受験戦争の低年齢化が進んでいます。少子化を背景に塾に通わせる親は増加し、大手進学塾では「小1」で教室が満室になるほどの過熱ぶりです。

 

そこで重要になるのは、「親のサポート」です。親と言えば、これまでならば「母親」をイメージする人が少なくないでしょう。しかし、今は令和時代です。そんな「昭和の価値観」を持っていたら、令和の受験戦争は勝ち抜けません。

 

仕事をするのは父親、家事・育児をするのは母親。そんな価値観では十分な受験環境とはいえないのです。まず、押さえておきたいのは親の就労状況が変わったという現実。世帯によって異なりますが、両親とも就労している家庭は増加しています。

 

1980年以降、共働き世帯は右肩上がりに上昇しています。1997年からは専業主婦世帯数を上回り、2022年は約1260万世帯にまで増加しました。専業主婦世帯は約540万世帯ですので、実に2倍以上という結果です。

 

子育て世帯の「共働き率」は、約76%に達しています。2004年時点では5割超にとどまっていましたが、この20年で大きく変わりました。女性の社会進出が加速したという背景もあるでしょう。もちろん、雇用形態によっても家庭の状況は異なりますが、「正規の職員・従業員」は上昇傾向にあります。

 

両親が働いている場合、家のことはどうするのかという問題に突き当たります。子どもがまだ幼い頃は保育園などを活用すれば対応可能かもしれません。祖父母に見てもらっているという家庭もあるでしょう。でも、お受験を考えた場合、単に「見てもらっている」だけでは時間がもったいない、ということになります。

 

私の知り合いのケースを見ると、お受験に備えた習い事の送迎は祖母がやっていました。孫と手をつないで塾に通う姿は何とも言えない気持ちになります。この祖母は「孫と一緒にいる時間が持てるので幸せなことだよ」と言っていましたが、自宅から1時間ほどかけて迎えに行く日が週2~3回もあるので大変なことは間違いありません。

 

祖父母が亡くなっている場合や遠方に住んでいるケースでは、こうしたサポートも得られないでしょう。やはり、原則は「自分の子のことは、自分たちでやる」ということになります。

 

実際、私が子どもの塾に迎えに行くと母親の姿が目立ちます。小学生の場合、サピックスは20時に終わっていたのですが、母親が忙しいはずの時間に迎えに来ているのです。正直、共働き率が上昇している令和時代なのに「どうなのかな?」と思います。

 

両親ともにフルタイムで働いているのであれば、どちらかが迎え、送りと分担するしかありません。かつては「そんなことをしたら出世にひびく」なんて考えたかもしれませんが、今は出世を望む人がどんどん減っています。それよりも、自分や家庭の時間を大事にしたいという人は増えているのです。

 

昔から「二兎追うものは一兎をも得ず」と言われますが、子どもの明るい将来を願って習い事をさせているのであれば、出世という自分の私欲よりも「子どもの将来」を優先させるべきではないでしょうか。

 

かくいう私は、次男が習い事を本格的にスタートする段階で新卒で入った会社を辞めました。「自分が習い事をさせたいのに、自分が送迎できないのであれば無責任」と思ったからです。もちろん、3人目の出産も希望していたので、そのままの収入では対応できないと考えたこともあります。

 

別に仕事を辞めなくても、20時の迎えであれば19時に退社すれば間に合うのではないでしょうか。その分は朝早く出社するとか、無駄な会合には参加しないとか、いろいろと手を打つことはできるはずです。両親の「2馬力」というのは何も収入を増やすだけが目的ではありません。あくまで「分担」することが大切になるはずです。

 

最近はオンラインで対応できる仕事も増えてきました。もちろん、「現場」にいなければならない仕事も沢山あります。でも、父親が「ちょっとだけ家事・育児をすればイクメン」と言われることには抵抗があります。外面はいくら良くても、家庭のことをしっかりとできないのでは、どこかの時点で家庭が破綻しかねません。

 

「家のことは奥さんに任せているから」はもはや死語でしょう。家事・育児の分担とは、「やれる人がやる」を基本としなければなりません。子どもの年齢によって親の役割は大きく変わってきます。やはり「今」を大切にすることを心掛けたいものです。