○○ さや 自分の本名なのに、かしこまって書こうとすると大体ミスをします。
書き損じた用の物を白紙で渡そうかと思いましたが、名前が書いてあった方が
自分の決意が伝わるかなと思いました。
夫にとっては、思ってもみない事でしょう。
でも、もうそれでいいのです。
夫の事が嫌いになったわけでも、本当は別れたいわけでもないのですが、
夫が女と一生を共にすると言っている以上、きっとそこは私の暮らす世界ではないのです。
気づけば9ケ月の間、私は夫との関係を改善しようと奮闘しました。
時には、会長にそして錦戸君や花さんにたくさんの力をもらって、
もう一度家族として夫とやっていくために。
でも、それは無理な事なのでしょう。
今のままの状況では、私も夫も幸せになることなど到底無理な話です。
何年も一緒に暮らしてきた夫には、色々な情があります。
あんなことをしてしまった夫ですが、それでも夫には幸せになってほしいと思いました。
そして、何よりも自分が幸せになりたいと思いました。
その道に進むためには、どこかで区切りをつけなければならないのでしょう。
こどもが寝た後、静かになったリビングに夫を呼び出しました。
ちょっと話があるんだけど・・・・。
何?
少々訝しげに夫は答えました。
近頃は、私が真面目な話をしようとすると夫はすぐにバリアを張り、それ以上突っ込まれることを防ぐようにガチガチの防御態勢になります。
どこかで、そんな夫に正論をぶつける事に疲れてしまった私もいるのです。
あのさ、ちょっと真面目な話したいから、パソコンやめてこっち来てくれる?
だから何!用件を話せ!
夫がキレ始めたので、用意していた離婚届をキーボードの上に置きました。
・・・・・・・・・・・・・・・。何これ?
夫の表情が明らかに変わったのが分かりました。
もう終わりにしよう。夫婦でいる事を。
何で・・・・・・・?
全て知っている。あなたとAさんの事。
もう終わった話だろ!!!
終わった話?それであれば、なおさら。今の状況でもう終わった話であるのであれば、私はもう
あなたと一緒にいるべきではないよ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
もうお互いをけん制しあうのは、やめよう?
私は、あなたと一緒に暮らしてきて本当に楽しかった。Aさんとの関係を知った時、すごくショックでそれでも、私にも悪い所があったんかな。とも思って、関係改善を しようと努力したけど・・。あなたは、Aさんとの関係をやめるつもりはないみたいだし、このままではみんなが、嘘をついて、傷つけたままだよ。
私も幸せになりたいの・・・・。
今までありがとう。もう終わりにしよう。
緊張していましたが、思っていたより素直に自分の気持ちを話せました。
途中から、夫は無言になりずっと首を振っていました。
何かを否定したかったのでしょうが、それが言葉にならずにずっと首を振ってうつむいたままでした。
キーボードの上に置かれたその紙は、その場所から動くこともなく、夫は椅子にもたれ掛ったまま天井を見上げていました。
発覚以来初めて、私は夫との寝室ではなく別室で眠りにつきました。