きらら舎で扱う活字のはなし | 天氣後報

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きらら舎の活字

叔父が写植会社をやっていたため、印刷に興味を持ったのはかなり幼い頃でした。

叔父の会社に遊びに行って初めて見せてもらったものは、何かの図鑑か百科事典のようなもので、 まだ未完成だった版下がとても素敵なものに見えた記憶があります。

ただ、写植屋さんの仕事は「写植版下」を作るところまでだったので、その後の工程、つまり印刷所のイメージは 町工場のものではなく、宮澤賢治の『銀河鉄道の夜』でジョバンニがアルバイトをしていた活版所につながります。

子供の思考回路なんてそんなものです。

『銀河鉄道の夜』に登場する活版所は 実際の日本における印刷所とは異世界で、ペン画などでみかける西欧の活版所のイメージです。

そしてそのまま「活版」のイメージはヨハネス・グーテンベルク(Johannes Gensfleisch zur Laden zum Gutenberg)につながります。


WEBを生業としている現在でも、「紙」や「印刷物」は好きで、ご無沙汰してしまった知人への挨拶やお礼には、紙を選び、インクや筆記具を選んで手紙をしたためていたりします。

その結果、きらら舎 には硝子ペンやインクがあり、したためた便りに捺すスタンプや添える文香・文鉱石があったりするわけです。


活字は見た目も可愛いし、何より小さな小さな文字が鮮明に捺せるので個人的には以前からいくつか所有していました。

ただ、実際にそれで文章を打つのは大変なので、たとえば「雪」という文字を雪のように捺して、中に一文字だけ「好」という文字を入れたりして(若かったなあ)。

残念ながら、この寒中見舞いを装った恋文は恋文だと気づかれることなく

「よく見ると、あれ、雪って字なのなあ~。よくあんなにちっこい文字を捺せたよなあ~」

という、6ポイントの活字への賛辞をいただくだけで役目を終えてしまったのでした。

ただ、この「活字」を商品にしようとは今までは全く思っていなかったところ、最近「活字愛好者」に出逢ってしまったのです。彼女の繊細な贈る心や贈り物に感動し、「特装士」としてステルクララへ招待しました。今後、彼女イサさんとどういうコラボレーションができるかわかりませんが、まずは、きらら舎やステルクララのユーザの方々へ「活字」を知っていただきたいと、「活字売り」を始めたものです。


現在では「活版印刷」をしている処は少なくなりました。あっても、葉書と名刺の印刷くらいをしているだけです。写真は現在も営業を続けている活版印刷所から借りた組版です(個人情報保護のため黒丸(●)をつけてあります)。 こんな風に活字を組み、太い輪ゴムで留めて印刷します。

この版の中には空間はありません。空間にはインテルやクワタが詰まっています。


今後、可能な限りは活字をいろいろな形(オブジェ化したり)でお届けしたいと思います。