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1. 材料物性】
フルートの出音は何かといえば、フルートの管内で反射を繰り返して発生した音波が、
1) 唄口、トーンホール、端部の開口部から放射される。
2) フルートの管壁を透過して放射される。
これら1)、2)の和であると考えられます。
このときに、出音が管の材料に影響を受けるとするならば、
1) 管の内部で音波が反射するときに、管の材料の影響を受ける
2) 管壁を透過するときに管の材料の影響を受ける
この二つが考えられます。
そもそも材料が違えば音の反射や透過率は異なるのが当然で、そのために防音施工業者さんやスピーカの製造メーカは苦労されているわけですが、
では材料の違いによる反射や透過の差異がどの程度であり、どのくらいの割合で音色に影響しているのか。
を考えるのがこの書き物の目的です。
以下、「管壁での音の反射率」と、「管壁を通過する際の音の透過損失」について考えてみたいと思います。
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一部に、「管自体が音波の振動と共鳴」するので、共鳴に関連の深い材料の機械的性質が音色に影響するのだという主張があります。
弦楽器の場合は胴体の材料が直接出音の音色に影響するのでその類推と思われますが、管内で発生した定在波による音圧では、ほぼ剛体とみなせる円筒形状のフルート管壁が共振することは無いということがすでに100年も前に検討されています。
明らかに起りえないことがらを長々説明するのは気が重いので、ここでは管の共振には触れません。
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まずは材料の物性を確認します。
フルートの材料には、木、洋銀、銀、金、プラチナなどが使われています。
音の伝播に関係する各材料の性質は下表のようになります。
表 各材料の性質
この情報から、材料の音響インピーダンス(Z)という値が計算できるのです。
急に難しい言葉が出てきましたが、なんということもありません。
音響インピーダンスというのは音の伝わりやすさを現す指標で、二つの物体が接触しているとき、この値が近いほど音は伝わりやすくなり、値が異なるほど反射しやすくなります。
表 各材料の音響インピーダンス
ちなみにm^3 は、mの3乗。 つまり立方メートルのこと。
(その3)以後では、上記の表で得られた値を使ってフルート内部の音波の反射と、フルート管壁を透過した音波の透過を中心に、音色の変化を検討していきたいと思います。
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