順田県  脚本家

会田りん 順田のファン

今野愛  今カノ

 

1 カフェ 脚本家の順田、脚本を書いている。そこへ、順田のファンの会田リンがにこやかに現れる。

 

会田「あの、もしかして、脚本家の順田県さん?」順田「ええ。」会田「私ファンです。」順田「有難う御座います。」会田「私、会田リンです。少しお話しできませんか? でも、よかったらでいいです。もし、よかったら。」順田「もちろん。」

順田モノローグ「会田リンは、自慢げに今の状況や好きなことを語った。今、休職中で、小説家を目指している。スコット・フィッツジェラルドが好きで、ウッディ・アレンが好き。若いのに、僕の好みと一緒。」

会田「私、ウッディ・アレンのレイニーデイ・イン・ニューヨークが好き。ウッディが若い大学生の恋愛を、現代を切り取ってみずみずしく描いたの。あとはね、私の趣味はフラワーアレンジメント。ナスタチウムが好き。今、活けたばかり。生粋の文科系。でも、ちょっと芸術家肌かな? アハハ。」順田[へぇ、あなたに興味が出てきたのよ。少し、歩きながら、落ち着いたところで…。]

順田モノローグ「僕らは、ウッディ・アレンの話で意気投合。日本庭園を一緒に見に行くことに。」

 

2 日本庭園 二人はデート。

 

会田「ウッディ・アレンは、もう監督を辞めてしまったの。」順田「ああ。」会田「あなたの過去作では、『ウッディに憧れて』と言う作品が好き。特に東京タワーでのラストシーン。ウッディがニューヨークを舞台にしたように、あなたは東京で。東京タワーの上から、ちっぽけに見える一人一人の人間にも、人生は当たり前にある。という事を描いた。この対比がいいわ。ああ、ねぇ、私、本物の脚本家を前にして、しゃべりすぎちゃった。」順田「有難う。普段は気にしないけど、逆に、一人一人が小さく見えたことで気が付いたってこと。人はそれぞれ人生模様はあるさ。」

 

順田の今カノ、今野愛が、雑誌の取材で日本庭園に来る。愛は、順田を見つける。それまで愛は、スマホであたりを撮影している。

 

愛「はぁ、美しい。この植物の緑、橋や、甘味処の朱色。日本だわ。ん! !?」順田「嘘だろ! りん、ちょ、ちょっとこっち来て。」

 

順田、愛の存在に気が付く。順田は会田の手を取り、一緒に逃げる。追いかける、愛。

 

愛「おい! マテ! 順田!」順田「駄目だ! 待てない! 何でここにいる。」愛「雑誌の取材。あなたは、暇を持て余して、女と遊んでる!」会田「だれだれ? どうしたの?」

 

順田、会田、急いで日本庭園を出て、辺りを見回して、タクシーを見つけて、それに乗る。

 

3 タクシー車内

 

会田「どうしたの?」順田「いいや、言いづらい事。」会田「何があったの? 借金取り?」順田「そういうわけじゃない。しいて言えば、お金より大切な物を奪っていく。」会田「それって何?」順田「今、二人の間に出来上がったモノ!」会田「えー! えー! ねえ、落ち着いて、お話ししよう。今、書いている本はあるの?」順田「それは確かにある。」会田「その話を聞かせて。」

順田モノローグ「しばらくその話をして、僕は気を落ち着かせると、恵比寿ガーデンプレイスに着いた。」

 

4 恵比寿ガーデンプレイス

 

順田モノローグ「愛から逃げてきた。りんと一緒に。これで分かる事がある。愛とは一緒にいたくないが、りんとは、一緒にいたいんだ。心は、動揺しているが、僕が行動した事実は、りんのほうを選んだという事。これは一気に決めてしまいたい。ピンチの時、早くその状況から抜け出したいから、結論を早く求めがち。焦ってる? でも、間違いはない!」

順田「今、書いている本に、いいシーンがある。あなたの感想を聞きたい。」会田「どうぞ。」順田「こっち向いて。いい? 行くよ。」会田「うん。」順田「このライトアップに満天の星空。でも、あなたの美しい心の前では、全てがかすむ。あなたは僕を好きになり、そして、キスを許すんだ。」会田、ぼーっとして、その後、慌てる。会田「え? ええ? あ、あ。・・・、はい。」

 

順田と会田、キスをする。キスが終わり、会田は、自信に満ちた表情に変わる。

 

会田「ねぇ、指輪を買って。」順田「え!? おろしてこなきゃ。」会田「お金、ないの?」順田「ああ。」会田「じゃ、子作りしよう。」順田「え?」会田「度胸が無いの? あなたの本に積極的な女性が出てくるじゃない。ねぇ、嫌いなの? 私、言ったじゃない。芸術家肌。ってことは、情熱的。子作りよ。」

順田モノローグ「ビックリして、怖い。りんが怖い。どうする? 今さら、今カノの愛と同棲しているマンションに帰るにもいかない。僕は一回、ナイフでお尻を刺されてる。理由は、お酒を飲みに行って、そこにいる女性にお酒を進めた。愛にとっては、それが浮気。はぁ、でも、でもー!! 今、帰る場所を決められない!!」

 

恵比寿ガーデンプレイスにカップルを乗せた、タクシーが止まる。カップルがタクシーから出ると、順田はタクシーに駆け寄り、会田から逃げるためにそのタクシーに乗る。そして、

 

順田「とりあえず、まっすぐ。」

 

順田モノローグ「とりあえず、まっすぐだ。人生、まっすぐでいる事に悪い事は無い。僕はそう思った。このタクシーは、その象徴だ。」

 

しばらく走って、窓の外を見ながら、つぶやく。

 

順田モノローグ「キスをするあんなシチュエーションを作っておいて、自分勝手だが、りんとはゆっくり進めたくなった。だって、いきなり子作り? 重い。重すぎる! もし、これが愛なら、今カノの事ではなくよく言う『愛』だったとしたら、それなら、一気に子作りと行くのだろう。ただ、それがそうじゃなかった。だからこそ、このリンとの関係は、『愛』ではなく、まぎれもなく『恋』なのだろう。日本庭園では、二人の仲に出来上がったモノは、『愛』だと信じいた。『恋』はすぐに落ちるが、『愛』は簡単に落ちてこないんだ。僕は、この先の人生を見つめてこういう。」

順田「運転手さん、帰るところは無いんだ。」

 

終わり