映画鑑賞記

映画鑑賞記

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拙い点もありますが、よろしくお願いします。

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半分の月がのぼる空 / 深川栄光監督

2010年公開。
2003年から2006年にかけて、橋本紡によって連載された同名ライトノベル小説を映画化した作品。

池松壮亮さん演じる祐一と、忽那汐里さん演じる里香のラブストーリーだ。
心臓病を患った少女と同じ病院に入院する祐一は次第に惹かれあっていくが、彼女は手術のために別の病院に転院することとなる。
そのなかで大泉洋さんは自らの妻を救うことが出来ずに、心臓病手術の現場から離れた医師を演じている。

見事に終盤で裏切られた。


このビジュアルを見る限り、池松壮亮さんと忽那汐里さんのラブストーリーで大泉洋さん演じる医師がキーパーソンになるという展開を少なくとも予想したが、全く違った。
ひとつの時代構成から成り立っていると思い込んでいると、終盤でこの物語がふたつの時代構成の混合であったことに気付かされる。
池松壮亮さんの演じる祐一と大泉洋さん演じる医師は同一人物だったのだ。
祐一は彼女が転院したあとも医師になるための勉強に励み、有言実行で医師になっていた。
そして彼女の手術を引き受け、手術は成功したものの彼女は彼にひとり娘を残して亡くなってしまう。
それを自らの責任だと自責する祐一は手術の現場から離れてしまったのだった。
しかしその過去の回想を通して、彼は再び手術の現場に復帰することを決意する。
そこまでの話を池松壮亮さん演じる少年時代の祐一の回想を交えて描いているためにこの話の展開が成立している。
大泉洋さん自身も若かりし頃は天然パーマではなかったというがまさか池松壮亮さんが成長して大泉洋さんになるとは驚かされた。
演者の見た目に劇的な変化を与えることで、ふたつの時代構成の混合に成功している。
浜田マリさん演じる看護師の台詞の中に「あの頃はあんなにかわいかったのに」という台詞があるがまさしくその通りだ。失礼かもしれないが池松壮亮さんから大泉洋さんへの成長は到底想像もつかない。
そして、いまとなっては人気俳優となった池松壮亮さんのこの頃から光る演技に魅了される。
ただ、ヒロイン役の忽那汐里さんの演技力が物足りない。
周りを固める役者の演技力に圧倒されてしまっているのがなんとも残念だ。
しかし大泉洋さんをはじめ、俳優さんの方言に違和感がないのはよかった。
方言を扱う映画で方言に違和感があってはせっかくの映画が台無しだ、それがなかったのはこの映画の大きな成功だと思う。
そして、忽那汐里さんを東京育ちの役柄にすることで帰国子女である彼女の言語の壁をカバーしている。
総括としては、とにかく時代構成が秀でていたと思う。
タイムスリップとはまた違う衝撃があった、素晴らしい映画だったと思う。