生命の実相第9巻

霊界篇第一章

 

差別心より観たる霊界の消息

 

(途中省略してあります)

(七)

 

1912年12月27日

興味ある予想以上におもしろい交霊会だった。われわれはテーブルの前にまず座った。それはしずかに常とはちがう動き方をした。たしかにテーブルを動かす霊力者は代わったに相違ない。テーブル通信は催眠を喚起する新しい方法を示した ー 特殊の印契(いんけい)を結んで自分の親指を相手の前額(ぜんがく)に接し、右手だけで生命磁気を(マグネタイズする)と同時に、間断なく低い声で霊媒に話しかけ、霊媒がもう答えなくなると、彼女を自然に覚醒するまで放置せよというのである。

 

 

自分は施法をはじめた。今日はレイヌは十五分間で催眠状態にはいった。自分は彼女をぐったり椅子によりかからせた。そして彼女から少し離れたところへ絵を描きにいっていた。二十五分経過した。突然肘掛椅子(ひじかけいす)に物音が聞こえた ー 囁(ささや)くような、物の動くような。自分は彼女がどうしているか観ようとして近づいた。彼女は興奮して、身振りをして、何か喋(しゃべ)って…と思うと、熱心に聞くようなふりをして、やがてまた手真似をはげしくしてとうとうわかりましたと打ちうなずくような様子を示した。その様子はあたかも彼女の身の廻りに誰かが遣(や)って来ていて、それと談話をまじえていたようなのである。

 

この後テーブル通信をはじめるがあまりに長いのでレイヌに鉛筆と紙を渡す

 

彼女の様子は筆記しているように思われた。最初は傾聴しているようなようすで、やがてそれを書き下ろすのである。一度などは顔を振り向けて、横柄な調子で「そんなに早くいってはいけない」と彼女はいった。終わりに彼女は署名して最後の紙を自分に手渡しすると再び椅子へもどって来ると、どっかりと腰を下ろした。深いしずかな眠りを数瞬間つづけたと思うと彼女は自然に覚醒した。

 

 

自分はレイヌが催眠中に書いたものを手にとって見た。最初は霊媒へ対する注意書きと今度から自分が用いねばならぬ彼女をマグネタイズする方法とかが書かれていた。その次にはレイヌの霊媒的能力を養成するために自分の現在とりつつある労力の価値をあげて、それに感謝の言葉が添えてあり、久しからずして価値ある結果が得られるに相違ないという断案が下してあった。

 

 

そして、その項の最後には「フェルナンは善霊(グッドスピリット)ではない。余らはレイヌを余らの管理の下に置く。この最初の機会にさえ彼女は余らと言葉を交えることのできたことを多とする。今日は彼女は覚醒後何も記憶していない。しかし次の時には記憶するであろう」の語で終わっていた。

 

 

 

終わりのページには彼女をマグネタイズする際に、催眠中彼女見たところを記憶していて、覚醒後すぐ自分にそれを話して聞かすように暗示を与えよということが勧めてあった。署名には「フランク・フェルマン」と書かれていた。

 

 

(著者注)

マグネタイズするという言葉は、催眠状態が起こるのは術者より被術者へ生命磁気が伝わるによるという催眠学説からきた言葉で「生命磁気を伝える」という意味であるが、日本の霊術家たちはおおむね「霊を送る」という術語を使う。けだし「霊的流動体(フルーイド)」を送るという意味である。適当な語を求めてみたがよい思いつきがないので、結局「マグネタイズする」という原語を使った。マグネタイズする方法には種々あるが、ふつう用いられているのは、術者が精神を統一して臍下丹田に力を籠めながら、印契を結んだ指先または、たんに開いた手掌(てのひら)を被術者へ指し向け、念力を集中して被術者へ霊気を注ぎ込むごとく手を翳(かざ)し動かす(方法)である。俗に鎮魂するともいう。こ

の際霊視家が見れば術者の指先より青白い霊光の放射しているのが見える。

 

 

 

(八)

1912年12月30日

(霊媒と自分だけ)

 

…途中省略……

 

フランク・フェルマンによって教えられた新方法によって霊媒をマグネタイズし始めた。…

彼女はこの催眠中決して異常な体験も感覚も経験しなかったことは確かだった。

 

 

やや失望の面持ちで、テーブルにすわり失敗の原因をたずねる。

…省略……

 

今度の筆者の署名には「ヴェッテリニ」と書いてあったが、自分の失敗の原因と、そしていかにして自分の霊力を発達せしむべきかということについての注意が書きつらねてあった。全文、明晰な文体でまったく合理的に書かれていた。自分はこの注意条項に従って根気よくやるよりしかたはあるまい。

 

 

 

(九)

 

1913年1月1日

彼女が恍惚状態にはいった時、自分は権威ある語調でーお前の霊魂は肉体を離れることができる、そうしてその間に見聞したことを覚えていて、覚醒後それを自分に話すんだーと暗示して彼女を離れた。

 

 

自分は動くような物の気配を耳にしたので、彼女のところへ戻っていった。と驚いたー彼女は恐怖と苦悩の表情をしているのである。彼女は最初、自信の身辺をぐるりと見廻したかと思うと、やがて下をみおろした。

 

 

 

そして物に恐れたような驚愕の叫び声をあげたー「あら、あら、パリです、パリに違いありません、おお!おお!」これきりで黙ってしまう。彼女は身体を少しばかり左右にゆらゆら動揺させている。緩徐(かんじょ)な身振り。やがてとうとう椅子にもたれかかって動かない。

 

 

 

突如として彼女は身体を真っ直ぐに起き上がって叫んだー「コルニリエさん、お聴きなさい!」こういって彼女は自分をとらえようとするふうに両手を突き出しながら、「わたしはみんなあなたにいってしまわなければなりません。すぐあなたに話すように命令されましたのー覚めないうちにーわたしの見ましたことを。覚めてから忘れっちまってはなんにもならないんですもの」 こういって彼女は口達者に、それでもいくぶん不安気な調子で説明したー

 

 

 

彼女の霊魂が身体から少しずつ離れていったこと、今度の催眠状態は深かったこと、彼女の霊魂は身体から離れてらくらくと遥かまでのぼって行けたことなどを。彼女のいうところによれば一体何事が起こったのか、彼女自身にもわからなかったので、自分の霊体が家よりも遥か上にいることに気がついたとき、彼女は自身の最後が来たのだ!と人間的な恐怖にとらわれた。しかし彼女の周囲には霊界の人々(スピリット)がとりまいていて、彼女に力を添え、彼女を支え、彼女をいっそう高いー実に高いーパリの上空へ伴って行った。そしてパリ全体の上空にぐるぐる彼女を引き廻しながら、下をみおろして観察するように、しかし一語も発してはならないと命令した。

 

 

 

「不審の点を尋ねてみるような余裕なんかありませんわ。わたしはまだ力が足りないんです。自分の身体から抜け出して上空へ飛翔するのが精一杯だったのです。わたしはこうして霊魂だけで飛翔することを教わりました。霊界の人々が力を添えて引き上げてくれなかったら、わたしはすぐ肉体に引き返さなければならなかったのですわ。」

 

こういって彼女はやがて、彼女をとり巻いていた霊界の人々のことをややしばらくことこまかに述べるのであったー

 

 

「彼らには身体がありません…はじめわたしはチラチラする光がいったり来たりするのを見ました。と、この光はー輝きを帯びた雲のようなものですがーしだいに形をなしてきました。これらの霊界の人々がしだいに数をまして、しだいにわたしに近づいて、わたしを四方八方から上へ上へと浮き上がらせてくれました。と、わたしの目の下にパリの街がー家々、大通り、群衆、それから何もかもが見え出しました!おおーだけど目がまうようでしたわ。誰もこの感じは知ることはできない。

 

 

…何よりもまず。誰にも彼にも複体があるんでございますよ。ちょこちょこ動きまわっている人々、右往左往する人々の複体はたいてい、身体の外へちょっとばかりハミ出して肉体を包んだようになっていますが、時としては  ー  そんなにたびたびではありませんが  ー  なかば肉体の外に出て、身体の上にあらわれています。この複体が思想なのです、意識なのです…いえ意識じゃありません。意識の座をなしているものなのです。」

 

 

この問題に関して彼女がいったところをすべてここに書こうとは思わない。そのうえ、かくのごとき事項は、心霊問題を少しく研究したものにとってはなんら珍しきことではないからである。しかしこれがこの小さいレイヌー覚醒状態においてなんの素養もないたんなる少女の口から話されたというところにも ー

 

 

彼女は催眠状態のままでいう  ー    二、三回もこの種の霊魂出遊の経験をつんだ後には、彼女の霊魂はぜんぜん単独で、なんでも見たり観察したりできるようになるだろう。そしてまた生きている人々の複体と意志を交換することさえできるようになるであろうーと。

 

 

彼女はまた付け加えたー  いよいよ進んで彼女の霊魂が完全に肉体から遊離するようになり、その幽体が誰の助力もなしに自分で出遊しうるような状態になったら、彼女の肉体は外見生きているような徴候はまったくなくなるだろう。「あなたはわたしが青ざめて、まったく冷たくなって、手なんぞ氷のようになり、息もしていないかのようになるのをごらんになるでしょう。」で、自分が彼女の健康を気遣うようにいうと、彼女はこう言ってさえぎったー「いえいえ、心配なすってはいけません。なんの危険もないんです。危険に遭遇するようだったらわたしの複体はすぐ、このように帰って来るんですもの。」

 

 

 

彼女は自身をこれから守護しょうとしているスピリットがヴェッテリニと称する霊界の人だと信じているのである。そしてヴェッテリニはやがて、誰だとハッキリわかる姿を現して自分の前に出て来るそうである。レイヌに自分が質問することを禁止したのも彼であったし、催眠状態から覚める前に何事も自分に話しておくように命令したのも彼であった。自分はヴェッテリニによろしくいってくれるように彼女にいって、それから彼女を自然的に覚醒するまで、放置しておいてもよいかとたずねた。「いけません。だってわたしは疲れきっているんですもの。覚ましてください」と彼女はいった。で、自分はそうした。覚醒後彼女は何も覚えていなかったが、なんだか非常に遠い所へ散歩でもして来たような気持ち

がします、と彼女はいった。

 

 

彼女が人間の幽体について述べたことのうちで、なお二、三の事項を記録しておかねばならないであろう。彼女は人間の幽体(アスツラルボデイ)(複体)ダブルボディにも、おのおの人格が異なるに従って、密度、色合い、態度などに区別相異があることを見たといっている。

 

 

 

レイヌにとって赤く見えた幽体は重濁した物質に近い劣等のものであるが、これに反して青みがっかたり、白味がかったりしていっそう稀薄に見えたのは高級の幽体であるそうである。幽体が肉体から遊離する難易はその進化の程度によるのだそうである。幽体の態度にも静粛なのもあれば、軽率らしいのもあるという。また時としてはその肉体の行動に反抗してそれと戦いを挑むように見えるのもあるという。

 

 

 

(十)

 

1913年1月3日

 

…… 途中省略……

今日の実験会は予期したとおり、前回の繰り返しにすぎなかった。しかし少々変わった色合いをもっている。「コルニリエさん!ああそうだ!やっとわたし帰って来ました。わたしながい間いっていましたんです。これからその間に起こった出来事をお話し申しますわ。」

 

 

 

今日の霊界遊行は彼女の霊魂が自発的に行なったのである。そして窓から出て行ったというのであった。今日出て来たスピリットのなかでは、ただヴェッテリニだけが、彼女の前から知っている霊界人(スピリット)であったが、多くのスピリットが彼女を護送し、訓練してくれたというのである。

 

 

「レイヌ、今度は自分きり独りでやってごらんなさい、誰の助けも借りないでー」彼は峻厳な権威ある語調で命じたのであった。彼女は驚いたー 驚いて昏倒しそうであった。彼女はたった一人で霊界を遊行するほど強力の霊にはなりきっていないと感じたのであった。

 

あなたは一人きりになってしまって強さが足りないで、恐怖心が起こった場合にはどうなるのかーと「わたし、そんな時にはすぐ自分の肉体に帰って来なくちゃなりませんわ」

 

「だって、あなた恐ろしゅうございますわ…わたしは決して臆病ものじやありませんけれども、だけど、頭部ばかりの胴体のない霊人(スピリット)たちに伴れられて行くさまを御想像なすってください。そして時には頭すらない人もあるんですもの。スピリットたちは本当は輝いている一片の煙のようなものにすぎませんわ。しかし彼らはわたしがスピリットというものに恐れないで、喜んで彼らについて行くために頭部を装ってみせるのですわ。ヴェッテリニは灰色の髭と長い髪をつけたいかつい顔つきの老人です。この方は、善霊(グッドスピリット)です。決してわたしを悪い方に導くようなことはないのです。」こういって彼女はその幽界旅行の話しをはじめた。

 

 

 

「動物には、幽体はあるんですか?」

「ええーだけどそれは人間と同じものじやありませんわ。馬や犬のぐるりにはある種の光が漂っています…そうですけれども、それは人間のとは比較にはなりませんわ。それは別物ですーまったく別物です」

 

ヴェッテリニは来ているか、この実験をつづけてゆくように自分を強いる動機はなんであるか、自分が目指す目的はなんであるかを知ることができるかときいた。

 

「たしかにあの人は知っています!でなければあの人は来なかったでしょう!

 

 

霊界では最初つまらないスピリットをー低級スピリットをよこして、あなたがわたしの実験で何をもとめていらしゃるか、あなたの好奇心が正しい好奇心であるかを視させたのです。しかしあなたの目的がなんであるかが明瞭になったとき、ヴェッテリニがやって来たのです。彼は高級のスピリットです。今後はこの人が交霊会を司会してくれます。そしてあなたを導いてくれます。彼はあなたが(霊魂の死後存続)を信じていることを知っています。だからあなたに対しては何も証拠の要らないことを知っています。しかし他の人たちのために証拠が必要なのです…そして彼はその証拠を得るためにあなたを導くのだといっています。」

 

 

最後に彼女の霊魂は彼女の肉体が覚醒したとき、繰り返しその肉体に命ずべき事柄を自分に託した。

 

 

……途中省略…

 

(十二)

 

1913年1月十日

もっとも興味ある実験会の一つであったか、その興味の大部分は彼女の声の調子、誠実の充ちあふれたその抑揚、その態度、ー詳しくいえばレイヌが言葉を出す時に伴ったその始終のこまかな一挙一動にあるのだから、それを記録することは困難である、彼女の霊能の進歩は規則正しく法外に秩序だったものであった。指導霊(ガイド)が心に一定の目的をいだいて、その目的に到達するのによほど手馴れたものであるにちがいない。

 

 

レイヌは自分のところへ着くと、昨日彼女がここへ来なかったのは、テーブルの通信が、まだ彼女の健康状態がよくないので、彼女に来てはならないといったからだといった。また彼女はテーブルの通信で今日ここへ来る前、ホンのぽっちりしか食べてはならないと命じられたのだった。このことは彼女にとっては喜ばしいことではなかった。しかしそれにもかかわらず、彼女はこの命令に従った。彼女の朝飯としてとったものは薄いスープ一杯と鶏卵一個にすぎなかった。

 

 

自分は彼女をふだんの方法で催眠させて、そして待っていた…もちろんわたしの手掌からは間断なく霊的流動体を送りながらである。彼女はやや興奮したような、また苦しそうなようすを見せた。と突然彼女は苦痛の叫び声を発した。自分はこの言葉を小耳にはさんだ…「いえ、いえ…だめです。それはあまり高すぎます!ああ寒い!ああ…」この状態はおよそ三十分間ばかり続いた。その後彼女はついに実験室へ帰って来て、何かスピリットと談話をまじえているような様子であった。誰かがそこにいて確かに彼女に、彼女を催眠さす新しい方法を教えているような様子であった。ー彼女の態度や手ぶりがもっともハッキリとこのことをあらしていた。

 

 

この無言の光景はいちじるしく興味深いものであった。やがて彼女はそれをすっかり会得したのであろう、彼女の両手は自分の手を探していた。そしてすぐさま今教えられた事項を自分に対して話しはじめた。彼女の語るところは彼女の身ぶりを裏書きしたところのものであったーそれはいっそう深い催眠状態に導くために用いる一新方法、九種類の動作を連続して行う一種の方法であった。この方式によると彼女の霊的流動体をいっそう完全に遊離さすことができ、それがほとんど全部肉体から遊離してしまったならば、肉体はその瞬間死骸のようになってしまうだろうというのである。彼女はそれでもまた朝飯を食い過ぎたのだった。彼女が覚醒状態になった時、自分は、彼女が次の月曜に来る時にはただ一個の

鶏卵だけしか食べてはならないと彼女に命じねばならないとのことであった。彼女はこのことを大変結構な命令だとは思っていない。しかしまたこの命令を彼女は守るだろう。

 

 

(著者注)

 

なぜレイヌの指導霊がレイヌに減食を命ずるのであるかについて、自分の考えを付記しておきたいと思う。断食、または少量の淡白な食事は古来からあるいは霊力または神通力を発揮するため、あるいは大覚(さとり)を得るための修業として常に行なわれたところである。釈迦は成道(じょうどう)するまでに、尼連禅河畔の一菩提樹下に端座しつつ久しき間の断食をなしたのである。イエスも「四十日四十夜、断食して後に飢えたまう」と「マタイ伝」に書いてある。今でも禅宗の僧侶の食事は一種の断食に近きものである。その他神道諸派の人々が霊媒的能力を発揮するために行う「身禊」は一種の減食水行である。ともかく、断食または淡白なる少食は霊媒的能力を発揮し、スピリットと交通するためになん

らかの肉体的条件を備えるものであることは事実である。その理由についてあるスピリットは断食中に人間の組織体中にある重濁せる成分が分解放散してその幽体は軽くなって、幽体の遊離に便利となるのだといっている。本人の幽体の遊離を利用してスピリットがその肉体に入り込みあるいは天言通(霊言現象)を発せしめ、あるいは自動書記現象を起こさしめる時、その肉体は霊媒となったのであって、神道ではこれを神懸かりとなったと称する。

 

 

 

霊媒現象は霊言または自動書記現象のごとき客観的現象となって現れる他天眼通、天耳通および一種不可説の直覚直感のごとき主観的現象となっても現れる。つまりスピリットが人の脳髄に作用して内面的にある黙示をあたえるのである。霊的修業に淡白なる少食が適するのはこのためではなかろうか?スピリットが目的とするある人間をとらえてこれに霊媒現象を起こさしめようとする場合に、本人が自発的に断食をすすんでしないならば、スピリットはある方法で本人を病気にし、あるいは貧苦に陥れて断食を強いた後に霊媒現象を起こさしめる。

 

 

天理教祖のごときは前者であって、彼女はのどけを患って一週間ばかりも食事がとれなかった後に神懸かりとなったのであるし、大本教祖は貧苦のために長期間、慢性的に断食をとった後神懸かりとなったのである。しかし神懸かりと悟道(さとり)とは異がう、神懸かりは霊界人の憑依であるし、悟道は自己の本性を大覚することである。悟道には断食は不要である

 

 

 

やがて、彼女は自身の霊界遊行のことについて話しはじめた。それは全く新しいものであった。彼女は今までよりもいっそう高い霊圏に遊行したのであった。そして二つの新しい能力を獲得したのであった。

 

 

第一はある場所へ行きたいと念ずることのみで直ちにその場所へ自己の霊体が遊行しうること。

第二は思想の波動によって直接にヴェッテリニの思想を理解しえて言葉の仲介の要らないこと。この方法を授けたのは彼ーヴェッテリニである。レイヌはヴェッテリニの命令に従ってモンマルトルのサクレ・クールにいながらパルク・モンソーに行きたいな、と念じたのである。(彼女がこの場所を選んだのは、そこがつねに大好きだからであった)と、どうしてそんなことが起こったのか彼女にはわからなかった。その行きたいいう願いが心の中で描かれたその瞬間、もう彼女は自分の霊体がパルク・モンソーにいることがわかったのだった。(これは神足通である)彼女が無言の思想を理解しようと試みたのも、またヴェッテリニの教えに従った結果であった。(これは他心通である)ー

 

「ねえ、それは小さいことじゃないでしょう。…わたしはその能力をとうとう得ましたが、ずいぶん辛い目をしましたのよ。それで今ではあの方のお考えをすっかり知ることができますのよ」と彼女はいうのだ。

 

 

著者注1

 

この種の心霊現象は仏典にある「神足通」の解釈や、彼岸極楽の世界においてただ念ずるだけで欲するものが集まって来るというような境地の可能性についてわれらに興味深き暗示を与える。

 

著者注2

 

マッケンジイ氏はその著の中で、霊界において異人種の霊魂たちが相会した場合には、別段異国語を知らなくとも、語らんとする観念の波動によって、互いに思想を通じうるといっている。他の多くの霊界通信もこれに一致している。

 

 

彼女のいうところによると、彼女の霊体はヴェッテリニの姿を見ずに二度霊界へ遊行したのであった。が、ヴェッテリニは始終彼女の霊体の側についていたが、姿を見せないで彼女をみまもっていたのであった。彼は彼女の勇気を試してみたいのだった。

 

 

一度目の時は彼女は臆病であった。が、二度目の時はずっと遠くまで出かけていった。二人のスピリットに出会ったが、彼らは彼女を保護して付いていってやろうかと申し出た。レイヌは彼らが善霊だか悪霊だかについて自信がなかった。で彼女は彼らに自分はうちへ帰ろうと思っているのだと答えた。

 

 

こう答えたことをヴェッテリニは非常にほめた。そしてこれらの低級霊はただ彼女に道を迷わせようとするのみであって、それにうっかり騙されでもしようものなら、覚醒状態になってからひどい頭痛にくるしめられるだろうといったのだそうである。

 

 

 

彼女は自分の見たところの霊界のいろいろの状態を非常に精確なハッキリした姿で物語ったー多くの奇怪な状態を細かい点まで物語った。そこに速記者がいてくれたならばーいなそれよりも言葉の抑揚や、情緒の表現をも写しうる蓄音機があったならばいっそうよかったであろう。ヴェッテリニは彼女に今晩眠っているうちにもう一度霊界に伴れて行くようにいった。そして土曜日と日曜日の晩にもだ。月曜日が来ると、ここでわれわれはまた実験会を催すことになるであろうーかの新しい精神統一誘導法によって。

 

 

 

つづく

 

 

谷口雅春著 「生命の實相」第九巻より

 

 

 

 

* 「想念」の小切手に如何に書くべきか

 

つづき

 

これは心の法則を明(あきら)かにするために譬(たと)えをもって説いたのであります。吾々が宇宙銀行から払出して貰(もら)うためには、「想念」と云う小切手に、「欲しい」と書いてもそれを払い出して貰うことは出来ないのであります。「富が欲しい」と思っても富は出て来ない。「富がある」と想念に書くことが必要なのであります。

 

貧富の問題でも、健不健の問題でも、「想念」の小切手に「貧」を重点的に書いて念じますと、富を求めながら貧があらわれて来るのであります。また「想念」の小切手に、「病い」を重点的に書いて念じますと、健康を求めながら、病気が去らないのであります。

 

 

つづく