NASCAR Sprint Cup Series
AAA Texas 500
Texas Motor Speedway 1.5miles×334Laps=501miles(雨により293周で終了)
winner:Carl Edwards(Joe Gibbs Racing/Sport Clips Toyota Camry)

 ジョンソンのイチ抜けで迎えたチェイス ラウンド オブ 8の第2戦テキサス。
83号車のマット ディベネデトーは前日のXfSのレースで脳震盪を起こし欠場、
ジェフリー アーンハートがまたも83号車に乗ることに。
 レースは昼開催のはずが雨で5時間以上延期されてすっかり夜に。
それでも完璧には乾き切らず、パレード周回を重ねながらエアー タイタンもフル稼働。
それでもなお乾かないまま20周以上回り続け、とうとうグリーン/イエローとなります。
グリーン/イエローって日欧の感覚では相反してて意味不明ですが、
要するにSCスタートのことですね。
 PPはオースティン ディロンでしたが、7周目に”リスタート”が切られると、
2位のジョーイ ロガーノが前に出ます。
 ロガーノはコントロール ラインまでにディロンを抜いていましたが、
ここにルール上のちょっとしたマジック。
規則では、レース開始時の”オフィシャル スタート”では、リーダーが
その順位を維持したままラインを通過することとされており、その前に抜くと
違反となります。
 一方で”リスタート”は、リスタート ゾーン内のいずれかの地点でリーダーが
加速をし、後続車はそれに続くことになっていますが、あからさまに前の車に
先んじて加速していない限り、ラインの手前で抜いても違反ではありません。
 そして今回行われたのは、実質的なレースのスタートではありますが、
運用上は既にレースが開始された後の、コーションからの”リスタート”なので
適用規則はリスタート時のものになります。

 28周を終えてコンペティション コーション。
ポイントでのチャンピオンシップ進出が厳しい2年前の王者・ケビン ハービックですが、
無線が不調で裏ストレート側に回るとよく聞こえないとのこと。
それに対して、チーム側から、ピットに入った時に直してくれとかいう
またもやDIYな話が飛び出します。
で、結果どうなったかというと
車内の構造なら任せろ、というインテリア担当が窓から手を入れて
手探りだけで直す神業を披露しました、すごいぜNASCAR( ゚Д゚)

 さて、リスタート後もロガーノは絶好調、2位以下を引き離して
テレビに映らないほどの展開になります。

 序盤戦ハンドリングに苦労するカイル ブッシュには最大の危機が。109周目、
スピンしたブライアン スコットが脇をかすめました、これで3回目のコーションです。
 カイルはこの後も、飛んできた何かの破片が車体の右前部に当たって
穴が開き、アルミのテープで応急処置する羽目に遭いましたが、
最終的に24位スタートから5位フィニッシュと及第点のレースでした。

 レースの流れが変わったのは折り返しとなる170周を超えたあたりから。
ロガーノの後ろにマーティン トゥルーエックス ジュニア、その後方に
カール エドワーズが付け、3台が接近します。
 すると186周を終えたところで7位のマット ケンゼスがピットに入り、
これに反応してトゥルーエックスとエドワーズも同時にピット。
ロガーノはさらに1周遅れとなり、トゥルーエックスとエドワーズの2人が
ロガーノをアンダーカットします。
今日のレース、40周走るとタイムが2秒落ちるので、アンダーカットが
驚くほど効きます。
30秒のコースでスティントの頭と最後で2秒ですから、90秒のサーキットで
燃料を使い切るころに6秒落ちている、と考えると、いかにタイヤがガリガリ
減っているかなんとなくお分かりいただけるかと思います。

 ここからはこの2台がほぼ1秒前後の間隔での走行を続け、ロガーノは
クリーン エアーを失ったせいか、2台からやや遅れてしまいます。
 そしてこの後もコーションが出ないままレースが進み、223周目、またも
2台が同時にピット。エドワーズは相手を見てから動きを合わせたような
ピットの入り方でした。オーバルのピットは最初から入るつもりでないと
なかなか入りづらく、仮にそうならすごい集中力です。
1周ずれると2秒置いて行かれるわけですから死活問題、でも相手より
先に動いてコーションで大損するリスクも取りたくはない、という中での
安定志向の作戦です。もちろんトップ2も維持します。

 が、このピット後、トゥルーエックスは「何か壊れた」と訴え始め、
エドワーズも「何か匂う」とこれまた怪しげな無線。
トップ2がそろって何かおかしいらしいという状態ですが、そのリポートに反して
2台が快調に走っています。結局何が悪かったのか謎です。

 255周目、ディロンがデービッド レーガンと接触してスピンしコーション。
ディロンが自分からインに下りて当たっているので、スポッターが悪いか
ちゃんと話を聞いていないかです。
 そしてこのコーションでのピットで、エドワーズの安定志向作戦が奏功します。
クルーが11.8秒の会心の作業でエドワーズをリーダーで送り出しました。
見事なプレーにNBCがフロント タイヤ キャリアーにインタビュー。
SUPER GTでもこういうのやってほしいw

 折しも天候が不安になりだし、もういつ降り出すか分からんぞ、
という予想になってきた中だけに極めて貴重な順位。
261周目にリスタートしますが、262周目の終わりにまたもやディロンが
接触されてクラッシュ。今度はルースになって速度が落ちたところを
ハービックに後ろから押されました。
「わざとじゃないよ(´・ω・`)」とハービック。でもディロン側は
かなりお怒りだった模様です。でもこれは不可抗力ですね。
わざとだとしても、わざと自然に当てれるような動きをした時点で負けてます。

 このコーションで中団グループがピットに入りますが、
リスタート後もエドワーズがリーダーを維持。そして290周目に
とうとう雨でコーションです。
レーダー画像では雨雲は範囲が狭く、それほど長く強くは降らないのかとも
思いましたが、一気に雨脚は強くなり、レース コントロールはとうとう
隊列をピットへと誘導。
しかし、赤旗宣告がされないな、と思った次の瞬間、レース終了、エドワーズの
勝利が決まりました。

 前戦でクラッシュしてコンテンダーで一人だけポイントが離され、
勝つ以外に生き残る方法が無かったエドワーズ。
この週はずっと「勝つぞ」とチームに言い続けてきたそうですが、
レース後の雰囲気なんかを見ると、勝たないといけないと鼻息を荒くして
力を入れまくるのではなく、どうせ何をしたってこのレースで勝つのは
大変なことなんだから、とにかくやれることだけやって、それで勝てたら
最高だよな、ぐらいの、適度な脱力があったんじゃないかと感じました。
まだコンテンダーなんだけど、落ちたドライバーのような心境とでも言いましょうか。
それが、トゥルーエックスの後ろを走っても、あわてず騒がず、最後の
機会を待って最後まで落ち着いていました。
 レース後のインタビューで最初に「プレッシャーだったけど楽しめた」と
言ったあたりにそれが表れており、そういう性格のドライバーだからこそ
人気があるんだなと感じました。
ちょっとイイヤツすぎるのがドライバーとしては弱点でしょうか。
 とにかくこれでチャンピオンシップ進出です。ホームステッドには
大きな忘れ物がありますから、ぜひ取ってきてもらいたいです。



 そしてニコニコのエドワーズとは対照的に、他のドライバーは
困ったことになってきました。
ポイント3位のロガーノからカイル、ケンゼス、デニー ハムリンの4人が
たったの2点差です。
この中で最終戦に進めるのは2人だけ、しかも、離れた7位のハービックが
お化けのように速いフェニックスが次戦の舞台です。
ハービックが勝てば、ポイントで出れるのはこの団子の4人の中で
たった一人だけで、しかもその中に3人のJGRドライバーがいますから、
最後はチームメイト同士で膝の蹴りあいにでもなりそうです。
 かつてのNFLの名コーチ、オーナーのジョー ギブスは4人に対するミーティングで、
ワシから話すことは無い、好きにやりなはれ、といった感じのことを
言って激励したそうですが、果たして決着やいかに。

 次戦はフェニックス、そして最終戦ホームステッドは
G+も生放送なので、今週末は放送が2回あります。
ただ、G+の生放送は雨で流れることが多いです。放送延長がないという
無慈悲な仕様なのでなんとか天気に頑張ってもらいましょう。