小さいころ、好きになれない理由なんて
ただひとつ
おばあちゃんから好かれていなかったから。
おばあちゃんはとっても美人だ
おばあちゃんに惚れて惚れて結婚したおじいちゃんは
60歳になる前に病気で亡くなった。
おじいちゃんを大切にしているようにも見えなかったから
ワガママで自分のことしか考えていないおばあちゃんが
好きになれなかった。
だけど息子であるパパは、
『男は本当に惚れた女性と一緒になれたなら、
その女性に殺されたっていいと思ってるんだ。
だからおじいちゃんはおばあちゃんの側にいられただけで
本当に幸せだったんだよ。』
って言っていた。
もうずいぶん昔のことだけど、
生きていた頃のおじいちゃんの記憶は、
穏やかな表情だけ。
きっと本当に幸せだったんだろう。
おばあちゃんと私の間には、
本当に深い確執があった。
ひどいこともされたし、
ひどいことも言ってしまった。
そんなおばあちゃんとの関係が、
急激に変わったのは5年ぐらい前。
私も社会人になって、
色んな人と出会って、
色んな考え方を知って、
自分で勝手に作っていた殻が
ボロボロ剥がれていったころ。
おばあちゃんという人間を
受け入れられるようになった。
どんなことがあっても、
凛としてプライドを保つことが
どれだけ大変なことなのか
少しずつ分かってきた。
そして、おばあちゃんの生き方に
美学のようなものが見えるようになった。
あれほど冷酷な人間だと思っていたのに。
それから、私から歩み寄れるようになった。
私のこと、好きになってもらわなくて全然結構
というスタンスで
おばあちゃんと少しずつコミュニケーションを取って行った。
最高に距離の距離が縮まったのは、
私の仕事を通してだった。
それからは、
おばあちゃんは私のことを
家族や親戚に自慢するようになった。
そんな日が来るなんて、少々信じられない思いだったけど。。
最後に会ったのは昨年の夏、帰省した時。
おばあちゃんは、私にこう言った。
『ボーイフレンドはいるの?
結婚は、焦らなくていいのよ。
そして絶対に、
妥協しないこと。』
田舎では、30間近の女が独身だと
本当にみんなヤイヤイ言ってくる。
私の我慢が足りない、ワガママ、覚悟がない、、などなど。。
妥協するなと言われたのははじめてだった。
私は、
『おばあちゃんは、
なんでおじいちゃんを選んだの?』
と聞いた。
おばあちゃんは、
かなりの美人だったしお嬢様だったから
所謂普通なおじいちゃんと結婚したことが
正直不思議だった。
おばあちゃんは、
『おじいちゃんはね、
とにかく優しかった。
1番優しかったの。
どのボーイフレンドよりも。
妥協しないでおじいちゃんを選んでとっても幸せだったわよ。』
そう言って微笑んだ。
私はおばあちゃんのことを少し誤解していたのかもしれないって
この時はじめて感じた。
それから、おばあちゃんは
たまに私に美容の相談をしてきたり、
ちょこちょこ連絡を取っていた。
今月に入ってから
体調を崩して入院していると聞いた。
すぐ退院するよって
聞いていたのに
長引いてるって。
電話してみたら、もう全然元気じゃないの。
声なんてか細くて
一生懸命喋ってるのわかっちゃうよ
息切れてるよ
私、我慢できなくて涙出ちゃったよ
最低だ
でも、おばあちゃん
笑ってるの
ありがとうって静かに笑って言うの
なんて強いんだよ
おばあちゃん静かに言った
『人恋しいって、
こういう
気持ちなのかしら。』
寂しいって言ってよ
周りにちゃんと寂しいっていってよ
『ボーイフレンドはできた?』
『今やっと素敵な人に出会えたよ
おばあちゃんに言われた通り、
妥協しなくて良かった。』
そう言うと
おばあちゃんは
『ラッキー!
やったね~!
おばあちゃんの言う通り~!』
か細い声で、喜んでくれた。
また会いに行くからね。
