、あら不思議、
貸し出す前よりもずいぶんと良い条件になってチャーターが返ってきます。
これで元々持っていたNo.32のチャーターは、自力では成しえなかったチャーターの
継続保有ができる可能性が出てきます。


※ここから話は大きく脱線

 まあこのあたり非常にアメリカらしいなと思います。
ご存知の方も多いでしょうが、そして知らない方は結構仰天するでしょうが、
アメリカのメジャー スポーツではドラフト会議の指名権は結構売り買いされます。
 向こうのドラフトは完全ウエーバーで、成績下位のチームから指名していきますが、
実際は単純にそうなりません。
NFLのドラフト会議は、数年前に『ドラフト・デイ』という映画も制作されています。
 日本のチームや選手に例えてみましょう。

 例えば、ドラフトの超目玉、今年だと田中 正義がいたとして、完全ウエーバーだと、
今季の両リーグ通じて成績最下位のオリックス バファローズに全体1位指名権があります。

 順当なら、オリックスは田中を指名します。
しかし例えば彼が、弱いチームは嫌だな、年俸少なそうだな、となんだか
契約してくれない雰囲気で、オリックスが「ああ、これは指名しても来てくれないな」
と察した場合に、『1位指名権を放出』することがあります。
 田中を欲しそうなチームに対してトレードを持ち掛け、選手や下位指名権と
引き換えに全体1位指名権を放出。
 例えば、阪神が『保有する1巡目指名権(全体7位)と松田 竜馬を放出』と
交換条件を出して成立すれば、阪神はそれで田中を指名、
オリックスは中継ぎの若い投手と、ちょっと後の1位指名権がもらえます。
 逆に、どうしても全体1位の目玉が欲しい上位チームが出血覚悟で下位チームに
トレードを持ち掛ける場合もあります。
下位チームは、ドラフトで未知のスターを選ぶか、既に確実な力が証明されている
選手、あるいは、複数の下位指名権、といったものを天秤にかけて交渉に臨みます。

 そしてもう1つ、上記映画でもたぶん出てきたと思うんですが、
『ドラフト アップ』とか呼ばれる手法があります。
 これは、会議中にその場で取引される指名権のやり取りです。

 また阪神を例に出しますが、やはり目玉選手を取りたい阪神がオリックスに
交渉を仕掛けたものの、阪神は野手ならそこそこの選手を出せるけど、オリックスは
投手以外興味が無くて不成立に終わったとします。
 あー、獲れんかったな、とがっかり阪神の目の前で、オリックスが以外にも
田中ではない別の選手を指名。すると、今度は全体2位指名権を持つ
中日が当然取りに行くことになります。
 しかし!阪神がトレードで出したい野手は、中日相手なら成立する構成
だったとしたら。
その場で阪神の担当者が中日の場に赴いてその場で交渉。見事成立すれば、
阪神は会議中にいきなり2位指名権をトレードで獲得(選手は放出)
これがドラフト アップです。日本のドラフトでは絶対に起きないことです。
そしてそれ故に、たぶん上記映画はそういうことを知らないと意味が良く
分からないと思いますw

 極めつけは、大物選手のトレードに、数年後のドラフト指名権を放出する、
という類のもので、この先数年間多少いい選手が取れなくてもこの選手が今欲しい!
てな時に使われます。そのチームのファンの人はそこから数年間
『ドラ1』を見ることがありませんw
 しかしごくまれに厄介なのが、チームが何かしらの不正を働いたとして
機構から処分を受けて、ドラフト1位指名権はく奪の処置を受けた場合。
既にその指名権が譲渡されていると、ダメージが譲渡先に行ってしまうという
意味不明なことが起こります。
私がそうしたケースを目にしたのは数年前なので今は規則が変わって
いるかもしれませんが、アメリカのスポーツ界における何かしらの権利の
交換/売買というのは非常に奥が深いです。
 そのうちNASCARもドライバーがシーズン中にトレードされ始めたり
しないだろうな・・・