今年も気づけば年の瀬。
なので、今年鑑賞した新作映画、計67本
(今年公開された映画で鑑賞したもの、レビューしていないものも含め)
から勝手に2020年のベスト10とワースト3を決めたいと思います。

今年はコロナ渦もあって
今まで見てこなかった名作をたくさん見れました。
おそらく、これも含めたら相当な本数に行っているような...
中でも衝撃的だったのが

映画『3-4x10月』ですね。
見てなかったのかよ!というツッコミもありそうですが、
あれ、めっちゃ面白かったです!

そんなことはさておき、
早速ベスト10、行くことにします。

2020年SayGo's Movie Top 10

第10位　ルクス・エテルナ永遠の光

公開日:2020年11月20日(のむコレ4にての先行上映。20201年1月8日から全国順次公開)
上映時間:51分

鬼才ギャスパー・ノエ監督による
魔女狩りを描く映画撮影現場の様子を複数の物語を
同画面上で同時進行させながら展開させていく中編映画。

※激しい光の点滅があるため鑑賞には注意して下さい。

予告編や本編上映前に注意文が表示されるように
本作は物語中盤以降激しく光が点滅ものにする中で展開されていくという、
否応なしに目と脳を強烈なまでに刺激してくる"ヤバい"映画です。
作中にドラッグは登場しなかったように思えますが、
ギャスパー・ノエのドラッグ演出、極まれり!な印象でした。

なんでそんな作品を選ぶんだよ!と思うかもしれませんが、
この作品のクライマックスで描かれる
"最悪×最悪＝奇跡"に激しく共感し、感動してしまったからです。

トラブルが不可欠な撮影現場において、
一見最悪な出来事が重なり合うことで偶然にも奇跡を起こした瞬間を
何度か経験してきた自分はこの作品の
"最悪であり最高なクライマックス"に歓喜。

あの瞬間の悦びを"逃避不可避な光の点滅"という
アバンギャルドな演出で描いて見せたような本作は
ギャスパー・ノエの映画愛、映画を作ることへの悦びや、
映画の持つ芸術性を描き切った作品に思えて仕方がありませんでした。

今まで経験したことのなかった
強烈で刺激的な体験ができたことも忘れられず、
なんなら感動してしまった衝撃もあって10位にしました。

第9位　ブックスマート卒業前夜のパーティーデビュー

公開日:2020年8月21日
上映時間:102分

俳優オリビア・ワイルドが長編初監督を果たした一作。
高校卒業前夜に学園生活を学業に捧げた女子高生2人が
一夜の大冒険を繰り広げる青春コメディー映画。

セクシャリティや人種などの多様性を
"有り触れたもの"としてスポットを当てないという
他作品の1歩も2歩も先のアップデートで場を鳴らしながら、
2人の女の子のバカで爽快感に溢れながら、ウルッともさせられる
一夜の大冒険は控えめに言って最高でしょう。

ドラッグ演出を通して美醜問題にアプローチする作りをはじめ、
他者に触れ、心を開くことで世界が開けていくという物語を
コメディに落とし込む手腕からノリノリな音楽の選曲まで言うことなし。

おそらく、女性が見たら尚更最高な1本なのでは。
豊作だった2020年青春映画の一角を担うだろうことから第9位。

第8位　ジョジョ・ラビット

公開日:2020年1月17日
上映時間:109分

今や注目の監督タイカ・ワイティティによる
第2次世界大戦下のドイツを舞台にしたヒューマンドラマ。

まさか"ハイル・ヒトラー"で笑う日が来るとは...
それはさておき、独裁政権下のドイツを
少年の視点でコミカルに且つこの上なく残酷に描き切った本作は
ヒューマンドラマとして一級品の作品だったと思います。

何より印象的だったのは本作の
"靴"もっと言えば"靴ひも"を用いた演出の周到さ。
主人公の少年に寄り添うように低い画角で構成される本作は
靴というものが印象的なアイテムとして使用されており、
それを持って母の死を見せるシーンの悲劇性も
"2つを結ぶ(人種を結ぶ)"という母の祈りが込められた"靴ひもを結ぶ"行為を
少年が受け継ぐクライマックスシーンは今も鮮明に覚えている。

そして、名ラストシーン。
先を考えれば闇にも思えるラストを
軽快な音楽とダンスシーンで彩って見せた本作は印象深く、
それもまた母から想いを継承した少年の姿、
成長描写となっていおり、感動したのを覚えています。

ヒトラーをイマジナリーフレンドに!?
という型破りなコメディでありながら
戦争映画でもありヒューマンドラマとしても
纏め上げられた本作を第8位にしました。

第7位　ミッドナイトスワン

公開日:2020年9月25日
上映時間:124分

「獣道」の内田英治が企画、監督、脚本、原作を務め、
草彅剛と本作が俳優デビューとなる服部樹咲が共演するのヒューマンドラマ。

トランスジェンダーの主人公が少女を預かったことを機に
心を通じ合わせ、次第に親子の絆で繋がっていく本作は、
汚い部分を隠すことないセンセーショナルさで
登場人物に生きる人間としてのリアリティを与え、
その悲劇的、残酷さを持ってして主人公凪沙と少女一果の物語を美しく描き出していた。

同部屋内で少女の生活空間が移動し、広がっていく様や
フード描写をもって2人の関係性の変化を描写していく映画的演出に加え、
一果のために容姿を男性に寄せる凪渚に対し怒りを露にする、
マイノリティーやアイデンティティーを隠すことに対して意を唱える
シーンなど印象に残るシーンが多い作品となっています。

役どころゆえ、衝撃的なシーンの多い草彅剛の演技のみならず、
俳優デビューとなる服部樹咲の輝きは素晴らしく、
彼女が磨かれていく、成長していく様が役に現れていたように思える。

ラスト舞台に立つ一果の姿に感動は必須。
日本映画は遅れている、つまらないという方に是非見ていただきたい
今年の傑作邦画ゆえに第7位。

第6位　パラサイト半地下の家族

公開日:2020年1月10日
上映時間:132分

半地下に住む生活に困窮しているキム一家。
その長男が上流階級にある家庭の家庭教師を務め始めたことを機に、
寄生虫の如く裕福な豪邸にパラサイトしていく様を
コミカルにもスリリングにも描かれていく。

韓国映画がアカデミー賞作品賞を受賞するという
映画史に大きな革命を起こした2020年を代表する一作。

貧困家族が上流階級家族に寄生(パラサイト)していく様を
時にコメディ映画のように軽快に、時にケイパー映画のようにスリリングに、
時にホラー映画のような不穏さで描くという
多様なエンターテインメント性を放っていく娯楽性の高さにとどまらず、

"階段"や"街並み"、"水害"などなどの演出で
貧富の差はもとより様々なことを放棄することを余儀なくされる
現韓国の社会情勢に至るまで痛烈に示す部分には驚かされた。

韓国のみに収めず、アメリカにまで言及されるクライマックス
そして、観客に委ねる映画的な余韻を残すラストに至るまで
一切非の打ちどころのない一作だったと思うので第6位。

そして、第5位。
の前に、今年のワースト3を箸休めに。
残念なことにすべて邦画のメジャー作品ですね。
ざっくり評していきます。

第3位　今日から俺は!!劇場版

公開日:2020年7月17日
上映時間:114分

西森博之の漫画を実写化し大ヒットを記録したTVの劇場版。
もはやギャガ―揃いなキャスト陣による福田雄一ワールドは
あくまで"SPドラマ"の域を超えることもなく、
主人公2人が助っ人的な立ち位置に追いやられ影を薄めていく
感情の持っていきづらいストーリーテリングには
大乱闘クライマックスもまったく盛り上がらなかった。
これが高評価!?信じられない現象としか言いようがない。

第2位　カイジファイナルゲーム

公開日:2020年1月10日
上映時間:128分

福本伸行の人気コミックを実写化したリリーズ最終章。
これまでのシリーズを結構楽しんできたわけですが
駆け引きや心理戦がないゲーム内容の退屈さは言うまでもなく、
社会性や無駄にウェットなストーリーを盛り込んだ結果
主人公をクズではなく"ヒーロー"に仕立て上げてしまった本作は
オリジナルの面白さを完全に粉砕して見せた駄作。
見て公開間違えなしの一作です。

そして、今年の最低最悪映画第1位は

新解釈・三國志

公開日:2020年12月11日
上映時間:113分

福田雄一監督×大泉洋による三國志コメディ大作。
大泉洋の捻くれた"ボヤキ"芸は福田雄一作品の主演には非常に弱く、
また、そのサイドを固める俳優陣のテンションの低いリアクション、
福田作品常連俳優陣までいつもより温度が低めな本作は"愛想笑い"で精一杯。
シチュエーションコントを羅列していくような本作は
ひとつの物語としてのまとまりに欠けているため三國志として楽しむことは出来ず、
映画を見たという満足感が近年最も無かった一作。

"役者がつい笑ってしまった顔をカメラに隠す"
そんなお決まりがないことがすべてを物語っているように思えた。
(※正確に言えばあるが、演技で笑っているようにしか思えない)

ではでは、今年のベスト5に移ります。
第5位　ブルータル・ジャスティス

公開日:2020年8月28日
上映時間:159分

暴力の伝道師として評されるS・クレイグ・ザラー監督作。
停職処分を受けた刑事2人が闇取引される大金を強奪しようと計画し、
その果てに惨事に陥っていくクライム・スリラー。

"贅沢な時間使い"が"映画的な娯楽性"とイコールになっているような一作。
丁寧な人物描写や冷ややかでソリッドでありながら
抜け感も漂わせる画づくりもさることながら
衝撃が走ったのはそのバイオレンス描写。

これまでの映画作品におけるバイオレンスが生易しくも見えてしまう
無慈悲で助走や躊躇の一切ないバイオレンスの切れ味は凄まじく、
本筋の物語上にぴて"犯罪者に殺されるだけの人物"の
背景や生活模様を事細かに描写していくという露悪さや
内包する描写の反時代性がバイオレンスは強烈さを増していく。

血みどろな惨事に陥り、後戻り出来なくなっていく泥沼な本作を
今年を代表するだろう劇伴"ショットガン・サファリ"で
強引なまでに軽快に幕を閉じてみせるラストシーンも最高でした。

"絶対に会いたくない人殺し"が登場する本作を第5位に。

第4位　アルプススタンドのはしの方

公開日:2020年7月24日

上映時間:75分

第63回全国高等学校演劇大会で優秀賞に輝いた戯曲を
城定秀夫監督で実写映画化。
アルプススタンドのはしで偶然顔を合わせた男女の葛藤が
映されることのない野球試合の展開と重ねながら描かれます。

先に言ってしまうが、今年の邦画No.1映画です。
何かを"諦めた"高校生の男女が想いぶつけ合いながら自らと向き合い、
新しい道を切り拓いて"声を上げる"に至る姿を描く本作は
幸か不幸かコロナによって"諦める"ことを強いられた今に
強いメッセージとエールを送ってくる。

"諦めないことの重要性"をちょっとしたミスリードと
なんとも粋な演出でサラッと語って見せるラストシーンには
風通しの良い感動を覚えました。幸福な号泣です。

そして、素晴らしいのは城定秀夫監督の
最低限なカット数でありながら
的確に感情を掘り下げ、ストーリーテリングしていく
画面構成力、演出力の手腕。

人物の立ち位置、距離感や視線の矛先ひとつで
物語の動きや人物の内面まで紐解いていくという
舞台的でありながらこの上なく映画な語り口には、
自分が知らずの間に持っていた映画に対する固定概念を
根底から覆されたような衝撃を覚えました。

個人的には今年を代表する邦画ゆえ第4位。

第3位　燃ゆる女の肖像

公開日:2020年12月4日
上映時間:122分

結婚を拒む貴族の娘とその肖像画を描くことを依頼された画家の
愛を描いたセリーヌ・シアマ監督作品。

今後忘れることがないだろう"絵画「燃ゆる女の肖像」"に
本作のラストカットで出会ったような一作でした。

映画芸術の根本にある"視線"を用いて
2人の女性の関係性の変化を描き"見せていく"という
古典的でありながら手腕の光る演出力。

男性の存在を極力排除した抽象的、寓話的な世界観で
シスターフッド性を内包させながら、
辛辣なまでに"男性社会の不条理"も描写していく本作は
意識が変わりつつある現映画界においても存在感は強く思え、
個人的にはこの変化を代表する
エポックメイキングな作品になるだろうとさえ思ってしまっている。

そして、驚愕のラストカット。
ある演出が"真逆の意味"を持ち、
それが"愛"を物語っているようなラストカットは
"映像(映画)"芸術でもあり、一枚ですべてを物語る"絵画"でもある。
その愛の持続性、永遠性を作品の"回想構造"で示しているもの恐ろしい。
永遠の別れが永遠の愛を意味する美しい映画です。

オールタイムベストなラストカットだったゆえ第3位。

第2位　透明人間

公開日:2020年7月10日
上映時間:125分

古典SF作品「透明人間」を現代的なブラッシュアップで
リブートしてみせた一作。

女性視点から作品を語りなおし、透明人間ギミックに至っても
現代的なブラッシュアップを施しながら、
クラシカルな映画の雰囲気を確実に残している本作。

ガスライティング要素を多分に含んだストーリーは
娯楽性を多分に含みながらも
現代の女性の立場を的確に示すものにもなっているわけだが、
"真偽"を観るものに委ねる恐ろしい結末は
主人公を肯定も否定もすることはない味わい深さと
確かなカタルシスを演出して見せる。

この作品で最も印象的なのは、
カメラワークの一つである"パン演出"です。

人のいない、誰も映されていない空間を
カメラが追っていく本作の演出は
"透明人間をどう映すか"というこれまでの概念を
覆した見事な演出となっいる。

映画において通常"人の動きを追う"カメラワークを
空画に用いることで不穏さや不気味さを醸すこの演出は
今年最もユニークで的確なものだったように思えてならない。

ジャンル映画として楽しめるだけではなく、
そこに社会性や映画文法を覆した新しい表現で
透明人間をブラッシュアップして見せた本作は傑作中の傑作ゆえ第2位。

そして、2020年SayGo's Movie Top 1に輝いたのは

第1位　ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから

Netflix配信日:2020年5月1日
上映時間:104分

秀才でありながら内気な中国系アメリカ人高校生エリーは
ある日、学校一の美女アスターに恋をする同級生ポリーから
ラブレターの代筆を頼まれる。

エリーのサポートでアスターと親交を深めていくポリー。
しかし、エリーもアスターに秘めたる想いを寄せていたのだった。

セクシュアルマイノリティを秘める主人公とした
NetFlixオリジナルのティーンムービーが今年の1位。
というより、個人的にはオールタイムベスト作品になりました。

セクシャリティ要素を含む作品となっているわけですが
本作はそこを必要にフューチャーせず、
ポップで可愛らしい青春恋愛模様、甘づっぱい恋模様が展開されていきます。

なぜ一位にしたのかというと、
本作がラブストーリーでありながら、
恋が"成就する""成就しない"と言った固定概念に捕らわれていないこと。

"マイノリティのオープンにする"物語であると同時に
"自分のマイノリティを受け入れる"物語にもなっており、
それらは自分の存在や進路に迷う高校生活という舞台に
この上なくマッチしていたと思います。

"好き""嫌い"という今の結論ではなく、
"またね"と前に進み出す爽快感に溢れた結末には感動させられました。

そして、演出ですよ。
エリーとポリーの関係性の変化を歩くシーンの位置関係で見せ、
主人公エリーのマイノリティの誕生を"絵文字"で華やかに飾って見せるなど
すべてが細やかでポップに的を得ているという映画らしさ。
"こんな恋愛、絶対嫌だ"と言っていたシチュエーションで
主人公が思いっきり感情を露にするラストも印象的です。

今年は青春映画が豊作な年だったように思えますが、
不変的な恋愛の甘酸っぱさを残しながら
現代的なアップデートをやってのけた本作を第1位にしました。

以上で今年の総括は終了です。
また、来年もよろしくお願い致します。