NASCAR スプリント カップ シリーズ第19戦、5-hour ENERGY 301。
1周1.058マイルのニュー ハンプシャー モーター スピードウェイを301周で
争われました。5-hour ENERGYはリポビタンDみたいな栄養ドリンクです。
ニュー ハンプシャーはバンク角が最大で7°。ターンの概ねイン側の1車線は
2°しかなく、つまりレコード ラインはインから車1台開けたところ、という
ちょっと特殊なライン取りがいるトラックです。
当然作戦がモノを言うショート オーバル戦。勝ったのはなんと2週連続で
カイル ブッシュ(Joe Gibbs Racing/Interstate Batteriesトヨタ カムリ)
恐らく本人も予想外の展開となりました。
レースは序盤、カイルとブラッド ケゼロウスキーが速さを見せます。
やがて、ロングでのペースがいいケビン ハービックが上位に姿を現し、
中盤戦からケゼロウスキーとハービックの争いへと変わっていきます。
チェイス進出のため、既に勝利は挙げたのでポイントで30位以内に入りたいカイル。
後ろから来た車が速そうな時には無理せず先に行かせる、イケイケな
カイルにしては比較的珍しいレースをしていて
「ポイントを取ることをかなり意識し始めているのかな?」という印象を
受けました。
レースが動いたのは残り51周。少し前からターン2にオイルが出ており、
かなりドライバーから文句が出たのでコーションとなります。
このオイルがレースを大きく動かしました。
実はこの8周ほど前、カイルはまだ燃料が残っているのに予定より早く
ピットに入っていました。順位が思わしくないので思い切ったギャンブルに
出たのかと思ったのですが、レース後の話によると、オイルで滑ったのを
タイヤが壊れたと勘違いして緊急で入ったとのこと。
通常、オーバルでこういうことになると、周回遅れになって勝負権を失います。
しかしカイルは、ピットを出た後に猛プッシュ。コーションが出る少し前に、
ハービックとケゼロウスキーがバトルをしている隙間に割り込んで
2台を抜き去ってラップ バックしていたのです。
他の車は全てこのコーションで給油のためにピットに入るため、カイルは
緊急ピットで損をしたはずが、結果的に「宿題を先に片付けた」形になってしまい、
トップでリスタートすることになりました。
ピットに入った組でも明暗が分かれ、先頭で入ったハービックは万全の
4本交換。しかし右後ろの作業でもたついて時間を失い8位からのリスタート。
一方ケゼロウスキーは右2本交換で2位からのリスタートです。
今日は外側リスタートが圧倒的優位なのでカイルは余裕で順位を維持。
ケゼロウスキーはリスタート直後のハンドリングが終始今ひとつなため出遅れます。
そして脅威になるはずだったハービックは、前のデニー ハムリンが
リスタートに大失敗したため完全に行く手を阻まれました。
ハムリンはカイルのチームメイト。故意か過失かは分かりませんが、
カイルの陣営は「ハムリンGJ!」と思ったに違いありません。
ケゼロウスキーはリスタート後に差が開いた上に、右2本の交換では
速度的な利点も薄く追い上げに苦労。ハービックもジョーイ ロガーノを
抜きあぐねて時間を浪費してしまいました。
最後の5周でカイルのタイヤが落ちてきたのか、ケゼロウスキーがようやく
差を詰めてきますが時すでに遅し、最終周にアレックス ボウマンのクラッシュで
コーションが出て順位が確定しました。
ソノマでもそうでしたが、カイルはまたもコーションとピットの時期が
うまく噛み合い勝利を拾うことが出来ました。
普通に考えればオイルとパンクを間違えるなんて大失態ですが、もし
冷静に対処してコースにとどまっていれば、彼はどうやっても先頭での
リスタートはできませんでした。
コーション直前にラップ バックしたことが結果的に勝利を決める追い抜きと
なりました。レース ディレクターの決断が早ければ彼はまだ周回遅れで、
リード ラップの最後尾でのリスタートだったでしょう。
規定ではホワイト フラッグが振られた後にコーションが出た場合は
その時点でレース確定、2周以上なら延長線に入りグリーン-ホワイト-チェッカーです。
ボウマンのクラッシュが自爆か壊れたのかは分かりませんが、あと半周早く
ぶつかっていればG-W-Cになっていたので、彼はやられていたかもしれません。
これでカイルは30位のデービッド ギリランドと58点差。
仮にギリランドがここまでと同じペースでポイントを取ると仮定した場合、
カイルはチェイスまでの残り7戦を平均19位で終えれば30位に入れるそうです。
カイルはデビュー3年目の2006年以降、最も平均順位が悪かったのは
昨年の17.6なので射程圏に捉え出した、と言えます。