阿佐ヶ谷スパイダースPresents はたらくおとこ
作・演出:長塚圭史 出演: 池田成志 中村まこと 松村武 池田鉄洋 富岡晃一郎 北浦 愛 中山祐一朗 伊達暁 長塚圭史
あのおとこたちが帰ってくる! 阿佐ヶ谷スパイダース20周年の本年、2004年に上演された代表作が12年振りに再び蘇る!
観劇記録 【東京】 11/ 4(金)本多劇場H列4番 *アフタートーク(はたらくおとこ出演者) 11/ 7(月)本多劇場B列13番 *アフタートーク(古田新太 八嶋智人 ×阿佐スパメンバー) 11/17(木)本多劇場B列6番 *アフタートーク(阿佐スパメンバー×飛入りゲスト山内圭哉、志甫真弓子) 11/20(日)本多劇場 当日券(立ち見) 東京千秋楽
12年ぶりの再演ということですが自分はこの再演が初見です。 初演を観た方の感想を少し聞いてはいたのですが、ほぼ真っ白な状態で観ることができました。自分は普段からどのお芝居でも情報を入れないで観る派ですが、このはたらくおとこに至っては顕著にそこをお勧めしたい!東京公演は終わりましたが、まだ地方ツアーがありますしね。未見の方は決して空欄より下は読まないでいただきたい と言いながらも、これだけは伝えたい!この再演、絶対に観たほうがいいですよ!生で! 五感を研ぎ澄まして劇場にて体感ください。 映像化は無いと思いますのでこれがラストチャンス! 同じメンバーでの再々演はおそらくないでしょうから。 以上、どうぞよろしくお願いします。
さて、感想雑記です。 私的初日は11/7だったのですが、アフタートークが付くということで急遽4日を追加、席はH列下手サイドでございました。でも本多劇場は前方A~D列に段差が無く割と死角があるので最初に観るには少し上からの方が見やすいかな~などと(確保済のチケットは全て前方だったので)。初日から数えて2公演目だったので誰もがこの再演を観るのは初めてだったと思います。 暗転となり、可愛らしいメロディーが流れ舞台のはじまりです。
池鉄がズベズベすっごけて成志さんがそれにイライラしていて、まことさんがなにやらノホホンとしています。なんかいいなーこの三人。それぞれのキャラがそれぞれしっくりくる。 潰れかけたリンゴ農園でやることもなくただ時間だけを無駄に費やすおとこたち。狭い事務所には何故かバイト君(豊蜜:池鉄)が住み着いていて、社長(茅ヶ崎:中村)はニヤニヤと作れもしないリンゴのことを考えている。そんな社長にイラつく夏目(成志)とそんな社長をとことん尊敬している前田くん(中山)。彼らが追い求めるリンゴは何故だかとってもしっぶい味のリンゴ。渋くて美味いリンゴってなんだろう。梅干のことを考えると口の中に唾液がたまるように、リンゴのことを考えていれば空から雪のようにリンゴが降ってくる。下手側では雪がチラチラ降りています 茅ヶ崎さんがリンゴの事を語りだすと前田くんはすごく嬉しそうに必死にノートに書き留めている。この表情がすごくいいの。梅干のあたりでも、粉っぽいのあたりでも。
リンゴの名前が「拳骨」ってなかなかですよね。そしてあの過保護すぎるパッキンw東北の話だしちょっと萩の月を連想しちゃった。あれもなかなか過保護じゃないですか?まぁあっちはめちゃくちゃ儲かっているけど、こっち(拳骨)は全く儲かることもなく。過保護発案者の夏目にリンゴパッキンぶつける前田くん。リンゴがころころ客席に落ちちゃって。4日は2列目くらいの客席のあたりまでコロコロ。ひょいと夏目さんが客席に降りてきて「あ、どうもすみません」とお客さんに謝ったり。なんかこっちはウーマンリブのズッキー思い出した。そう言えば萩の月もウーマンリブに出てくるねww 初見はこのころころリンゴがハプニングなのかしらと思ったけど、毎回コロコロさせていた。これは確信犯でしたね。
なんの前進もない口論を繰り広げていく中、ついには腎臓を売ろうと言い出す始末(笑)
しょーもないんです、しょーもなくダメな彼らだけどホント憎めないのよね。前田くんの腎臓を狙う社長改め園長!最高ですね。前田くんも不用意に腎臓売る覚悟とか言っちゃうからw ビロビロカップ麺は種類が変わることがあったみたい。何気に茅ヶ崎さんちょこっと食べてるからねー。味も変えとかないとw
ここから涼ちゃん駆け込んできて、戦争の始まりです。 窓が割れて石やらBB弾やらが投げ込まれ…客席にも結構飛んでいったのでは?原因は涼が抱えているバックに秘密がありそう。突然の襲撃で園長の額には血が…。逆上した園長はカマを振り上げて表に出て行った。「カマ続きまーす!」と前田君。「続かなくていいっ!」と夏目さん。この件が毎回すごく好きな自分です。カマ持ってるけど全然殺伐としない雰囲気がね。戦争~!などと文字に起すとすごく物騒に思えるけど、おとなたちがワーワー騒いでハチャメチャですごく面白いのさ。夏目さんの「説明しろー!妹~!」で暗転。
ここでスクリーン降りてきてのタイトルバックだったかな。 この音楽もいいんだよなー。何かが迫ってくるカンジがね。 雪道を走るトラック。あいつが帰ってくる・・・。
下手側。雪セット。 ここで蜜兄ちゃん(蜜雄:松村)登場。松村さんは舞台で初めて見るのだけど、もうこの芝居ですごくハマった役者さんです。とにかくこの東北魂、東北のTHEおっちゃんが最高にステキなのだから。佐藤兄弟最高!蜜蜜兄弟についてはこの後きっといっぱい語ると思います。蜜雄と前田くんの格闘シーンだけど、ここもカマ在りなので当然面白いです(カマ絡みがなんか好きw)。 扱いに慣れない前田くんのへっぴり腰でのシャー!シャー!とか、蜜雄の顔上スレスレからの顔横トントントン(俊敏)とか。擬音だらけですが観た人はわかりますよね。
事務所、蜜雄間髪入れず妹(涼・すず)をバシリ! 佐藤兄弟妹の色々がここで説明されます。薬漬けの家の意味とかね。そっちの薬(農薬)だったのかーと。1年ほど前にNHK土曜ドラマでこの手の農業ドラマがあったの思い出しました。農家、地元役場にとって農薬の偽りは死活問題になるのですよね。お尻が少し軽い妹は片目ちゃんで…、故に自分を軽んじてしまう、切ない話ですな。すず役の北浦愛ちゃんはこれが初舞台だとか。独特な雰囲気を持つ女優さんで、すずちゃんにピッタリはまっていました。頬もぽっと赤らんでまさに林檎ちゃん という雰囲気。蜜々兄弟もリンゴ噺にはもってこいの名前だしね。片目ちゃんに詰め寄る夏目さんの壁ドンならぬ壁トン?「東北の女の子はお尻軽いのぉ~、寒いから~?」のシーンは毎回すずちゃんを羨ましがる自分でしたw
ヤバい農薬の秘密を知った夏目。抜け目ないこの男はすぐに佐藤兄弟との駆け引きにでます。農薬の入ったバックを抱えて絶対離しませーん!3兄弟妹にバシバシたたかれる夏目。とにかく夏目はこの芝居では何度も叩かれまくります。前田くんからの天竜チョップもマジで痛そうだし。ここでもだいぶ叩かれます。4日はそーでもなかったけど、後半になるにつれてバッシングが酷くなるばかりwすずちゃんの遠慮が無くなってきたし、豊蜜にいたっては後半は完全に夏目の背中に全体重をかけて乗ってましたからね。終演後はバッテンの時のようにアイシングとかしてるんじゃないかしら?毎度身体張ってます、先輩
事務所の弁償代(兼口止め料)として蜜雄に200万からの(割り引きして)150万を要求しながら、目の前の5万に揺らぐ夏目も可愛いです。「ぎょ(5)まぁ~ん…」 あと、蜜雄の「なんぼ?」も何気に好き。どっから見ても真の東北男ですよ。方言うますぎだからー。この辺はまだ蜜雄もカッコいいんだよなー。後半のダメっぷりとのギャップがまたね…。
夏目と前田くんがトイレで愛し合ってる時に、茅ヶ崎園長が四角い顔の東京デブ男(満寿夫:富岡)を捕らえて帰ってきます。このトイレの中の演技も4日はただドンドンしてるだけでそういう雰囲気が薄めでしたが、後半は結構喘ぎ声とか出してて面白くなってました。
前田くんが密かに大事に育てていた拳骨2世。それを亡きモノにした犯人がこの満寿夫で、都会風ふかしたねちっこい嫌な男を富岡さんが好演してます。ここで唯一の部外者である満寿夫は、サイテーだけどある意味まともで彼らの暴走が始まってからも異質故にこっち側の世界に留まっているのですよね。とことん救いのない男だけど、暴走後のおとこたちの中にいるとそのまともさから逆に少し安心できる存在でもありました。
で、茅ヶ崎による「農薬飲んでやろうかぁ~!シャー」のコーナーが始まります。 ここはもぅ茅ヶ崎かわいすぎかよっ に尽きますね 「茅ヶ崎いきまーす」からの農薬入りグラスぐるぐる(歌舞伎調)。←なんだそれw アフタートークでのウラ話、12年前の稽古でグラスの中身は農薬なんだからここは絶対にこぼさないでくださいよっ!と圭史さんから何度も何度も注意されていたまことさん。でも毎回どうしてもこぼしてしまったそうで。ある時圭史さんが、「まことさん、次こぼしたらチャッキー封印ねっ!」と言われてしまった。それからピタリとこぼさなくなったそうで、まことさんにとってチャッキーはそこまで大切なギャグ(圭史さん曰く)なんだね。けど12年後もやっぱりこぼしているまことさんがチャーミング過ぎます。まぁあたし的にはこぼしている茅ヶ崎の方が断然好きなんですけどw 次に農薬グラスに指つっこんで茅ヶ崎、なめまーす!のシーンでは日替わりじゃないけど、ギャグちぇんじをしていたみたい。4日はよく覚えていないんだけど、7日(と千秋楽)は小澤征爾からのカラヤン(指揮者のマイム)で、17日は小山ゆうえんちぃ~♪でした。その前のこまわり君「死刑!」(がきデカ)もだけどギャグが昭和過ぎるわw
すずちゃんとのことを話し出す満寿夫に激情してチャッキーと化す茅ヶ崎 (すずの身内でもないのに)。「アイム・チャッキー!」 からの身体の動きとかもう堪らんですわ。この芝居で一番の笑いをかっさらうシーンじゃないかしら?再演の稽古でチャッキー以外のギャグも披露したまことさんでしたが、やっぱりチャッキー以上の芸は存在しなかったようで。チャッキーが封印されなくてホント良かった。前半はまことさんの個人芸であったチャッキーを後半はなるしさんも便乗してたのが笑えました。千秋楽とかも夏目もチャッキー言いながらギクシャクした動きまで結構乗っかってましたよw(チャッキーがふたりww)
妹のことバカにされても冷静だった豊蜜が、万寿夫にカマを振り落とすまでの要因となったのが前田さんの拳骨2世をバカにされたからなんだよね。ここも熱いぜ、豊蜜!少しずつ歯車が狂いだす瞬間だけど、それでもまだこっち側。そこに三菱が突っ込んでくる・・・。
正面でトラックを受ける茅ヶ崎とサイドに飛ばされる夏目。アフター裏話でこのシーンのまことさんの当りっぷりが秀悦だと圭史さんが褒めてました。少しずつトラックに当たりにいってるまことさんの役者魂、いや当り屋魂に。それでちょっと負傷したとも聞きましたよ。ここでも魂削ってます、同級生コンビよ (成志さんとまことさんは同期)
このトラックからが狂気の始まりでいいんですよね。 後半の詳細は次のブログにまとめるとして、というかここからがこの舞台の醍醐味なのでここまではそのお膳立てとも言えるのですが。
潰れかけたリンゴ農園に関わる彼らは世間的には完全なる負け組で、本気で腎臓を売ろうとしたり、弁償目的に金を強請り取ろうとしたり、しまいには人を刺してしまったりと一般常識からは少しズレはじめているのだけど、ここから彼らの暴走からの脱輪はスリップどころではない。でもそれが笑いを伴いながらじわりじわりと侵食していくので観ているこちらもオカシイ(非常識)と思いながら、そのオカシさに取り込まれていく。人がカマで刺されているのに、それより大事なのが愛くんの飲酒運転を必要に疑う茅ヶ崎だったり、キャバクラとソープ代に消えた12万を弟に問い詰める前田兄だったり。常軌を逸した前田兄弟の暴走が妙に無邪気なので、自分の常識も狂わされそうになる
愛「こいつ、捨てちゃいましょうよ・・・」
元凶はトラックの荷台にあり。とんでもなく危険なソレはどうしても2011年福島を連想する。弱者の中年たちがソレと対峙するさまはタイトルのはたらくおことそのものだった。 荷台から漏れ出すソレは舞台上だけでなく客席をも徐々に侵していく。舞台奥から迫るスモーク。独特な匂いを伴いながらこちら側に漂ってくる。その匂いはザラザラした粉っぽさを連想させる。ここで今日自分がH列サイドでよかったと本気で思った。手持ちのチケットB列辺りならば確実にヤラれてしまう。
そんな緊迫感を共有できる舞台ってすごくないですか?
このスモークで客にそう思わせた時点でこの芝居は大成功なんじゃないかと思う。千秋楽は立ち見だったので客席サイドから舞台と客席を見渡せる位置にいた。舞台上では茅ヶ崎と蜜雄が懸命にドラム缶を運んでいるが、4回目は客席に漂う煙をただ見つめてしまった。ゆっくりゆっくり後ろに移動する白い煙。初見ほどの恐怖はさすがに感じないけれどそれでもその空気はそこで生きていた。
シートに包まれていた前田くんの頭部を観たときはやっぱり愕然としたし、松田聖子はやっぱり最強だと思った。聖子ちゃん観に来たらいいのに~。こんなにも泣ける「ガラスの林檎」🍏がここにあるよーって伝えたい!しかも、蜜雄さんによるあの歌との輪唱だからね。これが重要しゃー!自分、この芝居の好きなシーンは幾つもあるのだけど、一番好きなのはココです。
「豊蜜がぁ~農薬で死んじまっただぁ~♪」
切なくて苦しいけど絶対笑っちゃうの。笑い泣きってあるけど、このシーンはまさにそれですよ。笑っちゃいけない気も多少はあるんだけどね、その狂気と笑いの絶妙バランスもこの芝居の肝だと思います。圭史さん、天才!
カラオケ行かないけど今度「ガラスの林檎」を熱唱してみたいなー。 あー、でも友達に聖子ちゃん歌ってもらって自分は豊蜜ソングのパートを担当したいです!
聖子ちゃんの辺りはまだ序章でね、そこからの恐怖も半端なかった。エグいのは得意な自分でも産廃を食するあたりでは具合が悪くなりそうで…、ここでも前方の客席を哀れみつつ自分を保守する自分でありました。(ごめんなさい、でも舞台的には大成功) それでももがき苦しむおとこたちの姿が鮮烈で、夏目の告白辺りからは気持ち悪さもぶっ飛んでそのシーンに圧倒的に支配される自分がいました。
こんななるしさん観るのが初めてだし、 これは茅ヶ崎でなく夏目の物語でもあったのだとここで分かったので。勘が鋭い人は夏目がここではたらく意味に少し前から気づくのかもしれないけど、自分は鈍かったのでこのシーンでまず呆然。
夏目の贖罪。ようやく決意を決めて話したのに 茅ヶ崎にその声は届かない。「聞こえてないんだぁ~」 と絞り出される悲痛とその表情。 まことさんも成志さんもいい表情するんだよなぁ~。 ドラム管の中から出てきた真っ赤なリンゴ。 しっぶいリンゴを笑いながら食べる二人は無邪気でステキ過ぎます。
それで、雪の上の前田くんに驚いたのは夏目だけでなく観客全員だったし。 これで終わりと思いきや…。
最後のどんでん返しも単なる夢オチとは思わなかった。 ここではホントにアレが現実の世界でなくてよかったと心から思っていたし、ラスト、茅ヶ崎の「許す」があって夏目も観客も救われたんだから。
豊蜜の問いにぽつりと「リンゴの事を考えていた…」と夏目。 で、死んだ?と思っていた茅ヶ崎がびくりと動き「許す」 の台詞。 これが序盤の梅干の件につながるのですよねー。 あの時はただ茅ヶ崎の夢うつつな妄想を全否定してた夏目だったよねと。 何が現実でどこが夢とかのはなしじゃない・・・。
後半、怒涛の展開がもう凄すぎて、正直初見の4日はよく覚えていない。 とにかくすごいもの観てしまったー!という思いと これは生じゃなきゃダメ!という思い。 心の底からLIVEの凄さを味わったから。 それで一人で来たことを恨んだよ。 誰かとこの気持ちを共有したかったー。 わーっと叫びたくなりました。(ぐっとひとりで我慢してましたけど)
文字にしているだけでも4日の衝撃を思い起こして心拍数が少しあがりそう 文句なく2016年TOPを競うお芝居でございました
こんな凄い舞台を作っちゃう圭史さん天才! そして再演してくださってほんとにありがとうございました。
後半雑記と夏目さん色々はまた後日書きます。 感情が高ぶって1回ではうまくまとめられずスンマセン。