はい・・・お願いします・・・。
と小さく答えた後、ボスも小さく頷いて言いました。
ふむ・・・。分かった。じゃあ動くぞ。
でも、君これで夫君もAさんも会社を辞めてしまって、2人の関係も切れなかったらどうするんだね?
もう辞めてしまった人間までこちら側は、管理できないぞ。全くの野放し状態だぞ。いいのか?
はい・・・・。覚悟しています・・・・。希望は、少ないのかもしれませんが、会社を辞めてしまったら
Aさんだって、夫と付き合うメリットも半減すると思います。
そうかな?余計自由の身じゃないか。誰からも咎められる事はなく。やりたい放題なんじゃないか?
そうとも言えるのかもしれませんが、Aさんが夫とこんなに離れても付き合う理由は、仕事の事も
絡んでいるようにも思えるんです。
仕事で、上司と部下の関係でいられるから、自分をサポートしてもらって、いい立場でいられるという
のも少し理由にあるような気がするんです。
困ったことがあると、すぐに夫に助けを求めて、夫の力で解決して、今の立場を上手く利用しているようにも
見えるんです。。
ふむ・・・。そうするとAを部署移動させようかな。
ボスは独り言のようにつぶやきました。
夫君の仕事のサポートが受けられない、ポジションに移動させようかな。
・・・・・・・・。夫はどうなるんでしょうか?
うむ・・・。・・・・・・・・・・・・・・・。
長い沈黙が重たい空気を一層重く感じさせました。
よし!一度Aを部署移動させよう!そこでワンクッションおいてから、処分だ。
どっちにしろ今は忙しい時期だから、その時期が終わったらすぐに処分、
それまでは配転で時間稼ぎをしよう。君はその様子をしっかりみるといい。
それで、いいかね?
はい。わかりました。
降格処分の前に女が先に配転になるのは大きいと思いました。
その理由を2人は考えると思います。そこで、2人の気持ちがどう動くのか見てみたいと思いました。
そして、何よりもすぐに降格にならないという事は、私にも決断する時間が少し与えられたと思いました。
それでも、この忙しい時期を過ぎたら動くのであれば、それは2、3ケ月後の事なのでしょう。
今すぐではなくても、きっとその時はすぐにやってきます。
錦戸君の言った心の準備をしないといけないと思いました。
部屋を出ようとした私をボスは呼び止めていいました。
君、処分の事なんだけどね。動き始めたらもう止められないよ。いいね。やっぱり止めてくれは出来ないからね。
まぁここ数日に考えが変わるんなら話は別だがね。
ボスは、私に数日の猶予を与えてくれたと思いました。もう一度考えるんだという意味が込められていると。
それから、もう一つ、処分をするにあたって条件がある。
君が、会社を辞めない事。それを約束してくれるかな。
はい。私は会社を辞めるつもりはありません。最悪のパターンになった時、シングルで子持ちで条件よく働ける職場はそうそうないですし、
私は、この会社が好きです。全く辞めるつもりはありません。
ボスは深く頷くと
なら分かった。私だってね、ゴタゴタがあった後に、社員まで失ってしまうのは痛いんだよ。
それを心に留めといてくれな。
はい。今日は有難うございました。
そういうと静かにCEOルームの扉を閉めました。
一気に肩の力が抜けたのが分かりました。
長い時間では、なかったはずなのに何時間かいたようなそんな錯覚すらありました。
シンと静まりかえった廊下に私の足音が、コツコツと響きました。