鉱物は同じ名前でも、全く違うように見えるものがあります。
たとえば異極鉱。その名前は「異極晶(両端の形状が異なる結晶)」から付けられたもので、異極鉱の結晶は片方が平べったく、もう片方がとんがっています。茶色っぽい母岩に白い結晶が付いている標本が一般的です。しかし時々、青い塊状のものもあります。菱亜鉛鉱みたいな標本です。
この2つを見て、同じ鉱物だと思う人はいないでしょう。
藍銅鉱もそんな鉱物の一つです。
通常の結晶はこんな感じ。
濃い群青なので、写真ではわかりづらいのですが、空に翳すと透明感があるのがわかります。
古くからラビスなどと共に岩絵の具に使われている「青」の石です。
銅の鉱床から産出されますが量が少ないので高価です。
これとは全く違う形状のものがこちら。
ミニチュア標本に仕立ててしまっていますが、ボール状をしています。
前述の標本とは全く別のものに見えます。
このボール状の結晶は、変身もします。
下の左から2番目を見るとわかるのですが、翠色の部分があります。実はこれは孔雀石化した結晶です。
藍銅鉱と孔雀石は化学式では藍銅鉱がCu3(OH)2(CO3)2で孔雀石がCu3(OH)2(CO3)と、ほとんど同じで、孔雀石のほうが安定しているので、藍銅鉱がCO3を一つ手放して孔雀石に変身してしまうわけです。
ボール状の標本は中を見るのも楽しく、下の右2つは1つの標本を割ったものです。
これは表面と大して違いがなく、つまらないのですが、時々、中に部屋があったり、内部が孔雀石化していたりします。
ミニチュア標本を制作中、ついつい、割ってみたくなる衝動にかられます。
そのうち、割った藍銅鉱の標本を作り始めたら………そういうわけです。