第14話
「ボクね…確率を変化させる力がいい…」刀を握り締めてアイダが言う。
「アイダ!!!それは名案だよ!!!」イシが歓声を上げた。
汎用性の高い能力を模索して氷に行き着いたイシがさらにその上を行ったアイダに感服したのだ。
へへんといった様子で鼻の頭を擦りながらアイダは誇らしげだ。
「じゃぁ…アイダが俺の槍が貫ける確率を決めてくれればいいんだな」自分の槍の考えもさりげなくアピールするケンジ。
「まぁアイダが間接的な能力だから近接攻撃系の奴がいても悪くなさそうだね」しぶしぶという感じでイシがケンジに言う。
「ええ…アイダさんのアイディアは素晴らしいと思います、ただ制限がつきますね…一つの確率を変化させている間はほかの確率を変化させられない…理解できますか?」ハインはアイダに視線を送る。
「ボクね、いつもこんなシチュエーション考えてたんだよね…で、どんな力がいいかなーなんてずっと考えたりしてたんだよ」アイダに後悔はなさそうだ。
「解りました、皆さん…いいですね…それでは儀式を始めます、儀式といっても簡単です、私の前に来て目を瞑って下さい」
ハインはすぅ…と深く息を吸い込む。
「なぁ…カッコいい槍にしてくれよな」ケンジがずいっと前に出て目を瞑る。
目を瞑ったケンジの額にハインが触れる。
触れた瞬間…、劇的な変化が起きた。
「うぅぅぅぅぅ…あ…あ゛あ゛あ゛あ゛」ケンジは自分の体に起きている未体験の変化をうまく表現できずにいる。
次の瞬間、どこからともなくケンジの掌から槍が形を成してきた。
鋭い先端が見えてきた。
薄い光を放ちテラテラと光っている。
「お・・・お・・・おぉぉ」ようやく槍を『出す』感覚をつかめたのか、ケンジの声のトーンが変わった。
「す…すげぇ…」身の丈以上にもある槍は驚くほどに軽く、刃物が発する独特の『危険さ』をビンビンに放っている。
「思った以上にいいできですね…」ハインがにっこりと微笑むと、ケンジは槍に見ほれながらこうつぶやいた。
「破軍・・・うん、槍の名前は破軍にしよう」
「強そうな名前ですね・・・それでは次は・・・」とハインが話をふると、
「じゃぁ僕が・・・」とイシが呼応する。
ケンジ以外は順調に劇的な変化もなく
イシ
ユミ
アイダ
と流れるように儀式は進む。
全てが終わるとイシは右手と左手の人差し指とを平行に並べてその間を真剣な眼で見やった。
すると・・・ピシッ!!!
その間の空気が一筋に凍りつく。
それを確認すると少しイシは高揚したのか頬を少し赤らめそれを見ていたケンジにまた例のしたり顔をみせた。
「皆さん、力の使いすぎには注意してくださいね、・・・それと」言いかけてハインはアイダの方を見た。
「ハザマさん・・・私は貴方を主とし、ともに行動させていただきます」珍しくハインが深々と頭を下げた。
他の三人が「???」という反応を見せていると、アイダは
「え・・・あ、うん」とだけナチュラルに答えながらまだ自己流に黒刀を振ったり構えたりしていた。