****** 以下【文献1】の要約 ******
実験に使用したフルート:
同一メーカの銀メッキ製、総銀製、9金製、14金製、24金製、プラチナメッキ製、総プラチナ製の7本。
価格幅:42万円から1000万円(!)
フルート奏者:
ウイーンフィルハーモニーオーケストラ所属の7人のプロ奏者を含む15人
音色判定者: 111人
実験1と2は、音色のスペクトル分布解析である。
スペクトル分布解析とは、音色の中にどのような周波数成分がどのくらい入っているかを解析してグラフにしたもので、声紋鑑定などに利用されるほど、音色の違いを見るのに優れた分析方法です。
実験1
実験1では、1人の奏者が7本の異なるフルートを吹いたときの音色のスペクトル分布を比較。
結果の1例は下記。
1人の奏者が7本の異なるフルートを吹いたときの音色のスペクトル分布
実験結果は上記URLの図7(Fig.7)をご覧下さい。
図より、1人の奏者が材質の異なる7本のフルートを吹いた場合、音色の違いは周波数スペクトルの0から16kHz上で最大0.5dB以下であった。
実験2
1本のフルートを7人の奏者が吹いた場合のそれぞれのスペクトル分布を比較。
結果の1例は下記。
実験結果は上記URLの図8(Fig.8)をご覧下さい。
図より、7人の奏者が1本のフルートを吹いた場合、音色の違いは周波数スペクトルの0から16kHz上で最大7dBの差異があることが判る。
上記実験1と実験2のスペクトル分布図から明らかなように、フルートの音色は材料による違いよりも演奏者による違いのほうが圧倒的に大きいという結果になっています。
実験3と4は、あらかじめCDに録音したフルートの音色を音色判定者に聴かせ、それぞれ材質を当てる実験。
実験3
一人の演奏者が7本の異なる材質のフルートをでたらめな順番に吹いて、判定者がそれぞれの音色がどの材質かを投票。
これを7人の演奏者が順に行う。
投票結果を集計したところ、全ての判定者が正しく材質を当てたケースは1件も無かった。
結果の一例:
・ 24Kフルートは22%の正解率
・ 34%がプラチナフルートを9Kフルートと判定
・ プラチナフルートの正解率は6.8%
実験4
1本のフルートを7人の演奏者が順に吹き、音色鑑定者が音色の良い順番に順位を付けていく実験。(1が最高点。5が最低点)
7本のフルートを順不同で吹いていった。
結果は下記。
順位の高い順に並べてあるが、数値間の差異が小さく、材質間に統計的なばらつき以上の優位性は認められない。
【感想】
有名オケ所属のプロ演奏者と100人以上の音色鑑定者のスコアを集計した大作と思う。
要約すると、ブラインドテストの結果、音色が材質によって変化していることは証明できなかった。
‥となる。
疑問点があるとすれば、完全なフルート(非常に複雑なメカ構造を有する)を使用して実験を行っているため、データの中にフルート製造上の差異や部品誤差も含まれていると思われること。
材質と音色のみを問題にするのであれば、キーやトーンホールの無いシンプルな円筒で比較するべきと思う。
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