歩きスマホをしていた。
駅から家までの帰り道。
目の端に、子どもが映った。
おっと。このままでは、ダメな大人の見本になってしまう。
スマホから顔を上げ、スマホを鞄へ閉まった。
そして、目に映る風景を見て、
あぁ。これを見たくないから歩きスマホをしていたんだ。
と、思い出した。
可愛らしい子どもたちと、母たち。
私にはもう手に入れることができないだろうもの。
無意識に再びスマホに手を伸ばし、思わず苦笑する。
思わず涙が出そうになり、深く息をした。
目の前に広がる優しい光景が辛くて、心地よい風にも泣きそうで、
音楽も聴きたくなくて、美しい空にも慰められないとき、
この心の揺らぎを、どうしたら引き留められるのだろう。
深く息をつき、自分をどうやって慰めようか考えながら、家路についた。