繁栄のコツ

心の法則によって富もうとする場合、兎もすれば人々は、労少くして多くの富を得ようとするような間違にとらわれることがあるのであるが、心の法則は決してそんな魔術ではないのである。少く価を支払ったものは少く受取るより仕方がないのが心の法則なのである。

いつか短波放送で東京の成田屋(なりたや)と云う店が非常に繁昌しているのを放送記者が訪問して主人の成田さんにその繁栄のコツと云うようなものを聴いていたが、成田さんは引揚者であり、最初は微々たる店を開いていたが、繁栄するには良き品を安価に売らねばならないと云うので、毎日築地の卸売市場へ商品を買いに行くのであったが、

 

 

都内電車の始発に乗って築地へ行っていたのでは他の商人が安い商品を仕入れてしまった後で、自分の店に安い良品が手に入らないと云うので、始発電車の二時間前に自転車を自分の脚で漕(こ)いで築地まで通って安価な良商品を手に入れて顧客にサービスしたと云うことであった。

ひと以上に深切な努力とサービスとがあってのみ本当の繁栄が得られるのである。繁栄する店には繁栄する原因があり、つぶれる店にはつぶれる原因があるのである。皆経営する人の心である。