霧箱(Cloud Chamber)は1897年にチャールズ・ウィルソンが発明した荷電粒子の飛跡を観察するための装置です。
通称ウィルソンの霧箱と呼ばれるこの箱は飽和蒸気が満たされた容器を断熱膨張によって急冷し、過飽和の状態を生じさせる方法です。
これに対し、容器内の温度勾配によって飽和蒸気を発生させる拡散型霧箱という霧箱もあります。
最近では放射線を観察する装置はいろいろ開発され、原子核反応の実験などの場では使われなくなりましたが、手軽に放射線を観察する方法としては拡散型霧箱は簡単で優れています。 ・・・・・ということで、2月の月光カフェより、放射線の観察ができるようにしました。ドライアイスの準備が必要なので、要予約です。
容器の中にラジウムボールを設置します。
(このラジウムボールは微弱な放射線源で、天然放射性稀有元素鉱物を飛散させないようにセラミックで固化されている安全なものです。)
そして容器の蓋にスポンジを貼り、そこにエタノールを含ませます。
エタノールがしみ込んだスポンジ付の蓋を閉めると、容器の中にエタノールが蒸発して満ちてきます。
容器はドライアイスの上に置いているので、蒸発したエタノールが容器の底面部分で過飽和状態となります。
アルファ線などの高速の荷電粒子の放射線が物質の内部に入ると、空気中の窒素分子や酸素分子の中にある電子を弾き飛ばすことがあります。電子を弾き飛ばされた分子はプラスに帯電します。つまりイオンとなるわけです。
過飽和状態のエタノールの蒸気はチリやイオンを凝結核として霧となります。
放射線が過飽和状態のエタノールの領域を通過する時、その通過経路に沿ってイオンが生じ、その結果イオンを核とする霧が発生するわけです。光をあてることで、この霧を観察することができます。霧はほどなく消えてしまいますが、ちょうど飛行機雲のように放射線の通った道筋に筋ができます。
写真では白い筋にしか見えませんが、霧箱を観察していると、小さな空間の中にひゅんと星が流れるようです。
放射線の流れ星は、荷電粒子の持つエネルギーや荷電粒子の量、質量によって飛跡に長さが太さが異なります。