NASCAR Sprint Cup Series
Quaker State 400 Presented by Advance Auto Parts
Kentucky Speedway 1.5miles×267Laps=400.5miles
winner:Blad Keselowski(Team Penske/Miller Lite Ford Fusion)

 NSCS第18戦ケンタッキー。
今季2度目の低DFパッケージに加え、ケンタッキーはオフに路面を再舗装。
再舗装でターン1~2だけバンクを盛ったためにバンク角だけ左右非対称という
ちょっと曲者レイアウトになります。
見ているとターン中の最低速度が10mphは違いますね。
加えて雨で予選は中止となり、オーナー ポイントでグリッドが決定。
既にタダでは終わらない雰囲気が漂いまくっていましたが、予想通り
ただでは終わらないレースになりました。

 PPはケビン ハービック。オーナー ポイントという考え方は、
車両はオーナーの所有物である、という考えに基づいて各車(ゼッケン)ごとに
与えられるポイント。同じドライバーが乗り続ける車であれば、ドライバーの
獲得ポイントと同じですが、複数の選手で回しているような場合では
それらの合計ということになります。
 フリー走行は行えて予選が流れると、予選順位がフリー走行の順位となり
時折波乱が出ますが、オーナー ポイントなら基本的に上手い人から前に来ますし、
ハービックはまあどこに行っても速い人なので
あんまり波乱要素にはならなさそうです。

 外側選択のハービックは好スタート。前日のXfSから外が圧倒的に有利となっている
模様で、この後も外側リスタートは鍵になります。
多くの場面で彼に続いたのがマーティン トゥルーエックス ジュニアで、
レースの軸になります。

 11周目、リッキー ステンハウス ジュニアのクラッシュで早くもコーション発生。
25周でコンペティション コーションが出るのに早々にアクシデント発生で、
今日は荒れそうな予感しかしません。
なお、コンペティション コーションが予定されているときは、それ以前のピットで
給油は認められていないため、先に入っておいてコンペティションでの
ステイは作戦の内ですが、その後コーションが出ないと真っ先に燃料切れで
ピットへ向かう事になります。

 32周目にジミー ジョンソン、55周目にジョーイ ロガーノと実力者も
立て続けにクラッシュ。

 空力的影響というと、通常は後方乱気流で後ろの人が損するのを想像しますが、
今日のパッケージ、コンディションでは、むしろ後ろの車が前に車に接近すると、
前走者のリアのダウンフォースが失われて姿勢を乱す場面が目立ちます。
追いついたらぶつけなくても寄せていけば相手は勝手にサイドウェイで失速。
 また、低ダウンフォースでブレーキも効きづらいため、特にターン3の
ブレーキが強烈で、バランスの悪い車、冷却の不十分な車では熱がタイヤを破損。
ビードを溶かしてタイヤのバーストを招いています。ロガーノもその一人でした。
こうした場面、この後も多く出てきて陣営を困らせます。

 アクシデントは続き、81周目にはマット ディベネデトーもクラッシュ。
なんと!アネスト岩田という日本の会社がスポンサーでした。
会社のサイトでNASCARのスポンサーになったことを紹介すると相乗効果が
期待できるのでぜひページを作成することをお勧めします。

 88周目には注目の新人2人、チェイス エリオットとライアン ブレイニーが絡んで
両者とも脱落。もう6回目のコーションです^^;
 せっかくリスタートしても93周目に今度は多重事故。
デイトナで宙を撒いかけたブライアン スコット、今度は運転席側に
強烈にぶつかられる災難に。
 103周目にリスタートが切られると、さすがにみんな慎重になったか
ようやく長いランとなり、初めてのアンダー グリーンのピット サイクルに。
ここでハービック、ミラーを見すぎてボックス通過という凡ミス。
トゥルーエックスに実質的リーダーの座を譲ります。
そしてサイクルが終わった直後にリーガン スミスがクラッシュ。
ケゼロウスキーが全然出てきませんが、5位前後のあまり目立たない位置を
走り続けています。

 161周目にクリント ボイヤー、さらに172周目にはA J アルメンディンガーも
クラッシュ。アルメンディンガーは1度もらい事故で壊れた車を直したはずが、
ちゃんと直っていなかったかいきなりスピンしました。
Vガンダムを見た人ならここで絶対このセリフが頭に流れます。
「ちゃんと直してくれてなかったの!?マケドニアの人は!?」

 195周目、トラック最多タイ記録となる11回目のコーション発生。
がんばったら給油無しでギリギリ走りきれるかどうか、というタイミングで、
全員ピットへ。
 ここで、2番目にピットに入ったトゥルーエックスが、急加速して
ハービックを追い越して自身のボックスへ。これで1番にピットを出ますが、
ペナルティーを受けてしまいます。

 追い越しによるペナルティーですが、実はこれ、速度違反には当たりません。
NASCARのピット速度はレーンを幾つかに分割してそのセクションごとに
通過時間から割り出して測定しています。
今回のケンタッキーでは6つのセクションに分かれています。
たぶん他カテゴリーよりずっと間隔が広いです。
 恐らくですが、自分が停車するボックスが含まれるセクションは、
当然ですが停止時間があるため平均速度で考えればとても遅く、
そのため、前後で規定速度を超えていても、セクション全体では規定以下になるため
合法となってしまうようです。
 今回はコーション時なのでこれをやると抜いてしまいますが、
グリーンだったり、間隔が開いている場合にはピット内で合法的に
"速度違反"できてしまうので、対策が必要ではないか、と現地解説が
言っている気がしました。
 まあ何はともあれ、トゥルーエックス、インチキで後退。

 リスタートはハービックが外から行ってリード、続いて2列目外側、
順位で言うと4位にいたケゼロウスキーが2位になると、ハービックが
ターン3でラインを外してとうとうリーダーに。
 どうせコーションで燃費レースはどっかいくだろう、と思ったらこのランは
誰もクラッシュせず延々と続き、いよいよ燃料が深刻な事態に。
 早い人は残り15周以上あるのにもう動きます。
そんな中、燃費レース大得意のケゼロウスキーは我慢我慢。
残り7周でマット ケンゼスが前に出ますがそのままピット直行。
足りないの分かってるから抜いたのね^^;
 どんどん脱落していき、残り5周、ケゼロウスキーに続くのは
カール エドワーズで8秒後方。しかし見るからに遅いケゼロウスキー。
素人が体験乗車してるぐらい道幅も余ってるし速度もありませんw
 無線で「もうダメだ」と訴え、とりあえずリザーブ タンクに切り替え。
そして最終周に入ったところでエドワーズ登場。
エドワーズ、そのままの勢いで抜きたかったところですが、ケゼロウスキーが
軽く寄せて壁に挟まれそうになったので自重。
これが勝負手でした。
 ケゼロウスキー、開き直ったかここから全開走行でエドワーズから逃げます。
ダメだと思ったら行けちゃったケゼロウスキー。
もうバーンナウトする燃料は残っていませんでした。

 この人、本当に燃費レースが上手いです。
アウト イン アウトで、進入時の勢いを利用してターンの中で
無駄なアクセルを使わずに旋回できる走り方ができるスタイルなんだと思います。

 うまく立ちまわったトニー スチュワート、自身600戦目は勝利こそ逃したものの
5位と好結果。ポイント30位以内を堅めるには十分な結果です。

 このパッケージ、前に出たもん勝ちの展開が崩れたかというと、
似たタイムの車同士で争えばやはり後ろにつけないことはさほど
変わっていない一方で、追いつきさえすれば後ろから前を乱しに行くことが
今のパッケージよりできそうな感じでした。
もちろん今回の新しい路面は気象条件もあるでしょうが、これを是とするか否とするか、
NASCAR側の判断が待たれます。