NASCAR スプリント カップ シリーズ最終戦、FORD ECOBOOST 400。
チャンピオンを決めるホームステッド マイアミ スピードウェイでの267周の
レースは最後まで分からない展開。
 最後に抜け出したのはケビン ハービック。チェイスに生き残った4人の中で
最上位ならチャンピオン、という中で、このレースを制して見せ、
今季5勝目のトップチェッカーと共に自身の初のタイトルを手にしました。
 
 ホームステッドは1.5マイルオーバルとしては珍しいペーパークリップ型で
比較的ターンの旋回半径が小さいのが特徴。バンクの一番外側の角度が高いため、
理論上大外が速く、抜くにはバンクの浅いインに飛び込む必要があります。
 さらにレースは夕刻に行われ、最後はライトに照らされる中行われるため、
路面温度の変化に対応する必要があります。
 
 レースは序盤、チャンピオン候補のハービックと、デニー ハムリン、
ジョーイ ロガーノに、前戦で悔しい脱落を喫したノンコンテンダーの
ジェフ ゴードンが上位を争います。
 もう1人のコンテンダー、ライアン ニューマンは21位スタートで
やや不利かと思われましたが、着実に順位を上げて行き、気づけば
この4人は常にトップ7にはいる状態。誰一人ハズレのいない激しい
チャンピオン争いとなります。
 その中で、我関せずのゴードンは序盤から一枚上手の仕上がりの車で
レースをリードしますが、逆にそのジャストフィットが仇になったか、
レースが進むにつれて段々と戦闘力が落ちて人並の車になり、
徐々にチャンピオン争い=レースリーダー争いの構図となります。
 
 先が読めないレースが決定的に動いたのが終盤、コーション中の249周目の
ピット作戦。ここでハムリンを含む3台がステイアウトし、ハムリンは
2位からリスタート。ニューマンは右2本交換で4位、ハービックは4本交換で
12位からのリスタートとなります。
ロガーノはこのピットでジャッキが落ちてしまう痛恨の作業ミス。
残り30周を切る中で29位に落ちてしまい、ここで脱落となります。
 
 253周目のリスタートでハムリンはトップに立ちますが、タイヤの新しい
ハービックは猛烈な追い上げ。すると255周目、アクシデントでこの日
12回目のコーションとなり、ハービックは7位まで追い上げておいて一休みできる
有利な展開。さらにこのコーションで、ゴードンがシボレー勢を援護したかったのか
「お邪魔物はどきますよっ」とばかりになぜか1台ピットに入ってしまい、
リスタート順位は1位ハムリン、2位ニューマン、6位にハービック。
 
 259周目にリスタートが切られると、もうハービックを止めることは誰にもできず、
あっという間にリーダーに。
この後263周目に13回目のコーションとなり、ハービック、ニューマン、ハムリンの
順で残り3周でリスタート。ハムリンは完全にホイールスピンして勝負あり。
ニューマンは必死にインに飛び込んで揺さぶるもののハービックに
かなうはずも無く、ハービックがこのまま逃げ切り、勝って王者を決めました。
シボレーはメーカータイトルも獲得、一方トヨタはメーカーで3位、
ドライバーでも結局ハムリンの3位が最高と、今年もカップシリーズの
厚い壁に阻まれる形となりました。
 
 ピットリポートによると、プラクティスの段階から、路面温度が下がって
車がルースになることを想定して、「ルース→タイト」の調整の練習を
繰り返していたというハービック。
 昨年までは、予選ではさっぱりで、レース中も目立たないのに、
最後の最後に車をきちんと合わせこんでレースをかっさらうスタイルから
「クローザー」の愛称が付いていたハービック。
 昨年オフ、リチャード チルドレス レーシングからスチュワート ハース レーシングに
移籍し、そのクローザー能力はそのままに1発の速さも獲得。
強烈な速さで長いシーズンを制しました。
 2位のニューマンは逆に昨年スチュワート ハースを放出され、ちょうど
入れ替わるようにチルドレスへ加入。
予選での猛烈な速さから「ロケット ニューマン」の愛称が付く男はこれまで
決勝ではあまり安定して結果が出ていませんでしたある種因縁めいたものがあります。
 
 今季5勝で2137周のラップリードのハービックに対し、
0勝でわずか41周のラップリードというニューマン。
チャンピオン候補最有力と目されたハービックに対し、
ニューマンはそもそもここに残るとすら思われていなかったはずで、
成績も評価も全く対称的。
 だからこそ、面白いレースになりました。
 
 最終戦強制同点決勝という前代未聞の規則に私は今も納得していませんが、
4人がそれぞれ素晴らしいレースを展開し優勝を争ったことで、
そんなことを忘れさせてくれる素晴らしいシーズンの締めくくりとなりました。
 休む間もなく、2月の終わりには2015年のシーズンが始まります。