2. リスナによるブラインドテスト
実験は、同一の演奏者がそれぞれ3本の異なるフルートを吹奏した際、その違いをリスナが認識可能かというものである。
実験には27人のリスナが集合した。内訳は、20人がプロまたは上級アマチュア演奏家であり、さらにそのうち13人はフルート奏者である。残り7人は学習者である。
テストは、音響的に十分配慮されており、室内楽の演奏にも頻繁に使用される教室の中に、アルミニウムメッキを施した小さなマイラスクリーン(750μm厚、音響透過性は優に15kHz以上)を張り、その陰で演奏者が3本のフルートを吹く。という環境で行った。
各テストにおいて、全く同一のフレーズを3回吹奏する。そのうち2回は同じ材質のフルートによるものである。
リスナは、音色が異なって聞こえたフルートの演奏順を紙に記入する。これを1セットとする。
(例えば1回目に演奏した音が他の2回の演奏と異なる音色と感じたら「1」と記入)
この手法は、音色が「良い」あるいは「悪い」という印象による判断や、「木製フルートや銀製フルートの音色はこのように聴こえるに違いない」という先入観による判断を出来る限り除去し、音の違いだけを感じ取るようにするために考案された方法である。
実験は36セット行った。
最初の6セットは、銀管および木管を使用し、フルートの第一モード(低音)による一息のロングトーンを吹奏した。
そのうち3セットは、2回の銀管に1回の木管。残り3セットは、1回の銀管に2回の木管である。
同様に、次の6セットは銀管と銅管で行った。
次に、音色をフルートの第二モード(高音:約800Hz)に変更し、上記の条件で12セット(6セットを2回)を行った。
さらに、より複雑なフレーズを吹奏して12セット。
各セットでの確率的な正解率は3分の1になります。従って、36セットでの期待値は
36 ÷ 3 = 12
つまり、でたらめに判定しても36回のうち12回は当たることになる。
勿論、全問正解すればスコアは36になります。
結果の抜粋は下記。
プロまたは上級アマチュア演奏家のスコア平均: 12.9
学生のスコア平均: 14.1
全体のスコア平均: 13.1
【感想】
ブラインドテストを行った結果、プロよりも学生のほうがスコアが良かったのはご愛嬌^^
しかも、音色の違いを確かに認識しているという有意な数値は出ていないようです。
要約には入れられませんでしたが、この論文では実験結果を統計解析の手法を駆使して分析しています。
また、演奏者が常に一定の角度で吹き込めるように特殊な装置を考案し、フルートを持ち替えたときの条件の変化を極力ゼロにするような工夫もされているようです。