お客様がショウの腕を引っ張って
近付けさせた…
「…でも…」
「お詫びなら彼にしてもらうから。」
「…っ、!」
Jさんの眉毛がピクリと動いた。
「失礼します。Jさん、お願いします。」
そこへタイミング良くニノが
Jさんを呼びに来た。
「じゃ、俺はここで。」
「はーい!またね~」
Jさんがこの場を離れた。
「すぐにボトルをお持ちします。」
「よろしく~」
チラッとショウを見た…
するとすでに手を握られていた…。
あのお客様は有名な美容クリニックの
オーナーだ。
いつもJしか指名しなくて、
二軍の中でも自分好みのホストしか
座らせない…ちょっとわがままな人だ。
しかし…
「お待たせしました。」
ボトルを開けてグラスに注いでいると…
「うふふ、今日が初めてって
運命的じゃない?」
「…あのぉ…」
ショウが俺を見た。
「…?」
「…僕…あちらへ…」
「あっ…」
Jさんの方を見たショウ…
「大丈夫。ショウ…こちらを。」
グラスをショウに渡した。
「…えっ…あっ。」
グビッ!
「えぇ!?」
「ショウ!そうじゃなくて!それお客様の!」
「っ、えっ!」
「あはは~!もうショウったらかわいい~」
「申し訳ありません!」
「っ、すみません!」
新しく注いだグラスをすぐにお客様の前へ…
「じゃ、お詫びに口移ししてもらうわ。」
…え!?
「っ、!」
ショウが目をパチクリさせた…
「ほら!」
手にグラスを持たされたショウ…
「もう下がっていいわよ。」
「っ、!」
そうお客様に言われ…仕方なく立ち上がった…
「…っ、!」
ショウが俺を見た……
ショウ…
そして、俺はその場を離れた…。
「ちょっと…かわいそうじゃない?」
ドキッ!
奥へ入るふりをして立ち止まり
影から覗いていると…
ニノがすぐに横に来た。
「…仕方ねぇだろ…」
「…あらら…」
ドキッ…
そっちを見ると…
グラスをテーブルに置いたショウ…
口をぎゅっと閉じている…
隣で飢えた女が…紅い唇を舐めた…
ゾワッ…
「ふふふっ。」
ショウに近付く女…
そこへ……
え!
「んっ!?」
「え!?」
…嘘っ!
「っ、あの野郎っ!」
隣のニノが今にも走り出そうとした…
ガッ!
「離せ!」
「行くな!」
「っ、!」
「ちょっと~!」
「も~!ダメじゃん!
新人イジメしちゃ~!」
「もぉ、雅(みやび)~!」
雅こと…雅紀がショウの唇を塞いだ…。