時に映画評を上手く書けない映画があります。
それはあまりにも自分の思い出とリンクしてしまう映画であり
自分にとっての映画になってしまう場合なんです。
そのひとつが
9/23公開のムロツヨシさん主演『マイ・ダディ』であります。
かけがえのない娘を救う一心で、知りたくない事実をたどり
頼りたくない人に頭を下げる愛に溢れた牧師をムロツヨシさんが
愛情たっぷりにチャーミングに演じているんです。
なのに私はこの映画の感想を上手く言えないし、書けない。
それは私の経験が走馬灯のように思い起こされ
つぎはぎとなって自分の記憶に塗り替えられてしまうから。
ここからは私的な話なので、興味がある方のみお付き合いくださいませ。
私はお祈りをするのが好きな子供でした。
理由はカトリックの幼稚園に入り、最初に親友になった子が
白血病でほぼ入院生活だったから、いつも彼女のことを
キリスト様やマリア様に祈っていたからです。
天使みたいな女の子でした。
最初に闘病というのを知ったのと、生死を知ったのは彼女がきっかけ。
そして大人になるに連れ、父と私は仲が悪くなり
母も父との結婚生活に疲れて離婚した矢先、
父は特殊な白血病になり、倒れてしまいました。
あぁ、劇中のムロさん演じる父親が、白血病になった娘に
気丈な姿で「大丈夫、退院出来る」と伝えた表情は
私そのものでした。
仲はあまり良くなくても、余命宣告されていることを隠し
生きようとする父親を見舞いに行き、映画のお父さんのように
笑顔で普通に接し続け、私の行動はこの映画そのものでした。
その後、父は他界し、やがて私は晩婚で娘を身籠るのですが
産まれてきた彼女の一部に初めてしっかりと触れたのは小さな手でした。
ぎゅっと握ってくれる手が嬉しくて
この映画の出産した時のシーンのように手を握ったな。
それからひとりで子育てをすることになり、あたふたしながら
姉やら母やら沢山の人に助けられながら、仕事と子育てを乗り切って
まるで映画のお父さんのように子供を心配して
高熱が出たら手を合わせ、半ベソをかきながら
救急病院へ電話をして、タクシーで連れていった、と。
寝る時も手を握って。
そう、この映画に象徴的に映し出される手、
それは愛する人への思いで、人は愛を手でも表現する。
ちなみに今の夫と、娘は血は繋がっていないのですが
間違いなく彼は娘の父親であり
誰よりも娘を心配していると思う。
小さな娘にも昔、別のお父さんが居たことを伝えているけれど
彼女は私が悲しげに写真を破いていたこともこっそり見ていたのか
何故か知っていて、「今のお父さんが大好き」と口にする。
血が繋がっていても、悲しいかな、子との関係を全て切る親もいれば
血が繋がってなくとも、全力で子を愛する親もいる。
話はそれましたが
私には『マイ・ダディ』という映画が
人生の象徴みたいに思え
観ている最中は、あまりに自分ごとで集中していたから
試写後に感想を求められて、恥ずかしいけれど
その時に泣いてしまった。
私の最初の親友は天使になって
私の憎たらしい父は天国で修行中で
私の娘と夫は、血の繋がった私より顔も性格も似てる。
ちょっと感傷的ですが
娘が大きくなったら『マイ・ダディ』を観せる。
いや、もしかしたらもう観られるかもしれないな。
そして私より間違いなく、ムロさん演じる牧師は優しいな、
という私的な感想でした。