ロマチェンコ対ロペスの判定を巡っては、大変興味深いことに、米と日本では論議の前提が、真逆に展開された。米では、ロペスのポイントアウトを前提に、差が開きすぎているという論調。日本では、ロマチェンコのポイントアウトを前提に、疑惑の判定で敗れた、というもの。同じ評価基準で、何故このようなポジとネガの反転が起きたのか。次の二つの記事を読むと、興味深い絵柄が浮かび上がってくる。

現地識者はどうみたか?ロマチェンコ対ロペス


米では、ポイント加点の優先順位1位である、
“有効なクリーンヒット”
の数が少ない場合は、とっとと次の加点優先順位、
“攻勢”
で優劣を判断し、
日本では、一発でも
“有効なクリーンヒット”
があれば、厳密にそちらにポイントを加点する、という違いだ。

こうして当該試合を再見すると、米基準ではロペスがポイントアウトで勝利し、日本基準では、ロマチェンコがポイントアウトで、やはり勝利した。

なぜ、このような事態が起きたかを考えると、さらに理解しやすい。米では、よりエキサイティングでアグレッシブなボクシング姿勢を評価するために、このような偏重が生まれ、ルールに厳格な日本では、さの偏重が生まれた。これを国民性の違いと一言で断じることは易い。が、特にプロスポーツとしての、ボクシングという競技には、人気というバロメーターが必要不可欠であり、故にエンターテイメントでなければキング・オブ・スポーツたりえない、という原理が根底にあるからこそ、国民性という稚拙な尺度では計れない、魅力の源泉となっている。

特に、このビックマッチ後の基準においては、世界的な名声を日本選手が得るには、実力+アルファのエレメントを獲得することが、不可欠となるであろう。そういう点で、ラスベガスで11月1日防衛戦を行う井上選手は、世界をアッと言わせるタレント性が充分だ。

ロマチェンコ対ロペス後の本番デビューという、この上ない場面で、魅せていただきたい。