【色平哲郎氏のご紹介】

 

 

189 農村女性の行動を変えた「生改さん」に学ぶ

 日経メディカル 2022年2月28日 色平哲郎

 

 

  コロナ禍で、人々の「行動変容」が大きくクローズアップされた。 厚生労働省は「新しい生活様式」として、ソーシャル・ディスタンシングや手洗い、 マスクの着用、「3密」の回避を国民に訴え続けている。 

 いずれも公衆衛生上の生活習慣であり、保健所が主体的に取り組むテーマといえるだろう。 情報化が進んだ現代では、様々なメディアを通して「新しい生活様式」 の必要性が呼びかけられ、一定の効果を上げている。

  しかしながら、時間軸をもう少し長く取って行動変容を考えると、 情報発信だけではそれが定着しないことに気づくだろう。 人々が情報に接して新知識を得て、やり方を変えてみて効果を実感、 その上で納得しなくては、行動変容は持続しない。 

 そのためには人々の中に飛び込んで導くメンターが必要なのだ。 戦後、保健婦(現在の保健師)が地域の「病気の予防・治療」 という明確な使命を掲げて、人々を導いたことはよく知られている。 

 

  私が山村の診療所に赴任した当時、その地で長く保健活動に携わってきた“伝説的”な 保健婦から、「若妻会」を組織して様々な活動を展開したことを聞いた。 

 若妻を姑の監視下からしばし解き放ち、寄り合いに集めるだけでも大変だったという。 保健婦はまさに地域の要石だったといえるだろう。 女性たちの心を射止めたもの。

 

  ただ、日本の農村には、保健婦のほかにも、重要な役割を担って人々の行動変容 に尽力した人たちがいる。 生活改良普及員、通称「生改(せいかい)さん」だ。 生改さんもほとんどが女性だった。 

 

『保健の科学』(杏林書院)2016年12月号に掲載された佐藤寛氏 (日本貿易振興機構アジア経済研究所上席主任調査研究員)の論文 「生活改良普及員と健康改善」(注)を参考に、生改さんの足跡をたどってみよう。 

 

太平洋戦争に敗れた日本は、深刻な飢餓状態から戦後の歩みを始めた。 戦争で農業生産が低下したところに海外から兵士や移住者、ざっと600万人 (当時の人口のほぼ1割)が引き揚げてくる。 日本を占領統治した連合国最高司令官総司令部(GHQ)は、食料増産と栄養改善 に取り組む一方、軍国主義の温床となった封建遺制がはびこる農村の「民主化」に着手。 

 

 1946年に農地改革を行い、47年に農業協同組合法が制定。 48年には農業改良助長法が制定され、農業技術の変革を担う 農業改良普及員(農改さん・ほぼ男性)と「生改さん」が誕生する。 生改さんは農村の現場に足しげく通い、女性たちから実情を聞き取った。 

 

 そして、まず着目したのが「台所」だった。 当時、農家の台所は窓が少なくて薄暗く、かまどは地面に直接置かれ、 煙突のないところが多かった。 かまどの熱効率は悪く、薪を大量に焚くので煙が充満し、 女性たちは目や気管支系の疾患に悩まされていた。 

 

 そこで、生改さんは「改良かまど」を提案する。 手近な材料で密閉性が高く、熱効率のいい改良型をこしらえ、煙突をつけた。 これがものの見事に女性たちの心を射止めた。 換気はよくなり、楽に調理ができる。 地面に直接置かず、土台の上に設置されるので、屈まず、立った姿勢で調理できて 体への負担がぐんと減った。 改良かまどは生改さんの代名詞となる。

 

   一説には、改良かまどのルーツは岩手県にあるともいうが、これは普遍的な価値を備えている。 今日では途上国で改良かまどは力を発揮する。 たとえば国際協力機構(JICA)の職員やボランティアは、アフリカ諸国で 改良かまどを次々と作り上げている。 日干しレンガや石で土台を整え、粘土を塗り込んで成形する。 すべて身近な素材だからお金はかからず、数時間で形ができる。 

 そこから1、2週間乾かせば使えるようになる。 改良かまどは同時に複数の熱源で調理でき、薪の消費量も数分の1に減る。 省エネルギーにも寄与、一石二鳥どころかSDGs(Sustainable Development Goals :持続可能な開発目標)を含む三鳥、四鳥の副次的効果を生んでいるのだ。 

 

 地域の実生活に根付いた取り組みが奏功 話を戻そう。 改良かまどで認知度を高めた生改さんは、農家の偏った食生活の栄養改善に乗り出す。 農家は野菜などの収穫期には同じものばかり食べていた。 それを「ばっかり食」と命名して女性に意識させ、高タンパク、高エネルギー食への転換を促す。 「料理教室」を開いて実際に調理をしてみせる。 田植えや稲刈りの時期には村の集会所などで「共同炊事」を企画する。 当番の女性が皆の持ち寄った食材で食事をつくり、他の人は農作業に集中した。 

 あるいは農繁期には寺の境内などを借りて臨時の保育所を立ち上げ、乳幼児を集める。 共同保育を実践したのである。 このように生改さんは、実生活をカイゼンしながら人々の行動パターンを変えていった。 

 GHQの農村民主化に始まったカイゼン運動は、日本ならではの改良かまどで土着化し、 女性の生活に無理なく取り入れられた。 時代は変わっても、ここが重要なポイントではなかろうか。 地域に根付いた習慣や伝統的な思考を無視し、新しい知見を植え付けようとしても難しい。 いっときは物珍しさで取り入れられても、やがては廃れる。 途上国支援の場面にも当てはまることではないだろうか。 

 

(注) 今回参考にさせていただいた佐藤寛氏の論文「生活改良普及員と健康改善」は、 その後、中村安秀編著『地域保健の原点を探る』(杏林書院 、2018年) 第3章「生活改良普及員による健康改善」(p.40-62)に、ほぼ同内容で発表されています。 https://nkbp.jp/3pmzhAa 

 

 

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  コミュニケーションを駆動しているのは、たしかに「理解し合いたい」という欲望です。しかし、対話は理解 に達すると終わってしまうのです。 対話の相手に「わかった、わかった」と気ぜわしくうなずかれると、ちょ っとむっとしますね。

  相手に「君が言いたいことが分かった」といわれると、人間は不愉快になるのです。こ れはメッセージの正確な伝達のみがコミュニケーションの目的だとしたら、おかしなことです。そう考えると 、コミュニケーションしあうということそれ自体が目的なのではないでしょうか。 そのために、コミュニケーションにおいては意志の疎通が成就しないように仕掛けがしてあるのです。

 

 日本語 の「適当」は「適当な答えを記せ」のように「ぴたりと適切な」という意味にもなれば、「適当なやつ」「適 当にやる」のように「ぴたりと決まっていない」という意味にもなる。「湯加減どう?」「いい加減だよ」と いうのと、「いい加減な野郎」も同じです。

 

 フロイトも例を引いていて、古代エジプト語では「大きい」と「 小さい」がどちらも「ケン」という同じ単語だったそうです。また、ラテン語の「サケル」も「神聖な」と「 呪われた」という二つの意味がある。

 英語では「with」には古くは「…といっしょに」と「…を除いて」とい う両方の意味があったそうです。 おそらく、コミュニケーションはつねに誤解の余地があるように構造化さ れているのです。

 

 「わかる」ことは、コミュニケーションを閉じる危険とつねに背中合わせなのです。 そして、沈黙交易が交易すること自体の楽しさを目的としていたように、コミュニケーションもまた、コミュ ニケーションし合うことそれ自体が目的なのです。 https://bit.ly/3C0kYqb 

 

先生はえらい 内田樹

 

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  「アメリカのバイデンやNATOの首脳はこの戦争に責任があります。でも今は戦争を止めるために彼らを動かさ なけれなりません。

 制裁を強めるなんて言っていますが、違う。世界が一致団結することです。

 

 ロシアが一番 恐れているのは中国です。アメリカなんか底を見透かされています。なんでバイデンは中国に飛んでロシアの 戦争をやめさせないのですか。なんで日本の岸田は中国に飛んで中国にロシアを説得させないんですか。

 中国 が動けば情勢は変わる」 「戦争を止める。とにかく止めましょう。

 

 そして次はアメリカとNATOを断罪しなければなりません。アメリカ はウクライナを散々焚きつけロシアを怒らせました。そして戦争の直前に梯子を外してロシアの侵攻を敢えて 許しました。この犯罪というべきやり口は湾岸戦争ともイラク戦争ともコソボ紛争とも共通します。

 

  すでに失 われてしまった命を無駄にしないためにアメリカを正々堂々と断罪しましょう。私たちは絶対にそのことを忘 れてはなりません」 https://www.facebook.com/permalink.phpstory_fbid=486748319513973&id=100045364272632 

 

 

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 (書評より)温暖化は炭酸ガス濃度の上昇が原因とは科学的に立証されていない。  直近の80万年を見てみると、10万年周期で氷期と温暖期(間氷期)とが繰り返している。この周期的気候変動 にさらに短い周期の気候変動が重畳されている。

 

 このことは南極の氷に含まれる酸素と水素の同位体の比率分 析から分かっている。変動幅は16℃にも至っている。また、温暖期より氷期の方が気候の変動は激しい。換言すれば、温暖期は氷期に比べて気温は比較的安定している。 

 

  この10万年周期の気温変動は、地球が太陽を回る公転軌道の楕円形が真円から離れる程度(離心率)が10万年 周期で変動しているためである。この公転軌道の周期性は、セルビアの地球物理学者ミランコビッチが発見し た。

 

  この10万年間の気温変動を見ると、10万年周期のゆったりとした変化の中に2万3000年周期の気温変動が重畳 している。自転する地球は、コマの回転と同様に地軸が円運動している(歳差運動)。この歳差運動により、地 軸は公転軌道に対して周期的に傾き、太陽との姿勢関係が周期的に変動する。この周期が2万3000年であり、気 候はこの短周期でも変動することになる。

 

    地球の気温変動は、基本的には、地球の公転軌道の離心率の周期性と地軸の傾きの周期性とによる地球と太 陽との位置及び姿勢の周期的関係により説明がつく。さらに、太陽の黒点の活動周期による気候変動が加わる 。現在は2万3000年周期の氷期に向かう安定した温暖期に属している。 そして、現代の温暖化傾向は、1400~1800年の小氷河期からの回復による自然現象である。

 

 IPCCの報告は、こ の小氷河期の存在を無視している。温暖化が炭酸ガスやメタンガス濃度の上昇によるとは科学的に立証されて いない。

  過去45万年間における気温と炭酸ガス濃度は周期的に変動しており、気温が高い程炭酸ガス濃度とメタンガ ス濃度が高くなり、気温が低い程炭酸ガス濃度とメタンガス濃度は低くなる。気温の変化は炭酸ガス濃度とメ タンガス濃度の周期的変化に対して、800~1000年程先行していることが知られている。

 

 この事実を見ると炭酸 ガス濃度の上昇は周期的変動にある気温に起因していることが分かる。炭酸ガス濃度が気温の上昇をもたらせ ているのではない。

  紀元前500-1000年の期間は現在より温暖であり、900~1100年の期間は現在と同程度に温暖であり、1600年に 向けて寒冷化した。すなわち、現在の気温が歴史的に異常とは言えない。

 

  以上の事実から、どうして、地球の温暖化の原因は空気中の炭酸ガス濃度の上昇のためと断言できるのか、 不思議である。ということはIPCCや温暖化警鐘活動家には、別の活動目的があるということであろう。

 

  本書を読んで、要するに環境問題は情緒や欺瞞的正義感に左右されるのではなく、冷静に科学的に思考し判 断する能力を養うことが必要であると思った。多くの人が読まれることを薦める。

 Mark Morano 「地球温暖化」の不都合な真実