ネグレクト―育児放棄 真奈ちゃんはなぜ死んだか (小学館文庫)/小学館

¥596
Amazon.co.jp
【事件概要】
「愛知県幼児虐待ダンボール監禁餓死事件」
18歳で出来ちゃった婚した21歳の茶髪の若夫婦によって、
2000年12月に長女の谷川依織ちゃんは餓死させられた。
依織ちゃんの家庭は会社員の父 谷川千秋(21歳)、母 谷川万里子(21歳)、弟(1歳)の3人家族。
両親は死の1カ月ほど前から十分に食事を与えず、
体が衰弱してからも病院に連れて行かなかった。
母親らは、発育の遅い娘を部屋に閉じこめたり、
段ボール箱に詰め込むせっかんをしていた。
1日にパンを一口分与えたり、ミルクを飲ませるだけの食事。
そして死亡する4日前から食事を一切与えていなかった。
依織ちゃんは実はその2年前(1歳)に外傷性の脳内出血を起こし
病院に搬送され手術をしていた。
母親らは「旅行に行った時にベッドから落ちてこぶができた」と説明したが、
これも虐待が疑われる。
父親が娘の足を持って逆さづりにして、振り回したせいで
脳内出血をしたのが真相。依織ちゃんの発育が遅れたのは
このときの脳内出血が原因と思われる。
その後、両親は依織ちゃんの発育が遅れていることに気付き
「歩かなくなった。笑顔を見せない」などと周囲に漏らすようになり
育児放棄へと至った。
近所の人の通報で町の保健婦がときどき母親に連絡をとってはいたが、
女児が死を迎えようとしている時期には、母親との連絡はとれず
保健婦が女児の様子を見ることは出来なかった。
保健所と児童相談所が関わっていたにも関わらず、虐待死を防げなかった
悲惨な事件である。
【本の内容】
著者がこの事件の被害者である真奈ちゃん(仮名)の両親(犯人)を
その生い立ちから詳細に調べたルポである。
事件の概要だけをみると、まるで両親が鬼の所業をしているかのようである。
私も事件の概要をネットで見たときには、なんたる事かと若い夫婦を責める気持ちがあった。
しかしこの本を読む限り、彼らは彼らで一生懸命やっていたとは言わないが、
真奈ちゃんが生まれたときには心から喜び、育てる気持ちがあったのは確かである。
なぜネグレクトを引き起こしたのか。
きっかけは小さな事なのだ。小さな事が多発し、積み重なり雪だるま的にふくれあがったのだ。
それが、この夫婦や夫婦の父母の生育歴が影をおとし、最悪な事態を招いた。
問題は、それを止められるだけの周りの力が足りなかったのだ。
本を読んでみるとよくわかる。
この若夫婦には、何度も何度も他人が関わっている分岐点がある。
旦那の母・妻の母・保健婦・児童相談所・同じ社宅のおばさん
何度もこの夫婦に関わって、子供に注意を向けてる人がいたにも関わらず、
夫婦の異変に気づく人がいなかったのだ。
一見、「異常な事件」と見られ、遠くの世界に感じる。
しかしこの本を読むと、自分にも降りかかるかもしれない、また自分の近いところで起こった場合
はたして私には、その大きく膨らんだ負の連鎖をとめる事ができるのだろうか。
と考えをはせるよう筆者が促しているように思える。