NASCAR Sprint Cup Series
Coca-Cola 600
Charlotte Motor Speedway 1.5miles×400Laps=600miles
winner:Martin Truex Jr(Furniture Row Racing/
                                          Bass Pro Shops/Tracker Boats Toyota Camry)

 シリーズ最長、600マイルの長いレース、なおかつ時間的に言うと
F1のモナコがあって、インディアナポリス500があって、その後に開催される
コカ-コーラ600。
 今回全くコメントすることがないぐらいの圧倒で、
マーティン トゥルーエックス ジュニアが制しました。
 PPスタートのトゥルーエックスはレース開始からレースを大きくリード。
走れども走れども、ライバルは彼を捉えることができないまま周回数がどんどんと
経過していきます。
100マイル、200マイル、300マイル・・・
トゥルーエックスがリードできなかった周は、グリーンでのピットの際に
彼より後にピットに入った人だけ。
ピットで多少の作業ミスがあり、リスタートで4速に入れ損ねて失速するという、
あわや多重事故の引き金のミスもありましたが、コース上でのリードと車の
速さに救われて大事には至らず、気づけばレースは最終盤に。

 残り61周、もうすぐ最後のピットが始まる、というタイミングになって、
デブリーによるコーションが発生。
燃料がギリギリ足りるか足りないか、ぐらいの微妙な時期のコーション、
そして、レースはここまでさほど大きなアクシデントが起きていないことから考えて、
次のリスタートを終えると燃費レースになりそうな気配です。

 そして残り56周でのリスタート。ここでジミー ジョンソンが外からかぶせて
この周のラップ リードを奪い、345周目にして初めてトゥルーエックス以外の
ドライバーがコース上の争いでのリードを奪います。
しかし翌周にはすぐにトゥルーエックスが抜き返すと、ここからまた
差を広げてライバルはお手上げ。

 見た目にペースが分かりませんが、解説によると全般にペースは遅めで
全員が燃費走行している模様。上位陣のクルー チーフはいずれも燃料は十分
足りると自身を見せておりガス欠問題が発生する様子もなし。
トゥルーエックスからすると、あとは想定外の妙なコーションが起きないことを
祈るのみ、逆にライバルはそこに賭けるしかありません。

 しかし残り7周、カイル ブッシュが壁に激しくヒット。
完全にサスペンションが折れる当たり方で、トゥルーエックス陣営は
頭を抱えたでしょうが、なんと何一つ部品は飛び散らず、カイルはイン側に
寄ってコースを荒らすこと無く自力でピットへ、コーションは出ません。
 さらに残り3周、ライアン ブレイニーがタイヤを壊したようでフラフラと走行。
この状態で丸々1周することになり、バーストでコーションが出るかと思われましたが、
これもまた部品を撒き散らすこと無くブレイニーはピットへ。
奇跡的とも言える出来事で、トゥルーエックスはそのままチェッカーを受けました。

 トゥルーエックスはコカ-コーラ600のいくつかの記録を樹立。
1台体制のチームとしては1995年、ジョー ギブス レーシングのボビー ラボンテ以来の
このイベント優勝。JGRは今やトヨタの4台体制ワークスですが、
当時はシボレーの1カーでした。
 また、トゥルーエックスは400周のうち392周をリード。
これは1967年、ジム パスカルが記録した335周を上回るぶっちぎりの新記録。
 平均速度160.655mphは史上最速で、レース時間3時間44分5秒は
600マイルを走り切ったレースとしては最短でした。
日テレG+はこの長距離戦でもいつもと同じ3時間枠で、毎年
下手したらピット~ピットの50周ぐらい丸々編集で削り落とされたりしているんですが、
今年はこれほど速かったためにそういうこともありませんでした。

 解説のラリー マクレイノルズはトゥルーエックスについて
「マーティン トゥルーエックス ジュニアは8回ピットに入り、4回はコーション、
4回はグリーンだったが、唯一確認できたアジャストは、もちろん
内圧のアジャストは確認できないが、唯一確認できたのは、最後のピット ストップで
ノーズにテープを貼ったこと。ジャッキに触れていない」

 日差しのある状態から日没、夜へ向かうレース。
しかも当日の朝に一度雨が降ってトラックがグリーンになり、コンペティション
コーションが設定されるようなレースで、内圧と車内のトラック バーの調節だけで
終始安定して走り続けるとは、恐るべき車の完成度です。
 ジョンソンは序盤車がイマイチで左右のウエッジを同時にやってましたし、
ケビン ハービックもかなり色々変えていました。
多くのドライバーは、タイト気味でありながら出口でスナップ ルースが出る状態で、
どれか1つだけをいじったら綺麗に治るようなハンドリングではなかったと思われ、
トゥルーエックスだけが異次元でした。
 もしこれがジョンソンの圧勝だったら大ブーイングだったでしょうが、
勝てそうで最後にひっくり返され続けていたり、ガールフレンドがガンと戦っていたり、
1台体制の下克上的チームであったりと、彼を応援する要素が見る側にとって
たくさんあると思うので、非常に印象深いレースとして当分の間
ファンの記憶に残るレースだったと思います。

 そしてこれでトヨタとしては、早々にJGR+1の5台のエース車両が
チェイス進出をほぼ確実にしました。
どこまでこの勢いは続くんでしょうか。