今シーズン、NASCAR スプリント カップ シリーズでは
規則を改定し、ていうかほぼ毎年変えてますが、今年は大幅にダウンフォースを
削減する変更に着手。
 2013年に導入されたGeneration-6車両は、従来より軽く
(といっても依然1500kg以上ある鉄の塊)空力性能もそこそこよくなったので
前年までのトラック記録を軒並み塗り替えていくことになりました。
 しかし、ダウンフォースの増加は当然『後ろを走れない』という要素をはらんでおり、
実際『タイヤを替えて集団に埋まるより、替えないで先頭を走ったほうが速い』
というようなケースが続出。
 数字上でも年々追い抜きが減少していることが見て取れたために
対応を迫られたNASCAR。2015年のシーズン中に2種類の異なる空力パッケージを
実戦で試験導入するというなかなか大胆な手を使い、そのうち
ファンにもドライバーにも好評だった低DFパッケージを当然のように取り入れました。

 DFの低下によって安定性が低下するためにアクシデントが多発、
それがいいことかどうか、という問題はありますが、簡単に乗りこなせてしまっては
面白く無いので大歓迎、というのが大まかな評価。
 グッドイヤー側も、DF低下で失った旋回速度を補えるように柔らか目の
タイヤを投入し、これによってリスタート直後はガンガン色んなラインを
選んで走れる一方で、段々と操縦が難しくなり、やはりアクシデントを誘うような
ドライバーの腕がいる仕様になりました。

 当然ファンは今年もそういった展開になってくれるものと期待していたでしょうが、
ここまで1.5マイルの2レースを終えて、コーションは少なめで、むしろ
各陣営が慎重に走っていつもよりもアクシデントが少ない印象を受けます。
 何せタイヤがガクッと落ちてしまうので、いきなり攻めるのは得策ではなく、
乗りづらいのが分かっているのでとにかくミスなくきちんと走ろうとしているのが
見ていて受ける印象です。
結果、エキサイティングなレースではなく、耐久レースを展開しています。
 『よりドライバーの力量が試される』という点ではまさにその通りなんですが、
たぶんNASCARファンは耐久レースを見に来てはいないでしょう。
 
 36戦もあるのでたった数戦で良し悪しを決めるのは時期尚早ですが、
NASCARもファンも、多少「あれ?思ったのと違う???」という思いは
あるのではないかと想像します。
私自身「あれ、誰も事故らねえ^^;」と、案外みんなやろうと思えば持久戦が
できることに驚かされましたw

 今後1マイルのフェニックス、2マイルのフォンタナ、0.5マイルの
マーティンズビルと種類の違うトラックが3つ続きますが、ここでも似たような展開が
繰り広げられると、NASCARはまた対策を迫られることになりそう。しかし
DFを増やすというのは完全に誤った策だと昨年のテストで証明されているので、
やれることはエンジン出力とタイヤぐらい。
 いっそエンジン出力は一昨年までの850馬力以上に戻して、
タイヤはあえて固めにしてみたら暴れまくる気がするんですが、暴れれば
いいってもんでもないでしょうねw

 対策という点ではチーム側もデータを蓄積して、新パッケージに対応した
セットというものを徐々に見つけてくることになるでしょう。
結果今よりもっと積極的に攻めれるようになってくれば、元通りの展開に
なるかもしれない、と考えると、結局のところチームが規則に対応してくれるのを
待つのが手っ取り早いのか、という話に。
でも対応するということは減ったDFを何かでうまく埋め合わせてきたと
いうことでもあり、そうすると減らした意味が・・・
 しかも、対応というのは大きいチームのほうが当然早いわけで、
そうすると勝つ顔ぶれが固定化され、これまたファンの苦情のもとに。
そうしてまた規則をいじるとみんなまずは慎重に・・・の繰り返し。
 実質ワンメイクのレースで規則の小変更によってレース内容に介入する
難しさがこうして字を書いているだけで出てきてしまいます。
 そうならないことを願いたいと思いつつ、NASCARの方向性の迷走は
しばらく続いていくんじゃないか、と思えてきた次第です。