福留水産2
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スターバックス論3

福留水産2



前回までのあらすじ

反コーヒー派の俺
憎きスタバでゼリーパニック。
失敗を重ね、希望の光は見えず、
飲みたいものも飲めず
いまだ、リベンジできずにいた。


スターバックス論
第3話
「カリスマ」


一度ならず二度までも
苦汁をのむ破目に陥った。
悔しい。

もともと豆の苦汁を出す店である。
つめたい苦汁。
あったかい苦汁。
苦汁の生クリームのせ。
苦汁ゼリーフラペチーノ。
苦難や不幸の呪文を唱えてトッピング。

けれどいつまでもメソメソしていては
社会参加どころか
人間の尊厳、権利も剥奪されかねないので
もはや修行ですな。と
僧の心持ちでこの諸行無常に立ち向かった。

まずしたことは
リサーチ、すなわち情報収集である。

コーヒー嫌いとして
殻に閉じこもっていた事もさることながら
そんな俺が一人で参上したら
パニックに陥る事はこれ必至であり
山村に暮らす老婆を
無理矢理WEBデザイナーに仕上げるようなもの。

友達や、通行人や、
はたまた恐山のいたこや
その近辺に住む漁師、尼、卸業者などに
徹底リサーチをした。

結果、どれもこれも皆ばらばらで
ということは皆それぞれが様々に
コーヒーライフを満喫のご様子で、
なんとも羨ましい限りである。

しかしこれといった答えがないので
しばらく葉っぱや草をちぎって歩き
途中、お腹がすいたので
民家を訪ねるとおむすびを頂き
お礼に風景をちぎり絵で描いてあげると
「山下先生」などと呼ばれるので
「僕は福留です」と言うとしんとしたり
そういうかんじで
ぶらぶらしているとある人を思い出した。

カリスマだ。

カリスマのセンスはすごい。
どうすごいかって
例えば
カリスマが「ぼた餅がいまヤバい」とか言うと
そうなのか!となり次の日に俺は
ぼた餅のパーカーなどを新調したりして
「ぼた餅の買ったよー」なんて見せると
「なつかしー!今、主流は豆餅だよ」と
豆餅のワンポイントが入ったシャツを
さらっと着こなしてたりして格好いい。

なんてことはよくあることで
常に時代をリードするカリスマ。

カリスマなら答えを持ってるはず。
慌ててカリスマに電話をした。

スタバでのこれまでの苦難を
ひととおり話すと
電話口でひいひい笑われた。

笑い終わるとカリスマは
とんでもない発言をした。

「ていうかスタバを
カッコいいと思った事がない」

しびれた。

カリスマいわく
スタバはただのコーヒー屋で
それ以上でも以下でもないという。

それでもカリスマは
一日に3度行ったりするという。

つまり日常化しているのだ。

またしびれた。

それはどういうことかというと
もし俺がデヴィット・ボウイと暮らしていたら
「デヴィットの音楽性?
あいつのどこがミュージシャンなの?」
とか言えてしまう程に日常化、普遍的、
国交正常化してるわけで
そこまでいくと、もう神。とかブッダ。

すっかり興奮しきりの俺は
いよいよ
「何を注文したらいちばんかっこいいの?」
と、つたない日本語で
尊敬の意を持ちつつ訪ねると
カリスマは、
「うーん、まあ、日によってちがうけどお」
とじらしてなかなか教えてくれない。
その間、
俺は緊張で嘔吐しそうになるのをこらえながら
携帯のボリュームをマックスにして
ありがたいお言葉を待っていた。
汗だくだった。
カリスマは
「よく注文するのはー」
と前置きをして、さらりと答えた。


『ダブルトールキャラメルマキアート低脂肪』


プ、プ、プロレス技?

俺は緊張の糸がぶっちぎれて
一気にもどした。嘔吐。

なにそれ。

サイズであるはずのトールが2番目にあり
しかもその前が『ダブル』ということは
トールサイズをふたつ?一気に二本飲み?
そしてお菓子のキャラメルがきて
最後は暴走族風に漢字で締めくくられている。
マキアートに関してはなにもわからない。

『それのエキストラホットとか言う』

つまり

『ダブルトールキャラメルマキアート低脂肪エキストラホット』

浅田麻央ちゃんの必殺技に違いない。

しびれる。

カリスマいわく
キャラメルマキアートじゃ甘過ぎるから
エスプレッソショットを追加し
ミルクを低脂肪に変えて
(無脂肪だと味気なくなる)
それのトールサイズで
通常より熱め

というのが、この必殺技らしい。

「そんな調子に乗って言って
店員に「は?」って顔されないの?」
と尋ねると
「店員はこの言ったままをオーダーする」
らしい。

これだ。

これしかねえ。

店員が営業を円滑にするための
秘密の暗号、言い回しを
客の方が先にしてしまうという技術。
はなれわざ。

ということは
店に入るなり大声で
『ダブルトールキャラメルマキアート低脂肪エキストラホット』
と叫べばロボ化している店員は自動的に
「あいよー」なんつって作ってしまうに違いない。

それまで偉そうにしていたレジ係は
自分の仕事は無視されるわ、
金は払ってもらえないわでパニックになり、
泣いたり豆をひっくり返したりしたあげく、
灯油を床にまいて火を放ち、踊るだろう。
スタバ炎上。
それを背にして俺は写メとか撮ろう。

ひひひ。

いい気味だ。

俺は
とんでもない化け物マキアートを
ゲットしてしまった。



次回
最終話「復讐」

お楽しみに













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