時代を越えても人々の心に普遍的に存在し、最も共感を得やすいのは恋愛だと思っています。
今回紹介するのは1848年にフランスで描かれた『椿姫』。オペラやバレエなどの舞台の原作として愛される椿姫とは、いったいどんな人物なのでしょうか。
ちなみに、著者のアレクサンドル・デュマと言うと、『三銃士』という声も上がりますが、同名ながら椿姫の著者は三銃士のそれではありません。三銃士を書いたデュマはこの椿姫のデュマの父親にあたり、これを区別するため、椿姫のデュマは小デュマ、あるいはデュマ・フィスと呼ばれることが多いそう。
さて、文学に明るくない方は、まず『椿姫』というタイトルに何を想像するでしょうか。楚々としたどこかのお姫さま?お転婆などこかのお姫さま?
実は、実際の椿姫はお姫さまどころではなく、なんと娼婦。当時のパリでは身分制度が絶対で、女が独りで生きていく十分な収入を得られる仕事もそうそうなかった。
椿姫と呼ばれた娼婦・マルグリットは、物語中でこう語っています。
『ねえ、あなた。もしあたしが公爵夫人かなんかで、年に二十万フランもの収入があり、あなたというものがありながら、他の男をこしらえたとでも言うんなら、あなたからどうして自分をだました、と言われてもしかたがないわ。でもあたしは、ごらんの通りのマルグリット・ゴーティエよ。四万フランからの借金はあるけど、財産なんか一文もありゃしないわ』
面白いのが、マルグリットと貴族の青年アルマンの駆け引き。
体を売ってお金にすることに慣れてしまい、『ピュアな恋愛』を知らないマルグリット。
そんな恋愛不信で男性不信なマルグリットに、アルマンは一生懸命自分の気持ちを伝えますが、マルグリットの返事はそっけなくて、つれないんです。
ですがマルグリットの心が揺らいでいく瞬間や、『真実の恋』を信じたいマルグリットの本当の心、寂しさが垣間見れる瞬間が、この話が実話を元にした物語であるということを踏まえても素晴らしく描写されています。
LA TRAVIATAというのがオペラ版椿姫のタイトルですが、traviata『道を踏み外した女』だけでなく、『もう恋愛なんて信じたくない、けど本当は…』という現代女性にも大いに共感できてしまう、いわゆる『ツンデレ』描写が、読む手を止めさせてくれません。そこに1800年代のフランスの情景描写が加わるのですから、寝不足必至です。
さて、自分の実力だけで裏社交界の頂点に上り詰めた彼女は、世間知らずで純粋な青年アルマンと恋に落ちますが…?
アルマンの方の心情描写も見事です。もてる女性を恋人にし、信じたいけれど心配でならない。そんな彼は予期せぬハプニングが起きたとき、恋人とは思えない仕打ちをして見せるのです。
オペラ、バレエなどと、次々に舞台化され、愛される椿姫の秘密。あなたは知りたくありませんか?
気高く、愛らしく生きた椿姫。この本のレビューを書けて嬉しいです。
なぜって、私自身この作品が元でオペラの魅力に目覚めたからなんです。
今回紹介したのは【新潮文庫】【新庄嘉章訳】の椿姫です。
実は私、原本も持ってます。
他の人が訳した椿姫も読んでみたいですね。
私も、時代や国を越えてマルグリットに魅了された一人なのでしょう。
是非、おすすめです。




