NSCSのチェイス初戦、シカゴランドではレース大詰めのコーション時、
チェイス エリオットのクルーがタイヤ交換でミス。
順位を1つ落としたことが勝敗を分ける1つの要因となりました。

 失敗したのは外した右リアタイヤの受け渡しでした。
前回も触れましたが、エリオットのクルーの動きというのはちょっと特殊です。

 クルーの数が限られているNASCAR、その動きの大まかな内容は
こちらに一度まとめたことがありますが↓
日々進化するピット作業、最近もいろいろと細かな作業の進化が
見られる時があります。
 リッチモンドだったと思いますが、13秒かかってしまった
ちょっと遅い作業に対してNBCの放送席でも、
13秒って一昔前なら速かったのに、昔は15秒、ちょっと前は13秒、今は
11秒じゃないといけないね、みたいな話をしていました。

 で、右後輪は普段から各陣営によってスタイルに違いがある部分です。

(NASCAR公式Youtubeチャンネルにアップされたレース動画を
スクリーンショットとして利用しております)

 外した後輪は一旦ジャッキ マンが受け取り、それをキャリアーに
渡すんですが、一番一般的なのは
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©NASCAR Media Ventures,LLC.
 
 このように外したタイヤをキャリアーの後ろに置き、キャリアーがそれを
持って左側へ走っていく方法。
 転がらないように交換中のチェンジャーの後ろ辺りにドスン、と置くのが優等生ですが、
みんなだんだん手抜きになってきて、このハムリンのクルーなんかは
完全に転がしています。
 タイヤをはめ込んだキャリアーが後ろを向いたころにちょうどその前に
来るようにして、キャリアーは動きながら掴んで走ります。
ハムリン陣営は露骨に転がすので、キャリアーが手間取るとすぐに
タイヤがボックス外まで転がっていきます^^;

 一方最近多いのは、
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©NASCAR Media Ventures,LLC.

 外した後輪をフロントのキャリアーに渡し、フロントのキャリアーが2本運ぶスタイル。
この場合リアのキャリアーはタイヤをはめ込んだ後、アジャストを行う時間を
余分に確保できるので、特にセットが不発で左右ともアジャストする人なら
効果てきめんです。
 ただ、前の人は一人で2本運ぶため、片輪は抱えて、もう片方は転がして、
とかやってて手元が狂ったり、足元まで気にする余裕がないので
ホースに足を取られて転んだり。
 また、ちょっと横幅が太くなるので、ちょうど移動するタイミングで
1つ前のボックスに車が入ってくると、右手に持ったタイヤが入ってきた車と
ぶつかる、といった危険性もあります。
 ただハマれば速い、という印象です。


 で、エリオットはというと
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©NASCAR Media Ventures,LLC.

 なんと交換中のチェンジャーの頭の上で受け渡し!!!
なんでわざわざ重たいものを上に持ち上げて渡すということに
労力を割いているのか私にはわかりません。しかも軽く放り投げます。
大工仕事とかにありそう( ゚Д゚)

 これでもうまくいっていれば良かったものの、最後の最後に
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©NASCAR Media Ventures,LLC.
画面左下、落として慌てるエリオットのタイヤ キャリアー

 肝心な最後のピットで落としてしまいました。だから言ったのに~。
ていうか換えてるときに頭の上からタイヤ降ってきたらあぶねえよ!w

 作業の独自性といえば、スーパーフォーミュラのナカジマレーシングが
車を飛び越えるのは昔から有名ですが、
 こうした作業面での工夫というのは、人数が多く、もはや道具面以外で
進化するのが難しいF1では見られない要素です。
SUPER GTも人数と同時に行える作業には制約がありますが、1人で
あれもこれもせわしなく動くことはないので、NASCARの作業の面白さは
世界でも有数だと思います。
 各クルーの動きがすべて連動していて、誰かが1つ躓くと全部に波及するので、
理屈の上での効率も大事ですが、各人が完全に体に作業を馴染ませて
何回やっても、同じタイミングで同じ場所に人がいて同じように動けることが
何より大事、だからこそ、頭の上で渡す、なんていう非常識なことまで
起こってしまうんでしょう(なぜそうしようと思ったのか謎ですがw)

 次戦、エリオットのクルーがどうやってタイヤを換えるのかも
注目ポイントです。