ステルクララの森を散策していると、大きな樹の根っこのところで小さな卵を拾いました。
卵はすでに何かが孵った後のようで、大きな穴が開いています。
覗き込むと卵の中に小さな部屋が在りました。
森の風景をそのまま卵の中に閉じ込めてしまったような景色です。
ブッシュの合間に石が置かれ、その上には小さな小さな丸椅子が乗っています。
わたしが不思議に思いながら卵を観ていると、頭上から低い声がしました。
幹と同じ色をしたコノハズクでした。
「妖精の子供が遊んでいたものだ。人間でいえば、ドールハウスといったところだな。」
コノハズクが言うには、妖精の子供が小さな虫のために部屋を作ってやり、しばらく一緒に遊んだものなのだそうです。そのうち、妖精の子供が飽きて、虫も住処へ戻っていって、卵の部屋だけがそこに捨てられたのだそうです。
探してみると森のあちこちに卵の部屋を見つけることができました。
卵の中のブッシュや石はブラックライトで蛍光しました。ブッシュの中には一際明るく光る粒も見えます。
ブラックライトを消した後も、丸椅子を乗せた石は、暗い処でしばらく光っていました。
以上が不思議な標本箱#002 「卵の部屋」の標本に添えられているエピソードです。
エピソードとラベルはお届け時に同封します。ラベル(#001も)は20年も前のデッドストックのわら半紙に印刷しています。