2回に分けてSUPER GTのSC制度の問題点、並びにFCYの必要性について
書いてきましたが、ことレースを振り出しに戻す制度という点においては
NASCARは参考になります。
ここでNASCARのコーション制度についても見ておこうと思います。
細かい部分は私も理解が完全ではないため、Wikipediaの情報を引用しております。
アメリカの方の編集内容が間違っていれば私も間違えています^^;
NASCARでは、トラック上でアクシデントの発生や破片の落下が確認されると
(あるいはそんなものどこにも無くても)コーションが宣言されます。
NASCARはロード コースですら『ローカル イエロー』というものがなく、
コーション=常にフル コースになります。
コーションになるとすぐさまピットはクローズとなり、
ペース カー(NASCARではセーフティー カーとは呼ばない)がコースに入り、
リーダーを捕まえます。
で、ここからが独特で、その後、隊列は
イン側 =リード ラップ車、
アウト側=ラップ ダウン車
の2列に分けられます。
ピット オープンが宣言されると、最初の周にピットに入ることができるのは
リード ラップ車両だけです。
優先してピットに入れるのでイン側に並べられているわけです。
次の周には、ラップ ダウンを含む全ての車両のピットが許可されます。
NASCARには、コーション発生時にラップ ダウンの最上位にいた車が
コーション後に1周取り返せる『フリー パス』という制度があり、フリー パス車も
この2周目のタイミングでピットに入ることになります。
但し、フリー パス車はこのタイミングの1度を除いてコーション中の再給油は
認めない、という制限があります。
また、コーションは厳密には『フル イエロー』と『クイック イエロー』があり、
クイックが宣言されている場合、1回目から全車ピット可能です。
そしてリスタート1周前になると、ウエーブ アラウンドというものが行われます。
リード ラップ車がピットに入り、ラップ ダウン車が入らずにステイ アウトすると、
リーダーとペース カーの間にラップ ダウン車が挟まることがあります。
この挟まった車は、リスタート1周前になると、ペース カーを追い抜いて
隊列の最後尾に追いつく=1周取り返すことができます。
これを『ウエーブ アラウンドを受ける(took wave around)』と言います。
但し彼らは、リスタート後までピットに入ることはできません。
隊列に追いつきに行って、追いつかずにピットに直行、ということはできず、
少なくともリスタートの翌周である必要があります。
(2.5マイルのトラックだとこの作戦はたまに効果あり)
F1でもSCが入った際に、リスタート前
『lapped cars may now overtaking』とか言う文字が出ますが、
基本は似た考えで、ただしこちらは各リード ラップ車に挟まれたラップ ダウン車全てが
対象である点がNASCARと異なります。
ただし、リスタート時に彼らが隊列に追いついて隊列が整うまで待ちはしないので、
トラックによっては追いつききる前に始まってしまうことがあります。
リスタート時に後方の車がバラけていたり、慌てて追いついてくる人がいるのは
このためです。
また、あくまでこれは『ペース カーとリーダーの間』に挟まった車なので、
リーダーがステイ アウトした場面では発生しません。
例えば2位以下が全員入って1位と2位に挟まれても、NASCARでは必ず
リード ラップ車だけを固めてリスタートすることになっているため、
単に後方に下げられるリグループが行われるだけです。
ということは、自分がウエーブ アラウンドの適用を受けれないとわかった時点で
さっさとピットに入ったほうが得です。
リスタート時、リーダーはインかアウトかレーンを選ぶことができます。
ただ、2列目以降の車は、奇数がイン、偶数がアウト、と決まっています。
ですから、リーダーがアウトを選択すると、2列目以降は事実上順位が
ひっくり返ることになります。
リスタート時の並びは必ず
リード ラップ→ラップ ダウン→フリー パス→ウエーブ アラウンド、
となります。ペナルティーを受けた車は、Wikipediaだとウエーブ アラウンドの
後ろと書いてあるんですが、コーション中にパス スルーの処分となった場合は
ウエーブ アラウンドよりは前になりますし、リード ラップの最後尾、みたいな
処分もあった気がするし、何よりウエーブ アラウンドの後ろって
場合によっては追いついてないので、ケースによる気がします。
まとめると
1 リード ラップかそうでないかで2列に分ける
2 まずリード ラップ車だけピットが許可される
3 全員のピットが許可される
4 リーダーとペース カーの間に挟まった車はラップ バックさせてもらえる
5 ペナルティーを受けた車は適宜指定された場所に入る
6 リスタート
となります。
NASCARは『コーションありき』のレースなので、コーションが発生した際に
いかにゲーム性を持たせつつ、リスタート後は邪魔者を排除して
見た目にきちんと順位争いをさせるかが徹底されています。
これは他カテゴリーとは根本的に発想が違って役に立たないように思えます。
しかしながら、例えば入るタイミングを時間差で許可するやり方は、2クラス混走の
SUPER GTでも見習う価値があると思います。
何も隊列整理はスタンド前に完全停止しなくてもできるわけですから、
2列走行させて、GT500のみピット可→GT300のみピット可、とすれば
昨年のSUGOのような大渋滞は起こりにくくなります。
今の煩雑な制度もどっちみち周回数を食うので、
きちんと配置や運用を行えば、今とかかる周回数もあまり変わらず、
SC中のピットを認めつつ混乱を防ぐことができます。
レースの見せ方に関しても見習うべき点が多いと思いますが、
制度面でも同様だと思います。
アメリカの単純な、SUPER GTより遥かにレベルの低いインチキレース、
という先入観で考えず、GTAの皆さんには多様な制度を参考にしていただきたいです。