写真に写らないもの 湿度が高く、まさに蒸せ返るような夏の夕暮れ 近所の龍口寺を散歩―― 生命が満ちた森からは、無数に重なり合うのセミの鳴き声 車輪がきしむ音、近くを走る江ノ電 汗ばむ首すじ 左手人差し指第二関節あたりに感じる、蚊に刺されたかゆみ ふざけ合って笑いあう子供の声 ふたりがもっと小さかった頃、よく滑り台にしていた石階段脇の側溝 「お尻を真っ白にして何度も滑っていたけど、最近では見向きもしなくなったなぁー」 場所に堆積する記憶―― 写真には写らないもの・・・