20日より始まりました 「トポフィリ――夢想の空間」展へ行ってきました。
通常は公開されていない東大駒場キャンパスの一号館。
正面玄関を入ると真正面にある、時計台が印象的な建物です。
1933年に建築家 内田祥三(うちだ よしかず)によって建てられたゴシック様式の建物です。登る階段を 間違えると行きたい教室に行けないそうです。
駒場キャンパス敷地内には、一号館の他にも101号館、駒場博物館など、素敵な建物がいくつもあります。
7月8日にこのブログでも紹介しましたとおり(http://ameblo.jp/sayanet/entry-10947204355.html
)、この展覧会はフランスの哲学者ガストン・バシュラールの著作『空間の詩学』に基づき、そこで述べられている思想の空間化を目的とした展覧会です。
十代後半、わたしはわざと難しい単語を使い、回りくどい言い回しを好んで使っていました。その時代に背伸びして愛読していた本の中の一冊が、『空間の詩学』です。正しい解釈ができたわけでもないのですが、それでも、閉ざされた空間に無性に惹かれる理由が『空間の詩学』に見つけたような気がしていました。
また、どうしても掴まえたい、あるイメージ(これは幼い頃から抱いていたもの)があって、それを掴まえる方法がわかるかもしれないとも思って、それは熱心に読んでいました。
その頃からずいぶんと長い時間が経過してしまいましたが、思わぬところで、また『空間の詩学』に再会しました。現在、きらら舎
で制作していたり、販売していたりするアイテムを生むイメージも運営するカフェ
で具現化したイメージも、その根っこの部分は、感受性の豊かだった時代に『空間の詩学』に触れていたことによって、年齢を重ねても揺るがないイメージとして残っているのだと思います。
今回の「トポフィリ― ―夢想の空間」展では、さらに自分以外の人が感じている「閉ざされた空間に対する詩的イメージ」を観ることができました。一緒にしてしまうのは、失礼ではあるのですが、きらら舎 やカフェ で出逢う方たちにできることなら見ていただくと、卵、貝殻、抽斗、鉱物、マーブル、硝子壜……そんなものたちに惹かれる、まだもやもやとしたイメージがきっと不思議な光を放ってくると思います。
また、入口は薄暗く昇るにつれて少しづつ明るさを増す螺旋階段を通って時計塔の一番上の小さな部屋に辿り着く過程で、きっと心の隅っこにとっても懐かしい、幸せなイメージが生まれることでしょう。
遠方でどうしても行くことができない、という方は、つたない写真ではありますが、見学レポート
のページを作成して、撮影してきた写真を掲載しましたので、少しだけでも、展覧会の雰囲気を感じていただければ幸いです。
その前に。
少しだけ、ネタバレ。
螺旋階段の途中にある不思議な箱の内部です。
内林武史さんの作品、『結晶製造機』の一部(全体写真はレポート に掲載しました)。
中をのぞくと……
先に、『空間の詩学』を読んで行っても、読まずに行っても、楽しめると思います。
繰り返しになってしまいますが、卵や抽斗や貝殻や空っぽの壜や鉱物内部の虹やマーブルに潜む小さな螺旋になぜか惹かれるという方は、ぜひ、会場を訪れてみてください。
『空間の詩学』はその後で、ゆっくりと。
ぱらぱらと読んでみると、何か納得することがあるかもしれないし、
全く違う答えがみつかるかもしれません。
いずれにしても、いつか、閉ざされた空間と、そこから生まれるそれぞれの想いについて、語れる日があったら嬉しく思います。